しょーちゃんが悩んでいる。前に進もうとしている。応援してあげたい。案がない。
(どうしよう)
体育祭の後二日休みだ。通常は一日なのになぜこんなに長いかというとそれだけ(ヒーロー科にとって)体育祭がハードだからゆっくり疲れを取って欲しいからという学校側の配慮だった。大怪我する人もいるし。今年も出たし。悩んでいるなら気分転換に外出もありだと思うんだけど、昨日病院にでかけたし、二日連続外出するのは逆に疲れてしまうだろう。あと雄英だから宿題が尋常じゃないから下手したら睡眠が削れることになる。それに男の子の喜ぶことなんてわからないし――と考えて思い出した。いる。男の子の知り合い。しかもしょーちゃんと同じクラス!!
『上鳴くん、昨日は体育祭お疲れさま! 本戦ちゃんと見てたよ。
それで、疲れてなかったらちょっと相談したいことあるんだけどいいかな?』
上鳴くん、忙しくないといいな。そう思った直後即座に返事が来て安心する。大丈夫だという旨があったので安心して相談することにした。
『友達の話なんだけど最近元気がないの。気分転換とか、元気の出ることしてあげたいんだけど、男の子って何をしてあげたら喜ぶかな?』
『来夏ちゃんが俺に、って期待したのに恋愛相談か(笑)
俺ならカラオケとかボーリングとか何人かで集まって騒ぐな。あ、女の子と自室にふたりっきりとかも元気出るかも?』
『ありがとう、参考にします!』
『てかそれで思い出した、来夏ちゃん今度俺と遊びに行かねえ?』
『前に言ってたやつだよね。私もヒーロー科の人と遊びたい! 皆の都合があうときに行こうよ』
『……オッケー、何人かに声かけてみるわ。決まったらまた連絡する』
『お任せしてごめんね、待ってるね』
また遊ぶ約束しちゃった。雄英にはいって交友関係が大きく広がったのが嬉しい。雄英は名門ということもあって県外から人がやってきたりするので、地元の話を聞くのが楽しかったりする。方言もいろいろあって普通に話しているだけでも楽しいのだ。しょーちゃんを励まそうと思ったのに私が元気貰う感じだなあ。
「しょーちゃん一緒に勉強しよ」
「あ」
「あ……」
勝手知ったるなんとやら、で勝手に部屋に入ったのがまずかった。いや、一応玄関では声かけたんだけどね、部屋に入るときの配慮が足りなかったの。上半身裸のしょーちゃんがいた。髪の毛濡れてるし、トレーニング終わりかお風呂上がりだと思う。
「え……??」
あまりの衝撃に思考が停止する。だってだってしょーちゃんと一緒にお風呂入ったことはあるけどそれ幼稚園とかそのくらいの時だし。年齢に不釣り合いなほど引き締まった身体。腹筋だって割れてるし、完成されてるし、まるで大人の男の人みたいだ。見てはいけないのに目がそらせない。
「見てて面白いか?」
「えっ、あっ、めっちゃ筋肉ついてて見惚れてました!」
「そうか。トレーニング終わったばっかだからシャワー行ってくる。勉強は見てやるからいつも通り適当にやっとけ」
「はーい。あ、私がいるからってはやくでなくていいよ。ゆっくり疲れを癒してね」
「おう」
適当なシャツをもってしょーちゃんは部屋に出て行った。私がしょーちゃんを意識したのバレなかっただろうか。なんでもない風に返事を返せていただろうか。分からない。わからないけどしょーちゃんが戻ってくるまでになんとか平静を取り繕わないといけないのは分かる。
(相変わらずモノが少ない)
しょーちゃんの部屋はしょーちゃん自身と同じようにシンプルで無駄がない。ヒーローになるために必要なものしか与えられなかったせいだろうか、余計なものをもつ習慣がないのだ。和室というのもあろだろうけど家具も少ないし、雑多な印象を与えるとしたら私専用の小型の机くらい……ん?
(私のものが置いてある……)
確かに高校受験の時一緒に勉強することが多かったけど、でも、だからって私のためにモノを置かなくてもいいじゃないか。しょーちゃんの内部にいることを許されているみたいで勘違いしてしまうじゃないか。体育祭のあの問題発言もあって、私はしょーちゃんの一部みたいなのかなって期待してしまうじゃないか。
「来夏まだやってねぇのか」
「しょーちゃん」
シャワーから戻ってきたしょーちゃんをどんな顔で見ていたか、考えたくもなかった。