「何から何まですいません」
「いや、焦凍のためにかけつけてくれたのならこのくらい当然だ」
あれから物凄く不機嫌な顔をしたしょーちゃんがおじさんに連絡してくれて、私はおじさんのご好意で帰りの新幹線を手配してもらった。とは言っても元はしょーちゃんが乗る席だったのを入院で日がずれたから譲ってもらった形なんだけれど。家に帰ったらお金返しに行かなきゃなあ。貯金を崩せば余裕なのだけれど、一介の高校生のお財布に一万近くは入ってないよ、さすがに。出かける前に気づくべきだった……!!
しょーちゃんの話を聞くとおじさんは物凄く悪い人だ。見た目はいかついし、昔っからしょーちゃんをビシバシしごいていたのを見ていたので軽い恐怖を植えつけられている。だけど私が一般人のせいか、ヒーローであるおじさんは私に怖いことは一度もしなかった。修行の最中に道場に顔を出した時は別だけどね。大きな怒鳴り声はトラウマで、おじさんが叫ぶとビクってなっちゃう。そういうのこともあって、私はおじさんにどんな態度で接したらいいか決めかねている。それはどうやらおじさんも同じらしい。
「ところで来夏くん、学校は? 普通科も職場体験だろ」
「えっと、その、ヒーロー科の友人からしょーちゃんが入院したって聞いて、体調不良ということで休んでしまいました……」
「あまりいいとは言えないな」
「分かってます、すいません。相手の事務所にご迷惑をかけてしまいましたし、これからはもうしません。でも今日はしょーちゃんが心配で」
「事務所?」
おじさんが興味を持ったみたいだった。やっぱりナンバーツーと言われるだけあって周りの情報も気になるのかな。お世話になっているところのやつをご近所さんとはいえ商売敵に情報流してもいいのか悩みどころだ。
「はい、職場体験はヒーロー事務所にお世話になっているんです」
「君もヒーロー志望だったかな?」
「いいえ、違います。私の個性は戦闘向きじゃないですし、ヒーロー事務所の事務員を希望してます。私が現場にいなくてもテレパス系の方に画像を送ってもらえたらそれをコピーできますし。希望があれば現場の記録保存もできますし、汎用性あるかなって思ってて。それを差別化して売り込んでいこうかな、と」
「ふむ……でもそれは警察でもいいんじゃないか?」
「うっ、そうですね」
「もしかして焦凍がヒーローに……」
バレている。好きな人の父親に将来設計の理由までバレている。そう言えばあの公開告白現場におじさんはいたんだし、こんな話をしたら即バレるって気付かなかった自分の頭を呪いたい。馬鹿すぎるしこの空気しんどいってレベルじゃない。死にたい。
「……」
「体育祭の時から気になっていたんだが、来夏くんは焦凍と、その付き合ってるのか……?」
「ええとその、はい。すいません!!」
「そうか」
なんだこれ。なんだこのプレイ。「お義父さん、息子さんを私にください!!!!!」ってボケるべきだろうか? さすがに調子に乗りすぎだろうか。
「来夏くんがまだ職場を決めていないなら、私のところを今度見学に来たらどうだ」
「え……?」
「なんだ? ナンバーツーだと不服か」
「いいえ、違います! そんなこと言ってもらえるとは思わなくて。えっとまたおじさんのご都合のいいときにぜひお邪魔させてください!!」
「構わん」
おじさん、個性とかにこだわってるイメージだったから私の個性的に反対されるかなって思ったけど、これはしょーちゃんとのこと認めてくれるってことかな……? そう考えると嬉しくて、おじさんに見えないよう下を向いてこっそり笑った。
地元に着くまでの新幹線の中で、お茶子ちゃんやA組の皆に報告をうっていた。お茶子ちゃんは私が泣いた時に慰めてくれたから少しだけ詳しくね。そうしたらその日の夜はおめでとうって返事がいっぱい返ってきてとても嬉しくなった。そうしてやっと、しょーちゃんと付き合ったんだという実感が沸いてきたのだった。