やっぱり学校を決めるときに大事なのって制服だと思うの。雄英の色合いが大人っぽくて素敵な制服だし、女の子なのにネクタイなのがかっこよくて好き。リボンとネクタイ選べたらもっと良かったなって思うけれど、おしゃれなんだから文句言わないようにしないと!
と、制服の話から入りましたが、そろそろ衣替えの時期です。完全な衣替えは六月末だけれど、そろそろ暑くなってきたから間服期間で結構自由がきくんだよね。さすがに私も暑くなってきたのでブレザーは脱いでる。シャツは長袖だけど。響香ちゃんがベストきていたのかっこよかったなあ。スーツの下に着るデザインのベストだから似合う似合わないが露骨に出ちゃうんだよね。私は絶対着れないタイプ。だからかな、ボーイッシュな格好似合う女の子って憧れちゃう。
「はああああああ」
「ため息すげえな」
「そりゃそうだよ〜もうテストまで二週間ないんだよ!? 高校生科目数多いし今からやって間に合うかな……なんで主要三教科だけで九科目もあるの、おかしいよね!?」
職場体験からしばらく。しょーちゃんがこっちに戻ってきてまた一緒に学校に通えるようになった。恋人同士になってからの登下校デートとは言っても以前とほぼ変わりはない。ほぼ、ね。今までずっと一緒にいたから付き合っても変わらないだろうなあって思ってたんだけど、しょーちゃんからのボディタッチがもの凄く増えた。髪やら腕やら気づけば触っているし、帰宅する時なんて家の前でさらっとキスしてから別れてるの。最初にされたときは思わず悲鳴を上げてしまってしょーちゃんに「嫌だったのか?」って泣きそうな顔をさせてしまったのは記憶に新しい。
「勉強会、するか?」
「しょーちゃん教えてくれるの?」
「今更だろ」
「そうだよねえ。て言うかヒーロー科は実技もやっておいて普通科と進度が変わらないのが恐ろしいね」
中学校の時からお世話になりっぱなしだったのである。私も、一応雄英受かるくらいだから頭は悪くない(と信じたい)んだけど、比較対象がしょーちゃんしかいなかったからテスト前はどれだけやっても不安になる。一種のノイローゼだ。前日とかになると「もうやっても出来ないよおおおおおお」って叫び出しちゃうんだよね。それでしょーちゃんに慰めてもらうんだけど一度も成績抜いたことないから毎回それが続くよね。
「プラスで近代ヒーロー美術史とかあるしな」
「クレイジーかな??」
もうやだヒーロー科怖い。そんな話をしていると学校に着いたので、校門前で別れた。
「あ、来夏ちゃんこっちこっち〜!」
「席取っておきましたわ。どうぞこちらに」
「ありがと!」
「それでそれで? 轟くんとはどんな感じなのかな?」
A組のみんなの中に混ざっているのはもちろん、女子会のためである。もちろん議題は私としょーちゃんのことだった。こういうところを見ると、同い年の女の子なんだなあって少し安心するんだよね。
「ええと、割と今までどおりです」
「え〜〜〜〜?」
「まあ今までが付き合ってるみたいなものだったしね」
「お部屋デート!!」
「でもなんか進展ないの? 手ぇ繋ぐとかキスとか」
「えっ」
「おっ」
「その反応はあるのね……ケロ」
梅雨ちゃん鋭い。彼女はクラスのみんなに対していつも冷静な突っ込みを入れているから、たぶん普段から人間観察をしっかりしてるんだろうな。ヒーローとしての素地は抜群なんだけど、それが今は私にとって良くないというか!!
「いつ!? どこで!?」
「轟くんって意外と手が早いんだねえ」
「そんな感じには見えませんでしたわ」
「……しょーちゃんは私に甘えてるだけだから」
母の愛を小さな頃に奪われて、代わりに肉親への憎しみだけを糧として生きてきたしょーちゃん。私も、お兄さんもお姉さんもまだ小さくてしょーちゃんにどうしてあげればいいか分からなかった。だから私は傍にいただけだった。しょーちゃんのお母さんがいなくなっても、いなくなる前と変わらないように務めただけだった。
「なんでそう思うの?」
「えっと……家庭の事情だから詳しく言えないんだけど、しょーちゃんの家結構複雑で、小学校に入る前くらいからお母さんに甘えられなかったんだよね。私、たぶんお母さんの代わりだと思うの」
しょーちゃんが好きって言ってくれて本当に嬉しい。大事にしてくれてるのもわかってる。だけど、それが母の愛の代わりだと思ってしまうのはどうしたってやめられないのだ。
「あっ、やば、次体育だった! ごめん私もう行くね!!」
気まずくなった空気を誤魔化すように私は席を立った。「またね〜」「進展したら教えてね」とみんなが声をかけてくれる。
「前から思ってたけど来夏ちゃんってさ、ちょっと自分に自信がなさすぎじゃない?」
「それね」
「轟くんどう見ても来夏ちゃんにベタ惚れなのに」
「でもそのお気持ちわかりますわ。轟さんは凄すぎて、反省点ばかり目がいってしまいますもの」
そんな会話を交わしながら、A組の皆も教室へと戻っていった。