「しょーちゃん最近何か変わったことあった?」
「なんだ突然」
「ちょっと気になって」
「特にない」
「ふぅん?」

 おかしいなあ、なんかクラスであったっぽいんだけど。皆「しょーちゃんに構ってやれ」って言ってたってことは、たぶんしょーちゃんは今とんでもない悩みを抱えているんだ。それを励ますのは幼馴染件恋人である私の役目!

「あ」
「どしたの?」
「夏休み一週間いない」
「なんで?」
「ヒーロー科の行事」
「……」
「来夏」
「変わったことあるじゃん! しょーちゃんの馬鹿っ!!」

 自分でも、なんで声を上げたのかよくわからなかった。冷静になって考えてみれば、しょーちゃんが一週間も私と離れることをなんとも思ってないみたいな態度だったのがショックだったんだと思う。だって私としょーちゃんは休日までべったり過ごしている。それがこんなに長期間離れることがなかったから動揺もしていたんだと思う。この件に関しては悪いのは私だ。それは絶対間違いない。


 突然A組のメンバー数名から同じ内容の文章の連絡が届いてしばらくあと、いったいしょーちゃんに何があったのか確かめるために私はA組へと向かっていた。登下校中に本人にそれとなく聞いたんだけど、何も教えてくれなかったので苦肉の策だった。しかもその登下校中に夏休みは林間合宿があって何日か泊まり込みになると聞いて、寂しくてつっけんどんな態度を取ってしまったので、仲直りも兼ねている。

「お、お邪魔しまーす」
「全く勉強してねーーーーーー!!」

 上鳴くんが叫んでいた。テスト一週間前になってようやく危機感が湧いてきたらしい。こっちと違ってヒーロー科は体育祭も職場体験も手を抜けない行事だから勉強もおろそかになるよなあ。仕方ないよ。とか思って話を聞いていたら緑谷くんが、

「アシドさん、上鳴くん! が……頑張ろうよ! やっぱ全員で林間合宿行きたいもん! ね!」

と、私の地雷を踏み。しょーちゃんが、

「普通に授業受けてりゃ赤点は出ねえだろ」

 と、上鳴くんの地雷を踏んでいた。上鳴くんが「言葉には気をつけろ!!」と叫んでいたけど全くもってその通りである。なぜ人はいとも容易く他人の地雷を踏んでしまうのだろうか。声をかけるタイミングを逃したままそっと空気になって過ごしていると百ちゃんが二人に勉強を教えようかと声をかけていた。さすが百ちゃんだ。美人さんでスタイル良くて個性も強いだけじゃなくて頭もいい! そして性格までもいい!! そんな百ちゃんの周りに何人も勉強を教えてと頼んでいるのを見て、私も声をかけた。

「百ちゃん、その勉強会私も参加していい?」
「あら来夏さん。もちろん構いませんわ」
「ありがとう、百ちゃん! 私もう本当に理系科目がさっぱりで、どうしようかと困ってたの」
「来夏さんは勉強頑張ってるって聞きましたけど……」
「ううん、私は人より下だからその分努力しないといけないの」

 なにせ我が家の比較対象は常に轟さん家だからなあ。しかも同い年の子がいるとなればいつだってしょーちゃんと比べられてしまう。仕方のないことなんだけどね。

「週末に百ちゃん家だよね。百ちゃんのおうちにお邪魔するの楽しみだなあ。お友達の家にあんまり言ったことないの」
「まあ、そうなんですの。私も気合をいれておもてなししないといけませんね!」
「週末……」
「あ、しょーちゃん」

 なんて百ちゃんと盛り上がっていると、ふらりとしょーちゃんが隣にやってきた。じとっ、と不満そうな瞳で私を見てくる。お勉強会の何がいけなかったのかな?

「週末は俺と病院行くんだろ」
「そう、だね……でも今回テスト範囲広いし外出してたら間に合わないよ。来週は一緒に行くからおばさんにごめんなんさいって伝えておいてくれる?」
「俺だってテスト前だ」
「しょーちゃん授業聞いてたら大丈夫なんでしょう?」
「う、」

 それにしょーちゃん前のテスト私よりよかったよね、と首を傾げるとますます不機嫌そうな顔になった。褒めたつもりなんだけど、なんでしょーちゃんは怒ってるんだろう?

「……」
「轟、言葉には気をつけろよ」
「うるせえ」
「痛ッ!」

 しょーちゃんが無言で上鳴くんを殴った。普段はそんなことしないのに、やっぱり何かおかしい。だから皆が教えてくれたんだね。これは近いうちにお話を聞いて解決してあげないと!!

「あ〜しょーちゃんダメでしょ、八つ当たりしちゃ。なに怒ってるの? 上鳴くんごめんね。ほらしょーちゃんも謝って」
「悪ィ」
「おう……まあいいけど」

 殴られたのにあっさり許してくれる上鳴くんはやっぱりいい人だ……! お礼に勉強会に参加するみたいだし、百ちゃんがほかの人に教えるので忙しかったら私が見てあげよう。文系科目はだいたい大丈夫だし。
 さて、週末の話はさておき今はしょーちゃんだ。逃げられたら困るのでしょーちゃんに腕に私の腕を絡ませ縋り付く。そうして「しょーちゃん、今日ご飯一緒に食べよ?」とじっと目を見てお願いすれば、なぜかいつも通りの機嫌に戻ったしょーちゃんがこっちを見ていたのだった。謎だ。

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