※球技大会っていう模造行事あり




「春次少女! ちょっと時間あるかい?」
「オールマイト先生! はい、いくらでもありますっ」

 お昼休み。職員室の前を通りかかるとオートマイト先生から呼び止められた。いつもよりテンションが上がっているのは仕方ない。ほかに推しのヒーローはいようともオールマイトは別格と言われるほど彼の人気は凄まじいのだ。かくいう私もファンだったし、普通科の生徒がオールマイト先生に授業を見てもらえることはないから、接触はものすごく貴重なのだ。

「いやいや、無理は禁物だよ。この間の写真のことなんだがね」
「球技大会のですか? ばっちり残ってますよ」
「印刷をお願いしても?」
「任せてください!」

 ついこの間レクリエーションの一環で行われた球技大会。オールマイト先生は雑用係りとして皆の写真をとることを任されていたらしいのだけれど、見ての通りの筋肉で、力が強すぎてついカメラを破壊してしまったらしい。保護者に送るお便りの一面に使う写真がないのは問題だと相澤先生に叱られて困っていた時にしょーちゃんが連れてきたのが私だった。

「先生、来夏がいます」
「うん? しょーちゃん????」
「轟、そいつはどう見ても人間だろ」
「いや、個性がカメラなんで」
「……採用」

 ということで球技大会の日、私はカメラとしてあちこち走り回って写真を撮っていたのだった。先生の指示で撮りすぎたので容量がギリギリなので早めに処分したかったので、正直助かった。

「たしか君はコードをさせばパソコンに転送できるんだよね」
「はい! できます。コードお借りしてもいいですか?」
「モチロン! これだよ」
「ありがとうございます〜」

 先生に渡されたコードを背中のあたりにある穴に刺そうとする……んだけど体が硬いし手元が見えないのもあってさせない。どうして手首とかもっとわかりやすいところに穴が無いのか。こればっかりは生まれつきだから仕方ないのかな。

「ん? んんんん?」
「だ、大丈夫かい?」
「ちょっとうまいこと挿さらなくて……オールマイト先生、代わりに挿してもらえます?」
「え!?」
「ダメですか?」
「教え子のシャツの中に手を突っ込むのはさすがに教師としてどうかと思うんだよ」
「何やってるんだ」

 なんて掛け合いをしていたら背後から声がかかる。声だけでわかる。私の幼馴染くんだ。

「あ。しょーちゃん!」
「轟少年!」
「あのね〜今先生に頼まれて写真のデータ移そうとしてるんだけどこれがなかなかささらなくて」
「ああ」
「それで先生が手伝ってくれなくて」
「私が悪い流れなのかい!?」
「代わりにやってもらっていい?」
「いいぞ」
「ありがとー」

 位置が位置なのでしょーちゃんには小さい頃から何度もお願いしたことがある。躊躇いもなくズボッと手を差し込もうとして、

「来夏」
「なぁに?」
「きつくて手が入らない。ネクタイ外してボタン緩めてくれ」
「はーい」
「あわわわわ」

 なぜかオールマイト先生が慌てていたが、しょーちゃんのおかげで問題なく接続できた。

「お待たせしました! ブレてないやつ全部送っていきますね〜」
「お願いするね」

 そうして容量に空きができてスッキリして職員室をでる。隣には当たり前のようにしょーちゃんがいる。……そういえばなんで職員室にいたんだろ?

「来夏」
「うん?」
「首のボタン……というかネクタイ締めないのか」
「まだ、鏡見ないとできなくて。あとでトイレで直すよ」
「俺がやってやる」
「いいの?」
「ああ。外せって言ったの俺だしな」
「ありがと〜」

 しょーちゃんのほうが背が高いから少し屈んだ体勢で結び直してくれる。あの、ね。自分より下の位置にしょーちゃんの頭があるの久しぶりだし、近くてちょっとやばい。今更ながら恥ずかしくなってきた。しかも廊下でやってるから他の生徒さんも通りかかるしなんだこれ……なんの羞恥プレイだこれは。真っ赤な顔で立っていると、しょーちゃんの背後から歩いてきたお茶子ちゃんたちには何か違うことをしているように見えたのだろう。勘違いされたてやいのやいのと言われたのは、はまた別の話。
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