「グラスハートシンドローム?」
「そうです」
聞いたこともないのは当然だった。世界でも発症例が一桁しかない謎の奇病。治療法も発症方法もすべて謎。わかっているのは心臓がだんだん弱くなり、鼓動にすら耐えられなくなり硝子のように割れてしまうことだけ。その期間は個人差はあるけれど、発症してから半年ほど。どこにでもいる普通の女の子の私は、平凡な日常を失ったのだった。
「心ちゃん! やっときた! 連絡つかんくて心配してたんよ」
「篠原さん、もう体は大丈夫なの?」
もう体は大丈夫だというのにショックのあまり二日ほどズル休みしてしまった。現実を受け止めることができなくてぼーっとしていた期間だ。その間にお茶子ちゃんが心配して連絡くれていたのは気づいていたけど、返事をする気力がなかったのだ。どうしようもないことだから、と諦めがついてしまって、それなら残り僅かな時間を楽しもうと思ったのだ。
久しぶりに登校した私を暖かく迎えてくれたのは、仲良しのお茶子ちゃんと緑谷くん。大事な友達だ。
「二人とも、心配かけてごめんね。身体は……大丈夫じゃないけど大丈夫」
「んん?」
「それって一体どういうこと?」
「えっと、休憩時間に話すね」
大事な友達だから隠し事はしたくない。学校には一応言っているしいつかバレちゃうだろうしなあ。
「
「そうなの。これ、自分で調整できるようにってMAXの心拍数と今の心拍数がわかる機械貰ったんだよ」
「信じられんことだけど、こういうの見ると現実なんやね……」
「そうなの。あーあ、まだ恋もしたことないのに死にたくないなぁ」
「聞いたことない病気だけどあの高名な医者が言うなら実際にある病気だし今検索をかけたら何件か引っかかったこれを読んだ感じ全員心臓の機能が低下して死んでいるドキドキすると死ぬというか驚いた拍子に心臓が止まったってケースもあるな心臓が衰弱するってことは病気の進行よりはやいペースで心臓を鍛えたら機能が低下しても今の数値を記録することができて死ぬことはなくなるかもしれないでもこれは仮説だし」
「デクくん怖い怖い怖い!!」
何故か緑谷くんのスイッチが入ってしまった。彼は普段いい人なんだけど、興味があることに対して考察してしまう癖があって、その時に考えていることが口から漏れちゃうから変な人扱いされちゃうんだよね。
「あ、ごめん。つい考えこんじゃって……篠原さん、あの、これ仮説なんだけどもしかしたら病気治るかも知れないよ」
「えっ」
「ええっ!?」
「さっきスマホで病気について調べてたんだけど、半年よりに先に死んだ人って急死なんだよね。苦手な虫が顔に引っ付いたとか、好きな人に抱きしめられたとか、後ろからわっと驚かされたとか、なんていうか」
「情けない死に方やね」
「お茶子ちゃんずばっと行くね」
「うん、そうなんだ。だから運動してドキドキしたとか、恋愛してドキドキしたとか、心拍数に心臓が耐えられなかったらダメなんだと思う。仮説だけど肉体的に心臓を鍛えたら病気の進行止められるんじゃないかな」
「なぁるほど〜」
やっぱり頭いいなあ、緑谷くん。いざって時に頼りになる!
「じゃあ、筋トレとか始めようかな?」
「僕も筋トレしてるし、よかったら手伝うよ」
「ほんと? ありがとう!」
「ふむふむ。肉体面ではデクくんが担当するとして、私は精神面だね?」
「精神面?」
「だってさっき恋人に抱きしめられて死んだってのあったやろ。それって恋愛のドキドキもダメってことじゃん。そして心ちゃんは恋愛耐性がない」
「はい……恥ずかしながら……」
私たちが通っている私立雄英学園は、超エリート校だ。とは言っても役割分担されていて財閥とか政界の御曹司やご令嬢などの家柄が優れている人。または何かしらに優れた個性を持っている人――部活動の特待生とかね。あとは枠が少ないけれど一般からえげつない難易度の試験を突破した人だ。私は特に才能がないので学力。なので、ずっと勉強に打ち込んできてまだ初恋もまだなのだった!
「大丈夫、私に任せて。最高の恋愛さしたるから!」
「お茶子師匠〜!!」