月下の紙飛行機




 二月九日、日曜日。この街では毎週のように街のどこかで、街主催の夕食会が開かれ、住人たちが一堂に会する。今日は海辺でバーベキューという、なんとも賑やかな催し物になっていた。人々は皆ラフな格好をして海辺に集まり、用意されていたコンロに各々の好きな食材を入れていくのだろう。肉や野菜の焼ける香りと、楽しそうな喧騒に紛れた波の音が心を穏やかにした。
 とす、とほんの少しの衝撃を携えて腕に何かが当たる。それは尖らせたやわかい何かのようで、しゃがみこみ、その何かを手探りで探し当てた。
「あっ、すみません、アンブラさん」
「……E2、これは……紙飛行機か?」
 その溌剌とした声の主はE2といった。劇作家を目指していると聞いたことがあるが、彼が書いたものは一度も読んだことはない。
 拾った紙飛行機を彼に手渡すと、彼はありがとうございます、と続けた。
「ええ! ちょうどこれから紙飛行機飛ばし大会をするんですが、アンブラさんもどうですか?」
「ほう……そうだな、我も参加するか」
「はい! あ、僕がおりますね」
「助かる」
 どんな折り方がいいですか? とカサカサと鳴る紙の音に、とにかく飛ばせるものを、と伝えた。彼の小さな笑い声が波音の狭間に入った。