独占欲...?
3月15日、ホワイトデー。の翌日。
放課後、私が家に着いたすぐ後のこと。
ピコンッと鳴る私のスマホ。見ると、カナメくんからの
LINEの通知が。
『どこにいる?』
「さっき帰ってきた!どうかした?」
『よかった。外出てこれる?』
ん?と思い窓の外を見ると、家の前でこっちに向かって手
を振るのは......カナメくん!?
上着を羽織って慌てて外に出ると、どうも、と言って微笑
むカナメくん御本人が。
『はいこれ。』
そう言った彼が渡してきたのは、小さな紙袋。
「え?なにこ...れ、え"っ...」
『ふはっ(笑)変な声。』
「えちょ、ちょっと待って...なに...」
袋の中を見ると、これまた可愛い薄ピンクの箱がひとつ。
中にはゴールドのHが付いたネックレス。
『どう?』
「なに...な、んで...これ、ホワイトデー...?」
『まぁ、昨日だけど。』
「うそ、なんで、え、待って...あたまが...まわらな…」
なんの涙なのか分からないまま突然ボロボロ泣き出す私に
少し戸惑うカナメくん。
『ちょっと。いい歳して、プレゼント貰ったくらいで泣か
ないでよ。』
「だって...嬉しくて...今日も会えるなんて思わなくて、
それで...」
今日は珍しく向こうから電話をかけてきたと思ったら、仕
事多くて会えそうにないって言われて...
なのに、こんな。こんな素敵なプレゼントまで用意して...
涙は止まりそうにない。
『はぁ...とりあえず行くよ』
「えっ、どこに...っ?」
私の手を掴んでスタスタ歩き出すカナメくんと、手を引か
れるがまま早歩きで後に付く私。
着いたのは、街灯に照らされた小さな公園。
『ここなら気が済むまで泣けるでしょ?』
「!! っうぇ、うぇえぇ、ひっく、っ…」
『いや、泣き過ぎ...泣いていいとは言ったけどそんなに?』
「なんなの、っもう、…うぇえんっ、、!」
『恋人っぽいかな、と思って』
2人でベンチに座る。ただひたすら泣き続ける私と、ただ
ひたすら隣で静かに背中を撫で続けてくれる彼。
それから少し時間が経ってようやく泣き止んだ私を見て、
『どう?俺が選んだお返しは。』
「うんっ...、かわいい、...つけてもいい?」
『駄目ならあげない。...貸して。』
『......ん、どう?こっち向いて』
「ど、どうかな......」
『うん、似合ってる。』
そう言って、優しく頭を撫でてくれる。
その手の感覚が心地良くて、顔がゆるくなってしまう。
「へへ、カナメくん、今は歳上って感じがするね」
『は。それどういう意味?俺は一生アンタより歳上なんだ
けど。』
「いつもは私がお姉さんだしぃ〜」
『はぁ。どう考えても園児でしょ...』
半分呆れたように笑うカナメくんを見て、
ああなんか今、すごく幸せだなあって感じた。
でもきっと伝えたらカナメくん、また照れちゃうかな。
なんて1人で考えてぷっ、と小さく吹き出す。
『なに笑ってんの、取り憑かれた?』
「べっつに〜?ふふっ」
『ちょっと...隠し事とかずるいんだけど』
「それあんたが言うか!」
2人で顔を見合わせて同時に笑う。
この時間がずっと続けばいいのに。そう思った。
『あ、そういえば。』
「?」
首元を触って何かを取り出すカナメくん。
あれ?ネックレス?
「あ!それ!!」
彼の首元には、街灯の光に当たって少しだけキラキラと反
射するゴールドのKのネックレスがあった。
「わ!おそろい?お揃い!?」
『俺の分まで買うつもりはなかったんだけどあんたが喜び
そうだと思って。』
「嬉しい......!わたし毎日つける!」
『はは、俺も嬉しい』
「ん〜〜〜〜...!」
「だ〜いすき!」
と彼に飛びつくと『うん、俺も』と言って支えてくれた。
額が触るくらいの距離まで顔を近付けて笑い合って。
すごくすごく、幸せな時間。
『ねえ』
「ん?」
『ネックレスをお返しとして渡す意味、知ってる?』
「...?あ!えっと、貴方が好きです!?」
『それはキャンディ。俺が聞いたのはネックレスね。』
「ぅえ〜...ネックレス...?しらない...」
『知りたい?』
「知りたい!」
『ふーん?』
「.........」
『.........』
「.........えっ、教えてくれないの?」
『調べればすぐ出るでしょ。スマホ。』
「ちぇ!ケチカナメ。」
『ありがと』
「褒めてないし...」
教えてくれたっていいのに...などと文句を垂れながら、言わ
れるがままスマホで検索してみると。
画面に出てきたのは、予想もしていなかった文字で。
【ホワイトデーのお返し】
ネックレスの意味:独占欲
「……どく、せん、よく?」
『え、分かんないの?どこまで馬鹿なの。』
「ちがう、わかる、けど...」
『けど?』
「カナメくんが、私に、独占欲?ありえない、」
『待って。俺のこと何だと思ってるわけ?』
「他人に興味なしのドライモンスター。」
『はぁ?俺だって感情くらい持ってるから。
...ていうか、あんたは他人じゃないし』
「!!!......ばーか」
『あれ、顔赤くない?』
「あ、赤くない...!花粉症!ばか!」
『あんたに馬鹿って言われても何も刺さらない』
「ひどい!私だって勉強できるし!...中学の範囲なら。」
『出来てないじゃん』
「あー!!うるさ!!あーーー!!」
『あんたが1番うるさい。ちょっと黙って。』
「むぐ」
カナメくんの大きな手で口を塞がれて喋れない。
もごもご。必死の抵抗の末、
「...〜ぷは!くるしいよ!ばか!」
『はいはい馬鹿馬鹿。』
「も〜!って待って今何時...あ!ごはんの時間だよ!帰ろ、
カナメくん!」
「はぁ...ご飯て...。分かった、帰ろう。」
『独占欲、か...。』
いつからそんなことを想うようになったのか。
___いつからこんなに、彼女を好きなのか。
その答えは、当の俺が分からないんだから、誰も分からな
いだろう。
小走りで駆け出す彼女の後ろ姿を見て、少し笑みが溢れて
しまう。
早く早く、と手招きする彼女に今行くよ、と答える。
『俺も大概、馬鹿なのかもしれないけど。』
そんなことを想いながら。