ブリリアンシー
金色にも銀色にも見える透き通った髪の先から、一滴の汗が私の頬に流れ落ちた。
章大の荒くなった呼吸も時折詰める息も、快感に耐える表情も、全てが私の胸を締め付ける。
手で触れた章大の胸から早いビートが伝わる。その手を突然掴まれてベッドに張り付けられると章大が目を細めた。快楽に歪む私の顔を見つめながら更に深くまで入ってきて、熱い吐息の中に甘い声を漏らすからそれにさえ身体が反応してしまう。
まだ繋がっていたいのに、私の体を探るように中を掻き回す章大と高める様に厭らしく体を這う手に確実に追い詰められていく。荒い呼吸を繰り返しながら章大が今までよりも更に激しく私を揺さぶる。唇を噛み締めて見上げ訴えるように首を横に振れば、ひくりと口角を上げた。髪に差し込まれた手はくしゃりと髪を乱し、焦らすようにギリギリまで唇を近付け章大が私を見つめる。その唇が少し荒々しく深く合わせられると同時に、章大が一気に奥まで入ってきて抉られ、呆気なく絶頂を迎えた。
脈打つように跳ねた体を抱き締めて尚も打ち付けるから、おかしくなってしまいそう。
章大の腕が息が詰まりそうな程私を締め付け、震えるようにぐっと奥深くに腰を押し付けた。薄く瞼を開くと震える睫毛の先で、まだ整わない呼吸を繰り返しながら章大が色気を宿した瞳で私を見つめていた。
重い瞼をゆっくりと開いて部屋の中を見回すと、次第に頭が働き始め、今日あった出来事が次から次へと頭の中を巡った。今までとはまた違った感情が一気に押し寄せてきて胸につっかえるかのように苦しくなる。
見つめていた天井が僅かに歪んだから目を閉じた。瞼の奥がじわりと熱に包まれて、零れないように目を閉じたはずだったのに、目尻から涙が零れ落ちたから自分の腕で涙を拭って布団に顔を埋めた。
『大丈夫?』
布団の上から聞こえた声にドキリとした。顔を出すことも出来ずに布団の中で頷くけれど、きっと章大には見えていないはず。唯一出ている頭をわしゃわしゃと撫でられ、ますます涙が込み上げてくるから戸惑う。
『...どしたん?』
布団の中で章大の手が探るように動いて私の素肌に触れる。顔を上げることは出来ないから、引き寄せられるままに章大の体に縋り付いて首筋に顔を埋めた。
こうする事が許される関係になったのだと思ったら、嬉しいのに切ないようなよくわからない感情で、たまらなく胸が苦しくなる。
好きでいる事を諦めようと思った。
ずっと切なかった。
ずっと、苦しかった。
私が今までそんな想いでいたと知ったら、今私が泣いていると知ったら、章大はどんな顔をするんだろう。
『...泣いてるん?』
縋り付く私を包み込むように抱き締めて宥めるように背中を擦る章大は、私の耳元でふっと息を漏らして笑った。
『なんかアレやなぁ...なんか、いつもの汐里とちゃうな』
私を宥めて甘やかす章大の声色も手も優し過ぎて、私には勿体ない。
『...強がってたんやなぁ。今までは』
持て余した想いに苛立って酷い言葉を口にしたこともあった。可愛くない態度ばかり取ってきた私の事を、そんな風に言ってくれるなんて、思ってもみなかった。
「......苦しかった、...」
聞こえるかわからない程小さな声で呟いた。素直に好きと言えない私の精一杯の想いを込めて。
背中を撫でる章大の手が止まったから聞こえたのだと思った。
すると私を呼ぶように頭をポンポンと叩かれたけれど、顔が上げられない。
『それ、めっちゃ嬉しいやつやな』
返ってきた言葉は予想外のものだった。
『そんなけ好きでおってくれてるなんて思てへんかった』
ふふ、と笑った息が私の髪を揺らした。今までの想いが伝わった嬉しさと恥ずかしさで、見えているはずもない顔を章大の首筋に押し付けて隠す。擽ったそうに笑う章大の吐息すらも私の胸を甘く締め付ける。
章大の片腕が離れてベッドの上に手を伸ばすと、戻って来た手には数枚のティッシュが丸められていた。それを私の顔に押し付けるように渡され涙を拭うと、また背中に回った手がポンポンと叩く。
『そろそろ顔上げへん?待ってんねんけど』
ティッシュで顔を押さえる私の顔を無理矢理覗き込むことをしない優しさも、また想いを加速させる。
これ以上好きにさせてどうするの。想いが伝わった今でさえこんなに苦しいのに。
突然取り上げられたティッシュで今度は章大に顔を拭われ、ゴミ箱にティッシュを放りながら髪を撫でられる。
少し顔を上げると、想像していたよりもはるかに優しい顔で、銀色の前髪の隙間から覗く瞳が私を見つめていた。すると章大の手が頭を抱えてまた章大の首筋へと顔を押し付けられたから驚いた。
『恥ずかしいからちょっとそのままな』
「...なに、...」
『苦しかったで。俺も』
...私のセリフだよ。...そんなの聞いてない。知らなかった。そんなに想ってくれていたなんて、全然知らなかった。
く、と息を詰めるように動いた章大の喉が、まるで何かを耐えているみたいで胸が熱くなる。章大が泣いていたりしたら、どうしよう。
顔を上げれば目が合う前にすぐに唇が塞がれて深く舌が絡み付いた。一瞬だけ目にした切ないような章大の顔は、まるで昨日までの自分みたいでまた涙が滲んだ。キスの合間に視線が絡むと、少し潤んだその目が細められ幸せそうに笑みを作るから、溢れる想い共強く章大を抱き締めた。
End.