Love or Lies
緩やかに肌を滑る指にすらいちいち反応してしまう。腰を這う指は厭らしく心地良く肌を刺激して、何倍にも快感が増した。
ゆったりとした律動を繰り返し私の中を刺激する侯隆は、私をじっと見つめたままでいる。
少しの刺激にも声が漏れてしまうのは、相手が侯隆だから。その事にまだ気付かれるわけにはいかない。やっとこうして交われたのだから。
逃げるように目を閉じた。普段は私の目も見ないくせに、あまりにも真っ直ぐに私を見つめるから、この想いを見透かされてしまいそうで堪らなく怖い。
少しスピードを上げた律動に顔を歪めると、次第にその動きは早くなる。思わず侯隆の手を握り締めた。けれどすぐに手を滑らせてシーツを掴む。触れることにさえ臆病で胸が軋んだ。
『俺にはわからんわ』
独り言のように呟かれた言葉の意味を知りたくて目を開け侯隆を見遣れば、目を逸らして私の腰を掴み奥深くにぶつける。声を漏らす私に表情も変えずにひたすら打ち付ける侯隆は、私を尻軽な女だと思っているに違いない。
『本命やない男に抱かれるて、どんな気分なん』
...そんなのわかるわけない。相手は好きな人なんだから。
蔑むような目を向けられたとしても、自分でこうなる事を願ったんだから。
...それなのに、そんな目で私を見ながら優しく触れる指先も唇も狡い。自分で承諾したはずの私とのセックスに苛立ったような態度を見せるなんて、狡い。
「...じゃあ、なんで、」
思わず漏れてしまった言葉に動揺して途中で飲み込んだ。
けれど遅かった。律動が緩やかになって侯隆の目が向けられると、ただ黙って私を見据える。その鋭い目に急かされて、ごくりと喉を鳴らした。
「...なんで、好きじゃない私を抱けるの、」
このセックスが何でもないことだと思わせるように、楽しんでいるように見えるように、...酷い女に見えるように、精一杯口角を上げて笑って見せた。
『...お前にはわかれへん』
“お前が誘って来た”
そんな言葉が返ってくると思っていた。予想外の返答に、どんな言葉を返したらいいのかわからず顔を逸らすと、侯隆の指先が頬を撫でた。見上げた侯隆は、私を見下すような表情なんかとは程遠い顔で私を見ていた。
『わかって欲しいなんか思てへん』
切なげに、僅かに揺れるその瞳に目を奪われる。次第に近付いてきた侯隆の唇は啄むように私の唇を食んで、掌が頬を包む。まるで愛しい者に触れるように頬を親指が撫で、唇が離れると侯隆の視線は私の唇から瞳へと移った。
奥歯を噛み締めて私を見つめた瞳に、自惚れてしまいそうなる。
...どうしてそんな言い方をするの。
なんで私に優しく触れるの。
揺れる瞳は、本当は誰を見ているの。
侯隆の目に映った私は、自分でも驚く程に情けない顔をしていた。溢れる想いを抑え切れずに泣き出しそうに歪む、恋する女の顔。
また律動が早まり声が漏れるけれど、目を逸らすことはしなかった。侯隆の表情を見逃すわけにはいかない。切なげな表情の裏に隠された気持ちを、どうしても知りたい。
頭に触れた侯隆の手が髪を撫で、私を抱き寄せた。力の篭った腕に抱かれ、侯隆の首筋に顔を押し付けられる。
...我慢の限界。もう黙ってはいられない。
「...私は、...好きな人としかしたことないから、...わかんないよ、」
顔を上げた侯隆の髪の先から汗がポタリと一滴私の頬へ滴り落ちた。
薄く唇を開いてただじっと私を見つめる侯隆の目の色は、さっきまでと違って見える。ゆっくりと伸びて来た指が頬に落ちた汗を暈すと、急に目が逸らされて落ち着きなく泳ぎ出した。
顔の横に付かれた侯隆の手に探るように指を這わせ、今度は力を込めてその指を握る。するとその目が動いて視線が絡むと、引き寄せられるように唇が重なり、より強くなった腕が私の体を掻き抱いた。
End.