brightly


期待してしまう。他の人と話していても集中出来ないほどに、忠義のことばかり考えてしまう。忠義がそれを身に付けている日は、そこにばかり何度も目がいく。
ビールを煽る忠義の左耳に光るピアスを盗み見ていたら、くるりと私の方を向くからドキリとする。その目が細められて口角が上がった。

『...何?何見てるん』

耳を掠めた甘い声と熱い吐息にドキリとした。いくら騒がしい飲み会の席とは言え、唇がくっつく位耳元で話さなくても聞こえるのに。
だから思わせ振りだな、といつも思う。私を振り回して楽しんでいるんじゃないかと、不安にもなる。けれど、彼の耳を見て、やっぱり期待する。

「...私があげたやつだなって、」

首を傾けた忠義の目が丸くなって私を見つめた。
だいぶ前に、誕生日が近いからとせがまれて買ったピアス。それを結構な頻度で付けているからその意味が気になってしまう。私と会う時には必ず着いているから、期待せずにはいられない。

確信なんて何一つない。それらしい言葉ももらったことなはない。
けれど、私に触れる優しい手もその行動も、私を勘違いさせるのには充分過ぎた。私の心は、惹き付けられたまま解放される隙はない。

ふっ、と笑って忠義が私から目を逸らし俯いた。

『...あー、そうやったっけ』

期待してしまっただけに、その一言が私の心を容赦無く抉った。

...嘘。忘れてた...?
え、嘘でしょ...?
私のこの気持ち、どうしてくれるの。

自分の耳に触れて笑う忠義は、何故いつもそのピアスを選ぶんだろう。

「...忘れてたの、?」

私に戻って来た優しい目はまた細められて、その口元は口角を上げた。俯いた私の髪を撫でるように触れた忠義の手は、やっぱり優し過ぎて胸が締め付けられる。

『...んふ、...ごめんな?』

笑っているその声は、やっぱり私を振り回す。弄んで私の心を掻き乱す。

むかつく。
悪いなんて思ってないみたい。
やっぱり私の気持ちに気付いてるんでしょ...?
だからそんなこと言ってからかって、楽しんでるんでしょ...?

「...どうせ安物だけど」

涙を零すわけにはいかないから、わざと不機嫌さを押し出して忠義を横目で睨み付ける。

すると、急に忠義の笑顔が消え目が逸らされた。いつもなら大笑いして誤魔化すのに、予想外のその表情が私の胸をざわつかせる。次第に大きくなる鼓動は、まだ期待を含んでいるような気もする。

『...ちゃうよ』

さっきまでとは全く違う、私と同じような不機嫌さを滲ませた顔で発せられた小さな声に呆然として、え?と聞き返す。

『...そういう問題ちゃうし』

拗ねた様に俯いた忠義に遠慮がちに腕を掴まれた。その熱い掌が、私の腕をぐっと力を込めて握る。

『...俺にとっては大事やねん。...お前が、くれたから』

やっともらった欲しかった言葉も、素直に受け取れないくらい動揺していた。泳いだ目は宙を彷徨ったまま私には向けられない。
...なんでこっち見ないの。またからかわれてるかと思うじゃない。

核心的な言葉も疑ってしまう。
いつも忠義の態度は曖昧だったから。

痛い程に握られた腕に、どちらのものかわからない脈がドクリドクリと大きく波打つように感じる。
周りにはたくさんの人がいるのに、視界は狭まり脈の音しか聞こえない、ふたりだけの世界みたい。

「...からかわないで、」

忠義の気持ちを探るために咄嗟に出て来た言葉の答えは、たった一瞬だけ触れた唇。
周りを気にするように見回した忠義は、私の顔を覗き込んだ。

『からかう程の余裕なんかないで』


End.