パーフェクト・ラブ


さすが師走。
師に限らず、それはアイドルも同じみたいで。先月の終わりからバタバタと慌ただしく動いているらしいすばるには、暫く会えていない。

今日、久し振りに電話が来たと思ったら
『今から行く』。

今日ってクリスマスじゃん!
今日会えるなんて思っていなかったから何の準備もしていなかったけれど、クリスマスに会えるなんて!と少なからず浮かれた。

さすがにケーキ屋なんてもう閉まっている時間だし、準備は出来ない。ツリーなんて今更無理だし...。
結局、ワインはあるからまぁいいかと妥協した。

けれど、来て直ぐに押し倒されて、話す暇もないほど手早く服を剥ぎ取られてセックス。今はベッドの上だ。

...寝られない。
なんっか悔しくて寝られない!
さっきは快楽に飲み込まれて、気にしている暇なんかなかったけれど。
よくよく考えたらクリスマス。...だってせっかくクリスマスなのに、ヤるだけヤって寝るって!
今はもう、23時。

ケーキはランチで食べたから、...まぁよし。
乾杯くらいしたかった。
メリークリスマスくらい言いたかった。
...久し振りだね、くらい言いたかった。
せめて抱き締めて寝て欲しかったー!

さっき寝返りを打ってこっちを向いたすばるを恨めしげに見つめたけれど、あまりにも気持ち良さそうに穏やかな顔で寝息を立てているから、結局「まあ、いっか、」になってしまう。
だって好きなんだもん。しょうがない。

自分からすばるに擦り寄って背中に腕を回して抱き着くと、眉間に皺を寄せていた。ますます締め付けてぎゅっと抱き着いたら、眉間の皺もますます深さを増した。

「すばるー」

小さい声で呟いた。
寝ている間も聞こえているから、聞こえたことを夢に見たりするとテレビで言っていたから。

「すばるー好きだよー」

私の夢でも見たらいい。
夢に出てきた人が気になるみたいに、私のことをもっと好きになったらいい。

「すーば」

呼び掛けたところですばるがパチっと目を開けたから、思わず腕を解いて少し距離を取る。すばるが睨むように鋭い目で私を見ている。

『...もー、お前うっさいねん、』
「...だってー」
『寝られへんやん』
「...だって、クリスマス...」

本当に寝てた?すっごい鋭い。
寝起きとは思えない程強い目力のすばるに見つめられて、思わず「ごめんなさい、」と漏らすと、すばるはまた目を閉じた。

『...こっち来いや』

小さく呟かれたそれに驚いたけれど、嬉しくて擦り寄った。背中に回った腕が私を引き寄せ体がぴたりと密着する。

『なんや、足りひんのか』

至近距離で真顔で言うすばるに首を横に振ると、呆れたような顔を見せて私に跨った。

『クリスマスやろ』
「は?」
『クリスマスがしたいんちゃうんか』
「...そうだね」
『お前がはよ寝えへんからやんか』
「寝たらクリスマス終わっちゃう。あと1時間しかないじゃん」
『サンタは寝てからしか来ーへんやろ!』

何それ。子供に言うみたいなセリフを私に言うから、怪訝な顔ですばるを見る。
急に手を掴まれたと思ったら、その手を顔の横に張り付けられ、いきなり噛み付くようにキスをされ深く舌を捩じ込んで絡め取られた。

挑発するように笑いながら舌を絡めるすばるを、苦しさに顔を歪めながら見る。
キスと一緒に、押し付けられた手の指を器用に弄んでいる。僅かに声が漏れると、手を解放されたからすばるの肩を押した。

「...えっ」

すばるがニヤリとした。
すばるの肩を押した自分の左手の薬指に、シルバーのリングがはめられていた。目を丸くした私を見て満足気に笑ったすばるが、私から下りて隣に転がる。

『お前が悪いねん。いつもセックスしたらすぐ寝るくせに、今日に限ってなんで起きとんねん』

声が出なかった。
すばるがこんなサプライズを...!びっくりして、感動して、色んな感情が入り乱れて声が出なくて、ありがとうすら言えない。

『...さ、...寝よ寝よ』
「...ちょ、ちょっと、!」

背を向けて布団をかぶり直したすばるをやっと出た声で止めると、ニヤリとして私を振り返った。くるりと私に向けられた体が、再び私の上に来て顔の横に両手が付かれた。

「...すばる、」
『...もっかい、ヤる?』
「.......ヤる」

ワイン、飲みたかった。でもそれはもういい。クリスマスじゃなくたって、ワインくらい飲める。
今、すばるから目一杯の愛を感じたから、今日はザ・クリスマスから、とことん愛される日に軌道修正。


End.