Actually, very very...


「ねぇねぇ、このモデルさん、可愛くない?」

昨日、ちょっとだけこの人に似ていると言われた。テンションが上がった。だって、可愛いと思っていたから。嬉しくないはずがない。

『...そうかぁ?俺はこっちのがええなぁ』
「.......あぁ、そう.....」

撃沈。
つくづく思う。信ちゃんてなんで私と付き合ってるんだろう。
信ちゃんがテレビや雑誌で美人だと褒める人は明らかに私とは違ったタイプの人で。

ナチュラルメイクなんて自信なさすぎて結局濃くしちゃうし、髪は巻いたって直毛だからすぐまっすぐになっちゃうし、自分でも我儘だと思うし実際それで喧嘩にもなるし。
大人だからだろうか。私達があと5歳くらい若かったら、すぐに破局している気がする。...あ、違った。信ちゃんが5歳若かったら、とっくに終わってるはず。私なんて、いくつになったってずっと考え方が子供だから。

「信ちゃんて、おっぱいおっきい人好きだよね」
『そうかぁ?お前デカくないやんけ』
「し、失礼な...!」

ソファの隣に座ってコーヒーを啜りながら豪快に笑う信ちゃんを横目で睨む。すると更に面白がっているみたいに、少し膨らんだ私の頬をぺち、と軽く叩く。
だから私もお返しに信ちゃんの頬を叩くと、思いの外大きな音がした。

『痛っ!おっ前強過ぎるやろ!』
「...信ちゃんが悪いもん」
『...ほんっまにお前は』

舌打ちと共に呆れたような視線を向けられてちょっとへこんだ。というか拗ねた。
そんな顔しないでよ。私だって、本当は「強かったね、ごめんね」って言おうとしたのに。...声には出て来なかったけど...。

ソファから立ち上がって寝室に入った。
拗ねたからじゃない。ただ、謝る準備をするため。せっかく泊まりに来たのに、このまま喧嘩して夜が終わるんじゃあ悲しすぎる。

信ちゃんの少し大きめのベッドの縁に座って溜息をつく。素直になりたいのに、上手くいかない。頭に浮かんだ言葉は、いつも喉でつっかえて出て来ない。

気付いたら開いたままのドアから信ちゃんが顔を覗かせていたから驚いた。

『ほんっまに面倒臭い奴やなぁ』

その言葉は聞き飽きた。もう何十回も繰り返してきてる。それなのに、もう3年も一緒に居るのが信じられないくらいだ。
私の前に仁王立ちした信ちゃんを見上げて目を逸らした。ほら、早く言っちゃえばいいのに。ごめんね、って、早く。

『拗ねたんか』
「......違う」
『#name1#、意外と胸デカいんちゃう?』
「...思ってないくせに」
『思ってへんけど』
「...............。」

信ちゃんがまた、ふっと笑って『めんどくさ』と言った。けれど、さっきとは違った『しょうがないなぁ』みたいな顔をしているから少し安心した。

『いつもいつも何をそんなに人と比べてんねや』
「...そんなつもりないけど」
『よう言うやん。なんで私と付き合うてんの、て』

図星だ。今考えていたことまで伝わっていたのかと思ったら妙に恥ずかしい。
私の隣に腰を下ろしてそのまま仰向けにベッドに倒れ込んだ信ちゃんが、大きな欠伸をしながら言った。

『ほんまなんでやろなぁ』

それ言っちゃう?なんでかわかんないけど付き合ってるって、良いのか悪いのか、なんかよくわかんない。

『#name1#はどうなん?なんで俺なん?』
「.................。」
『ほらな?すぐ出て来うへんやろ?』
「...出てくるもん」
『何や、言うてみ』
「......安心感、?」
『ぼやーっとしとるなぁ』

恥ずかしいけどちょっと勇気出して言ったのに。...だって本当のことだ。ちゃんと考えたらたくさん出てくるけれど、かっこいいとか、そういう事を聞かれているわけではないと思うし。

『考える必要あるか?無いやろ。3年も居るんやし、そこ何となく汲み取ったらええんちゃうの』
「........うん」
『しょうもないこと考えんなや』
「........はい、」
『...そこそこ、幸せやで』
「................、」
『ま、お前はどうか知らんけどぉ?』

ベッドの上でくるりと回転して俯せになって、信ちゃんが『あーあ、めんどくさ』と何度目かわからないセリフを吐きながら息をついた。

そこそこ、なんて言われたって、嬉しいものは嬉しい。そこそこでも、私と居て幸せだと思ってくれるなら、この上なく嬉しい。
幸せに決まってる。私だって、幸せ。

振り返って俯せの信ちゃんを見て、思わず笑った。
そこそこ、って言ったくせに。
しょうもないとか、めんどくさ、とか言ってたくせに。
私もベッドに倒れ込んで信ちゃんのその真っ赤に染まった耳に唇を寄せた。

「...信ちゃん、照れてる?」

顔を上げた信ちゃんが顰めた顔も、またほんのり染まっている。
信ちゃんの手が伸びて来て頬に触れたからドキリとしたけれど、さっきみたいに私の頬を叩いた。

『アホか。何言うとんねん』
「...ふふっ」
『ほんっま鬱陶しいわぁ、』

本当に鬱陶しいらしい顔をした信ちゃんの頬を、笑いながら今度は軽く、ぴたっと叩いた。

「...さっきは、ごめんね」


End.