※attention※
某ドラマのパロディ、呪い呪われ関係なしの世界です。
このお話は3次元の方々のあくまでそっくりさんを取り扱っております。実際の団体や個人名とは一切関係ありません。完全に管理人の自己満足話ですので、読む方は注意して下さい。また、誹謗中傷は受け付けておりません。
某ドラマの機捜隊員や法医解剖医など出ます。

なんでもOK〜という方はスクロールして下さい。









「あっついなあ、溶けそう」
「残暑厳しすぎ」
「あ、ここですかね」

 暦では秋を迎えたというのにまだまだ太陽がじんわりと照りつける中、スマートフォンから顔を上げた九部が目的地はここだと声を上げる。
 規制線が張られた手前では、近隣住民が何事だと声を潜めながら中の様子を伺っていた。



「なんだっけ、今回の」
「分からない、電話とったの中堂さん」
「あの人電話とることあるの?」
「たまーーーにね、たまーに」
「2人とも酷い言い方…」

 ここに居ないからって、と続けた九部に東海林はだって〜と笑った。確かにそうも言いたくなる。だって、珍しく電話をとったと思ったら「検死の依頼だ、行ってこい」の一言で私達を追い出したのだ。

「まあ、自分はこのあと解剖入ってるからって顎でつかうことないよねえ」
「それよ〜!今日はミコト休みだから人手足りないのに」

 ていうかお昼ご飯途中だったのに、とぶすくれた東海林の本音はそこだろうなと思いながら、黄色く張られた規制線をくぐった。


「あ、ミョウジさん達!こっちこっち」
「毛利さん、お疲れ様です」
「はいどうも。すみませんねえ、急に呼び出して」
「本当ですよ、私達お昼ご飯途中だったんですけど」

 出迎えてくれた西武蔵野署の刑事である毛利の謝罪に、食い気味で文句を並べた東海林に苦笑いしながらまあまあ、となだめる。


「そういえば前もありましたよね、お昼抜きで検死に行ったこと」

 東海林の文句に珍しく乗ってきた九部に内心驚きながら、ああ、あったなそんな事、と思い返す。あの時は私ではなくミコトが行っていたが。

「すみませんねえ、こっちも仕事なんですぅー」
「ごめんなさい色々言って、はい仕事仕事」

 こら、と東海林の肩を軽く叩くが、ごめんごめんと笑う彼女はいつもの如く、本気で反省しているとは思えなかった。



「で、ご遺体は」
「ああ、はい。初動捜査の方々が入ってて、私達も先程来たばかりなんです。全部で3体。今朝、隣人から通報があったそうです。」

 ほう、と相槌を打ちながら手袋をつけた。つまりはまだ何も分かっていないという事か。

「あ、向島さんもいる」
「お疲れ様です!あ、今日はミョウジ先生なんですね」
「どうも。ミコトは今日お休みなので」
「いいよねぇ、休み。ていうか長期休暇欲しい。どっか行きたいよねミコトとナマエと3人でさあ。あ、九部っちも行く?」
「え?いや、僕は…」
「夢のまた夢の話だねそれ」


 殺人現場には似つかわしくない会話をしながら足を進める。毛利さんと向島さんも慣れているのか特段気にした様子もないが、九部くんだけが未だにおろおろして、落ち着かない様子だった。



「はい、こっちです」


 毛利さんに案内された先の部屋に着くと、まず目に飛び込んできたのは図体のでかい2人組だった。1人は透けるような白髪にサングラスをかけた男、もう1人は長髪をハーフアップにして耳には大きなピアスを付けた男だ。どちらも共通して言えるのは2人ともとても刑事には見えないくらいガラが悪いという事である。そんな男達が所属しているのは警視庁の刑事部・第4機動捜査隊という所で、働き方改革によって新たに創設されたとかなんとか。主に初動捜査や重点密行、人手が足りない所轄のお手伝い等、便利屋とも呼ばれるらしい。
 前回彼らに初めて会ったのも初動捜査をしていた所だった。どうやら今回もそうらしい。しかしこうも現場でかち合ってしまうとは。彼らの姿を目にした瞬間ーーー主にサングラス男だけだがーーー私は頭を抱えた。どうしよう、これ以上前に進みたくない。

 すらりと日本人離れした身長と容姿をした白髪サングラス男・五条悟という刑事は先日現場で顔を合わせたばかりだというのに、何故か私にしつこく連絡をしてくる少々厄介な男である。ちなみに私の連絡先は一緒に検死に来ていた、私が所属する不自然死究明研究所・通称UDIラボの臨床検査技師である東海林夕子から漏れた。まさか身内からバレるとは思わなんだ。プライバシーの侵害も甚だしい。そして殺人現場で刑事と連絡先を交換する東海林は流石、異性間交流会(合コン)に命をかけるだけある。少しの機会も逃さない姿勢は逆に尊敬した。恐ろしい女である。

「あ!ナマエさんじゃーん」

 床には血溜まりが出来るほど出血しているご遺体があるというのに、白髪にサングラスをかけた黒ずくめの男は明るい声で私に手を挙げた。

「…」

 何でいるんだ、とばかりに思い切り顔を顰めた私を気に留める事なく、五条は後ろに揺れる尻尾が見えるくらい嬉しそうに駆け寄ってきた。犬か。

「いやあ、さっき毛利サンがUDIに検死頼むって言ってたから、ナマエさん来るかなって楽しみに待ってたんですよ」
「不謹慎な事言わないでもらえますか」

 殺人現場で人を楽しみに待つなよ、警察官だろうが。しっし、と手袋を着けた手で払う真似をすると、五条の隣にいた長髪の男、夏油さんがくすりと笑った。「嫌われてるな、悟」ええそうですその通りです。そう言葉にしようとしてやめた。嫌いになる程この人を知らない事に気づく。…眼が、怖いんだな。あの嘘みたいに綺麗な眼で見られると、底知れない恐怖に支配されそうになる。捕われたら最後、抜け出す事が出来ないような感覚。それが、すごく怖い。


「そんな事ないよ、ナマエさんこんなんだけど返事は必ずしてくれるもん」
「で、状況は」
「無視されてるぞ悟」
「え、てかなんで傑に聞くの?目の前にも状況把握してる警察官いますよ」
「ゲトーさんの方が話が通じるからですよ」

 ぴしゃりと言い放った私に「もー、そんな嫌わないでよ」と口を尖らせた五条は、全く拗ねる様子もなく、寧ろ楽しそうにしていた。だから、尻尾を振るな。

「…べつに、嫌いになるほど五条さんの事知らないです。ただ誰だって出会い頭に連絡先を聞かれて、断った筈なのにその日の夜電話がかかってきて、それから毎日メッセージが送られてくれば警戒するでしょうが。通報レベルですよ」

 心底嫌そうに言い切った私に記録用のカメラを取り出していた九部君がはは、と乾いた笑いを溢すのが見えた。隣の東海林は相変わらず楽しそうにニヤニヤしている。そもそもあんたが私の連絡先を教えたからこんな事になってるんだからな。
 


△▼△


 検死を終えた後、ラボで解剖する事になったご遺体は不自然な点が見つかった。解剖に時間がかかってしまった為、結果とその説明は次の日に行うことになり、初動捜査を継続していた五条と夏油もラボへと足を運んでいた。





「では、以上になります。本日はご足労いただきありがとうございました」

 結果と不自然な点の解釈、考察を説明し終えた。犯人探しは私達の仕事ではないので、解剖医としての役目はこれで区切りをつけることになる。
 挨拶で締めて席を立ち、出口まで見送ろうとした私に随分高い位置から声がかかった。

「ナマエさん、今日ご飯行きません?」

 にこりと笑みを浮かべ、首を傾げながら食事のお誘いをしてくる五条は、両手をポケット突っ込んだままだ。それ、人を誘う態度じゃ無いだろう。

「結構です」
「えーやだ」
「え、…は?」

 …えーやだ、ってなに?予想外の言葉に思わず見上げてしまう。眼を丸くしてぱちぱちと凝視した私を見ながら、歯を見せて悪戯っ子のように笑った五条は「絶対ご飯行く。ぜーーったい」と言い切った。なんという我儘、図体の割に中身は子供みたいだ。

「嫌です、絶対いや」
「えーなんで?」
「逆になんでご飯行かなきゃいけないんですか」
「僕が行きたいから」
「王様かよ」

 いいじゃん行こうよ行こうよ、そう言って私の後をついて回る五条に、所長だけでなく夏油さんも薄く笑っていた。いや、助けてよ。
 「行こうよ」「遠慮します」「奢りますって」「そういう問題じゃない」「どういう問題?」「目立つから嫌」「えーナマエさんも結構目立つよ?」「どういう意味ですか」「美人ってこと」「お帰りください」「もー照れないでよ」「だから、」一向に下がる気配のない五条に苛立ちが募る。もうなんで、こんなにしつこいの。正直このレベルの顔があったらそこら辺の女子はホイホイくっ付いてくるだろう、なぜ私にこんな纏わりつく必要があるんだ。


「傑からおいしーいお酒飲めるお店教えてもらったんだよ、ナマエさんお酒好きなんでしょ?」

 もういっそ、一発食らわせようか、物騒な事が過った私の思考と握りしめた拳が止まる。…美味しい、お酒。


「…」
「…?」
「…美味しい、お酒?」
「うん、おいし〜いお酒」
「…」
「…?」
「…1回だけですよ」


 結局"美味しいお酒"に落城した私に「マジ?」と驚いた後、五条はとても大人の男とは思えないほど嬉しそうに笑った。怖いと感じていたサングラスの下の目元を緩ませて笑う彼に「まあいいか」と感じてしまう。あれ、何か私、絆されてないか。

Oyasumi
eyes