※attention※
某ドラマのパロディ、呪い呪われ関係なしの世界です。
このお話は3次元の方々のあくまでそっくりさんを取り扱っております。実際の団体や個人名とは一切関係ありません。完全に管理人の自己満足話ですので、読む方は注意して下さい。また、誹謗中傷は受け付けておりません。
某ドラマの機捜隊員や法医解剖医など出ます。

なんでもOK〜という方はスクロールして下さい。














 言い出したのは五条だった。西武蔵野署管内で起きた殺人事件の捜査にあたった4機捜は、ナマエが所属するUDIラボが行った解剖結果により犯人逮捕に繋げる事が出来た。行き詰まった捜査だった為、ナマエ達が導き出した犯人への手掛かりは彼らにとって希望の光となり、それはそれは感謝していた。

 ラボのお陰で解決したと言っても過言ではない事件が無事に終わった時、「お礼を兼ねて彼らを誘って飲みに行こう」と提案したのは4機捜の隊員である五条だった。勿論ナマエと飲めるからという下心付きだ。
 その誘いに二つ返事で了承したラボメンバーは、4機捜の隊員たちととある居酒屋に来ている。二つのチームが集まるとそれなりの人数になる為、陣馬を始めとする警察関係者が通い詰める小さな居酒屋は貸切りとなっていた。普段事件現場でしか顔を合わせない奇妙な面子は、珍しい飲み会をそれぞれに楽しんでいる。ただし、ある一人の男を除いて。

「何度も言うけど僕が発案者だよね?」
「何度も言うけど、そう思ってるなら隣に行けばいいだろう」
「無理に行って嫌われたくねーの!」
「今更何言ってるんだよ…というか何度も二人で食事行ってるんだろう?いいじゃないか今日くらい」
「毎日だって隣で食事を摂りたいんですぅー!」
「うっざ」

 納得がいかない。こんな調子で結局傑の隣で殆どの時間を過ごし、自分の一声で開催されたこの会も終わろうとしている。うちのボスとUDIのショチョーさんが何やら立ち上がって締めの挨拶っぽい事をしていた。

 少し離れたところにいるナマエさんは入れ替わり立ち替わり、隣に来る人が代わっていた。僕以外には愛想の良い人らしいので、彼女の事を好ましく思う人は少なくないのだろう。悔しいけど。本当はそんな奴ら蹴散らしたいくらいだけど。



 さてそろそろ、と立ち上がったナマエさんや隣にいた中堂(何故かコイツがナマエさんの隣にいる事が多かった。腹立つ)に続いて自分も腰を上げ、名前を呼んだ。


「送っていきます」

 僕の方を見たナマエさんは、アルコールが入っているからなのか眠たくてぼんやりしているからなのか、僕の顔を数秒眺めた。「え?」と言う声が漏れて聞こえる。
 勿論、下心はあった。というかこの会を設定した時から下心しかない。ナマエさんを送っていくならば家を知れるし、2人きりで話せるし。ただ、絶対断るだろうという確信を持っていたので半分冗談のつもりで提案をした。

「結構です」

 案の定、断ったナマエさんの耳と頬は少し赤くなっているだけで、何故あんなに飲んでも平気な顔をしていられるんだろうかと下戸の自分には理解できない。そういえば、初めてご飯に誘った時も彼女は酒を飲んでいたが、最後まで平気な顔していたな。あの時も家まで送ると言ったのに、さっさと帰ってしまったのを思い出す。


「ナマエ送ってもらったほうがいいよ」


 潔く諦めようと思った所で、予想外の人物から声が掛かった。三澄さんだった。彼女の言葉に思い切り顔を顰めたナマエさんは「…なんで」「いいよ別に」と言いながら口を尖らせた。その表情はなんていうか、すごく、可愛かった。

「だってナマエ、酔っぱらって乗り物に乗ると直ぐ寝ちゃうじゃん。この前だって終点まで乗り過ごしたって、」

 …ちょっと待て、なんだそのナマエさんらしくない情報は。嘘だあ、という顔でナマエさんの方を見ると、ぐっと何かを堪えるように押し黙っていた。え、本当なの?

「それは何というか…心配だね」
「ほら、夏油さんも言ってるし。お願いした方がいいよナマエ」

 隣にいた傑も眉を顰めて三澄さんに賛同し始めたので、それはもう渋々といった様子でナマエさんが「…オネガイシマス」と頭を下げた。相変わらず口は面白くなさそうに尖っていて、この人こんなに可愛い表情も出来るんだな、と失礼な事が頭を過った。







「どうぞ」
「…お邪魔します」

 近くの駐車場に停めてあった車に乗り込む。「住所は?」「…」「…いや、だって」仕方ないだろう、自宅以外どこに送っていけばいいんだよ。そう文句を言うと絞り出すように住所を告げてくれたので、ナビに打ち込んでいく。

「シートベルト締めてね」
「…はーい」

 ゆっくり走り出した車の窓に軽く頭をつけて過ぎていく街の明かりを眺めていたナマエさんは、三澄さんが言っていた通り、すぐにでも寝てしまいそうだった。

「ナマエさん」
「……はい」
「ナマエさんは彼氏いないの?」
「、…はい?」

 突然の質問に少し眠気が飛んだ様子の彼女が聞き返して来たので、もう一度同じことを繰り返した。

「いません」

 いくらかはっきりした声で否定した事に少しだけ安堵する。

「なんで?」
「なんで?って…色々と面倒じゃないですか。相手に合わせたり、気を遣ったり。そういうのもう、どうでもいいです」

 普段よりも辿々しい喋り口の彼女が目を擦りながら話す内容はなんとも言えなかった。こんな様子で、僕はどうやったら彼女を振り向かせられるんだろうか。

「僕が立候補しちゃだめ?」
「なに言ってるんですか」
「えー、結構本気なんだけどな」
「…私はもう、特別な人を作る気はないです」

 そう言ったきり黙ってしまったナマエさんは、静かな車内でとうとう目を閉じ、眠りについたようだった。僕は一瞬ナマエさんを見てから、すぐに夜の街へと視線を戻した。時間帯が遅いせいもあるのだろう、車の外の景色は静かだった。



△▼△


「ナマエさん、起きて」
「…ん、……うん」


 目的地を告げるナビの声に、ハザードランプを点けて停車した。隣で眠るナマエさんに声を掛けたが、唸る様な音を出しただけで、起きる様子は無かった。

「…どうするかな」

 このまま運ぶ?…いやいや、流石にそれは如何なものか。何より部屋番号も知らないし、鍵を漁るわけにもいかないし。かと言って目的地を変えて自分の家に運ぶなんて下劣極まりない。そんな事したら確実に嫌われる。ゴミ屑を見る目で見られる自信がある。もう一生口を聞いてもらえない気がする。

「いやほんと、どうするか……寝顔可愛いな…そうじゃなくて、」

 うあああ、と頭を抱えたくなる気持ちをなんとか抑え、深呼吸をした。正直このまま本能に従ってお持ち帰りしたい。まずこの邪念を祓う為に頭を横に振る。嫌われたくない。

 はあ、と何度目か分からない深い溜息を肺が空っぽになるまで吐き出した後、ハンドルに乗せた腕に顔を付けて、ナマエさんをじっと見つめた。普段よりも柔らかな表情で眠る彼女を見ていると、このまま朝が来たとしても、もう何でもいいやという気持ちになってきた。先程の賑やかな居酒屋とは打って変わって、穏やかな車内の心地良さに、いつの間にか瞼を下ろしていた。







「あ、の…五条さん、起きて下さい…」

 身体を遠慮がちに揺らされて、ふっと意識が浮上した。目を開けると、申し訳なさそうに眉を下げるナマエさんの顔がまず視界に入る。外はまだ真っ暗で、何時間も寝ていた訳では無さそうだった。

「……あ、やべ。僕まで寝ちゃったじゃん」

 がりがりと頭を掻いてあくびを一つした。ナマエさんは幾分酔いが覚めた様で、顔の赤みも引けている。

「すみません送ってもらったのに…」
「いやあ、部屋もどこか分からなかったし、勝手に鍵とるわけにもいかないし」

 頭を下げる彼女に「あ、今から部屋番号教えてもらってもいいよ?送ってあげます」と言ってみたが「結構です」と頭を下げたまま断られてしまった。抜かりない。


「じゃあさ」

 申し訳なさそうにするナマエさんにひとつ、思い浮かんだ提案をする。


「明日、デートして下さい」

 予想外だったのか、勢いよく頭を上げたナマエさんは、一瞬驚いた様な表情を見せたがすぐに顔を歪めた。なんでそんな嫌そうな顔するかな。きっとデートという単語に引っ掛かっているんだろう。いつも誘う時は「食事に行こう」としか言わないから。

「…」
「いいじゃん。お詫びも兼ねて」
「そっちから提案する事じゃないですよね」

 日本語としてどうなんだ、と眉を顰めたあと、結局ナマエさんが折れて「何時にどこに行けばいいですか」とぶっきらぼうに視線を外される。僕は内心ガッツポーズをしながら、ナマエさんの質問に答えた。






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