ミニ小説・その他メモ
▽2018/08/13(Mon)
ラブレターの男
あの男が再び現れます。
エマと雪之原のお話。
了承頂いた方のみ追記からどうぞ↓
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「あー、終わったっすー!」
青空の下。
大きく背伸びをした日晴は、次に肩をグリグリと豪快に回した。
「お疲れ…さま、ふたり…とも」
『お疲れっす!エマさんも退屈だったっしょ?』
「ぜん、ぜん」
『それじゃ、帰ろっかぁ』
今日は珍しく日晴と雪之原の付き添いとして外の仕事に出かけていたエマ。
またweather lifeに新しいCM撮影の話が舞い込んだらしく、今日はその内容についての会議だった。
CMの内容は大手衣類専門店のテレビ宣伝。
イメージキャラクターに彼らが抜擢されたらしく、その店の服を着て路上ライブをするとの内容。
きっと皆普段とは違う雰囲気で、凄く格好良いんだろうな。
私なんかが付いて行っていいのかとも初めは思ったけれど、「社会勉強のため」との理由で理事長さんがわざわざ呼んでくれたのだ。
昼すぎには打ち合わせが終了し、今は3人でweather lifeの事務所へ帰る途中。
夏の熱い太陽の日差しが照りつけて、右側を歩いている日晴君は首からタオルをかけ汗を拭いながら歩く。
私が持ってきた日傘をさすとちゃっかりユキ君が隣に入ってきて、日晴君がぷんすか怒り出したり…
そうして歩き始めて10分くらいが経った時だった。
「うぅっ」
日晴が急にブルブルッと体を震わせる。
「ごめん、雪之原さん。俺トイレ」
「えぇ、またぁ?出る時もしたじゃぁん。コーラ飲みすぎだよぉ」
「しょうがないじゃないっすか!生理現象なんすから!ちょっと待ってて!」
突然股を押さえて走り出した日晴に、何も聞こえないエマはぽかんとする。
「…どう…したの?」
『トイレだって』
「そっか…」
『暑いから僕たちは日陰で休憩してよ〜』
雪之原から木陰に誘導され、さしていた日傘を閉じた。
直射日光が当たらないだけで随分涼しく感じる。
隣の彼は私の日傘に入っていたせいか、日晴君と違い汗はほとんどかいてないみたいだけど。
「…………。」
改めて近くで見ると、ユキ君の腕って真っ白だな。
珍しく今日は二の腕が出る程の半袖だから、それがより一層わかりやすい。
あ…でも手は、私なんかより全然大きい。
ピアノをしてる人は手が大きいって言うし。
血管が浮き上がって骨がしっかりしてて、なんだか顔に似合わず男の人の手って感じ。
『なぁに?僕の手を見つめて』
「…へっ?」
突然目の前に出された携帯の画面に、思わず顔を上げる。
こっそり見てるつもりだったのに気づかれていた。
は…恥ずかしい。
「べ…つに…」
『手大きいとか思ってたの?』
「……ッ…」
「あはは、その顔はどうやら図星だねぇ」
汗ひとつかかずに笑い、今度は手の平を広げて私に見せてきた。
やっぱり指が長くて大きい。
普段室内にいる事が多いから日に焼けておらず、真っ白で純粋に綺麗な手。
「ピアノやってるから自然と大きくなるんだよぉ。ほら、エマっちの手なんて僕の第二関節までしかないねぇ」
誘導されて重ねられると、ますます大きさの違いが目に見えてわかった。
顔だけ見るとあんまり変わらない気がするのに意外。
鍵盤で何度も押し潰しているからか、指先が丸い所は可愛い。
人間の力って凄いな。
「………ッ…」
まるで女子同士のように手の平合わせをして暇を潰している最中だった。
ふと何かに気づいた雪之原は斜め右へ視線を動かす。
数十メートル離れた先、男がひとりこちら側へ向かって歩いてきていた。
「ユキ…君…指なが…いね」
「………。」
「……?…どうし…たの?」
見覚えがある、あの顔。
一重まぶたの目。通った鼻筋。短めの黒髪。
どこにでもいるごく普通の男。
雪之原はそっぽを向いてしまって、少しも笑わず反応がない。
別の場所を瞳だけで注意深く見つめているようだ。
なんか…ユキ君ぽくない顔。
何事かとエマも彼の視線の先を振り返って確認しようとした瞬間だった。
「…ね…ぇ……ッ」
ガシッ!
え?
突然重ねていた手を握られたかと思うと、彼はエマを引っ張って歩き出した。
「…!?…な…に?どうしっ…」
「いーから付いてきて」
普段からは想像出来ないような強い力で引っ張られる。
しかもかなり早足で、付いて行くのが大変なスピード。
日晴君もまだ戻ってきていないのに、一体どうしちゃったんだろうっ…
ザッ
ザッ
ザッ
軽く視線だけで後ろを確認する。
間違いない。
―君にとって、僕は救世主なんだ――……
エマに何度も手紙を送りつけ、執拗に迫ってきたあの男。
まさかこんな所で鉢合わせするとは思っておらず、咄嗟にその場から逃げるように歩き出してしまった。
幸い向こうは携帯の操作に夢中でまだこちらの存在に気づいていないが、エマがいる事がバレてしまうのも時間の問題。
外はただだだっ広くて身を隠せるような場所もないし、不自然に彼女だけを体で隠すと逆に怪しまれる。
このまま無造作に歩き続け、奴のルートから外れるしかない。
ザッ
ザッ
ザッ
「ユキっ…くっ…」
申し訳ないが、今は文字で返事を返す暇などない。
彼女の手を引いてひたすら歩き続けるも、運悪く一本道が続くが…
「…ッ」
視線の先にひとつの小さな雑貨屋が目に入った。
助かった…。
「エマっち、来て」
「あっ」
引き連れてふたりでその雑貨屋に入る。
お洒落な小物や生活用品が並ぶお店。
「いらっしゃいませ」と店員の声が聞こえる中、商品に目を通す事なく進み続け、念のため店の入り組んだ場所まで入った。
ここは外国の珍しい雑貨が置いてあるコーナー。
とりあえずここまで来れば安心か。
「はぁ…もぉ大丈夫かな…」
「ねぇ…どうしっ…」
「あはっ。ごめんねぇ、ビックリさせて」
汗ばんだ手をようやく離すも、エマの表情は固まったまま。
とりあえず何か適当に誤魔化そうと、雪之原はポケットから携帯を取り出した。
「いらっしゃいませ」
「っ…!?」
操作中、耳に入ってきたのは同じ店員の同じ台詞。
その瞬間、雪之原は珍しくビクッと反応して顔を歪ませた。
「ウッソ、マジでぇ…」
こっそり棚の陰から確認すると、なんとその男もこの店の中へ入ってきたのだ。
ただ様子を見る限り、純粋に商品を買いに来たらしく自分達の存在に気づいているわけではなさそう。
こんな店に男ひとりで入って来ないでよ、なんて考えている雪之原はエマの方向を見る。
「………?」
曇った表情で見つめられ、少しだけ首を傾げている。
彼女もあの男が近づいているなんて気がついていない。
カタッ
カタッ
入り組んだ場所に入った事が仇となり、先が行き止まりになっている。
徐々に近づく足音に、無意識に眉間にシワを寄せた。
カタッ
カタッ
「ユキ…くん…?」
足音はすぐ目の前まで迫る。
どうする…?
右へ左へ視線を流し、ゴクリと息を飲むと喉仏が動いた。
カタッ
カタッ
カタッ
マズい…
このままでは………っ…
一瞬の沈黙。
雪之原はこのピンチの瞬間にも、頬に汗を流して怪しく口の端をつり上げた。
「エマっち。すぐ終わらせるから、ちょっと我慢してよ」
「…?」
ズボンッ!!
「……んぁ?」
男が店の奥まで入ると、何故かそこには白髪の男と
馬の被り物を被った女の子がいた。
突然現れた謎の光景に、当然ながら怪しい目で見られている…。
「ムゴゴッ…!」
「ああはは、ユキちゃん可愛いよぉ」
パーティグッズで遊び、ケラケラと笑う白髪の彼氏。
そんな怪しいふたり組を横目で見ながら、男は目当てのタオルケットを手に取った。
「最近のカップルは変な遊びが好きなんだな…」
聞こえるボリュームでボソッと独り言を呟き、レジへ向かう。
無事に会計を済ませ…
「ありがとうございました。またお越しください」
どうやら我々の存在に気づかないまま、男は店から出て行ってくれたようだ。
「ふぅ…間に合ったぁ…」
これでホッと一安心。
壁にかかっていた商品を無理やり被せたなんて、我ながらよくやったと思う。
リアルな馬の被り物を外してあげると、息が苦しかったのか真っ赤になったエマの顔が出てきた。
「プハッ…!ハァ…ハァ…なんっ、なの…!?」
彼女にとってみればわからない事だらけだ。
突然無理に手を引っ張られて見知らぬ店に連れて来られたかと思うと、
挙げ句こんな重くてヘンテコな被り物を急に装着されたのだから。
『あはは、ごめんねぇ。なんか面白そうだったからぁ』
「人をオモチャにしないでッ!」
珍しく怒っているエマに緊張感なく笑う雪之原。
真意は一切話してくれず、結局最後まで「面白そうだったから」の一点張り。
何?変なの…
相変わらず何考えてるのか、さっぱり意味不明。
彼は昔から人をからかって遊ぶのが趣味みたいだし。
突発的にこういうイタズラをしたくなるのかな…
目の前のエマは怒りながらも、とりあえず説明に納得してくれたようだ。
「もう…ユキ君といると…疲れる…」
『よく言われるよ〜』
「…反省…してる?」
『うん(^O^)/』
なんか……こういう所は七音君に似てる…。(むしろ彼よりタチが悪い)
心の中でボソッと呟いてやった。
『さて。じゃせっかく来たんだし、この店見て回る〜?』
「それ、より…日…ばり君…は?」
「…………え?」
ヒバリ…?
ん?
…なに?
そんな奴いたっ…
…………あ。
・
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日晴「あ、もしもし!?た、大変なんすよ!!
会議からの帰り道、ちょっと目を離した隙に、雪之原さんがエマさんを連れてどこかへ消えてしまったんす!!」
雨宮『なぁーにぃー!!?煤x
美空『やっちまったなぁ!!!!!煤x
fin
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