……………

ボビーの父親らしい謎の老人から室内に入れてもらえた入れ替わったふたり。

和室に案内され、並べられた座布団に座る。

出されたお茶を一口飲んで、早速本題に入る事にした。


「すみません。ご旅行の予定があったのに。
俺達、息子さん…ボビーさんのお友達なのですが、ちょっと困った事がありまして」


ナイジェルの姿をしたリッキーが話を切り出すが、父親は何故か「フガフガ」としか言わない。

通じてるのか?と不安になるが、とりあえず話を続けてみる。


「あの、俺達精神が入れ替わっちゃったみたいで…
ば、馬鹿にしているわけではないですよ!本当なんです!それで元に戻らなくて困ってるんです。

ボビーさんから『お父さんなら戻す薬を持っている』と伺ってここへ来たのですが…なんとか出来ませんか?」


こんなにも丁寧口調で、しかも長い台詞を口にするナイジェルの姿はまず見られない。

しかし肝心の父親は何故か「ヒィヒィ」ともがいている素振りばかりだ。

やはり地球の言葉が通じないのではないか?

困ったリッキーは、自分の姿をしたナイジェルの耳に手を当てヒソヒソと話しかける。


「ねぇ…ちゃんと伝わってるんですか?」

「知らね。本人に訊いてみれば良いじゃねぇか」

「訊いてもわからないから、訊いてるんじゃないですか!何かさっきから、どこかの民族用語を話してるみたいだし」

「じゃ、通じてねんだろ?」

「そんな軽く言わないでくださいよ!どうするんですか!会話が出来なきゃ、ここへ来た意味がないじゃないですか!
大体、ボビー20代でしょ?何で父親が言葉も通じない程の年寄りなんで…」


―ガフッ!

リッキーは父親の持っていた杖で一発強くしばかれた。


「なんだ、通じてんじゃん」










父親は座っている若者ふたりに、ひとつの瓶を持ってきた。

蓋の先端にボビーの彫刻が施されている、いかにも怪しい瓶。

しかも中には更に怪しい緑色の液体が入っている。


「何ですか?これは?」

頭を抑えながら訊いた彼に父親は答えるが。


「…フガフガ…ふぃ…ひょぉ」

「わかんな…いや、申し訳ございません。
日頃の努力不足、不摂生がたたり、こんなわたくしどもではお言葉の意味が理解出来ません。全てわたくしの責任です」


土下座をしながら謝っている。

見兼ねたナイジェルが、リッキーの声でだるそうに言った。


「『これが入れ替わった精神を元に戻す秘薬じゃ』…だって」

「貴方わかるんですか!?それなら初めから翻訳してくださいよ!」


ボビーの父親は、またモゴモゴ意味のわからないボビー語を話し始めながら蓋を外す。

そしてそれをコップ4分の1程注いだ。


「へぃぃ…ふぃ…」

「『これを飲め』って」


よし、とふたりは注がれたコップを手に取る。

顔を近づけても無臭だが、明らかに着色料が入っているようだ。

体に良いとは言えない液体の色。

しかし今の俺達は体の心配なんかしている場合じゃない。

最後にお互いの顔を睨み合った。


「いいか?これで戻らなかったら、もう一生戻れないと思え」

「そんなの死んでもお断りです」



いっせーのっ…



一気にその謎の液体を飲み干す。


その瞬間。


「なっ!?」

「んっ!?」


父親は突然持っていた杖を床に置き、そして…


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