……………


チク…タク…

広い応接室に鳴る秒針の音。


ヒル家とジャックマン家の見合い開始から既に30分が経過していた。

場の空気は徐々に和んできてはいるが、口を開いているのは8割がウチの父親と、このロビンという男性の母親だ。

肝心の若いふたりはまだあまり話が出来ていない。


「私の息子はですね、とても勉強熱心で教員免許も持っていますのよ!
大学も有名な某大学をトップクラスの成績で卒業しておりますし、海外留学を繰り返しているので言葉は5ヶ国語も話せますの。
海外にいても息子がいるから全く困る事もなくて、それにこの容姿でしょう。もう大企業からのアピールが…」


そう鼻高々に話しているのは髪をアップにまとめ、宝石の付いた指輪やイヤリングをちらつかせるロビンの母親。

飾りつけは豪華だが、体型は丸っこく中年太りをしていて身長もあまり高くない。

いかにもドラマ等に出てきそうな、典型的な金持ちおばさんだ。


「へぇ…それは立派な息子さんですねぇ」

その話にサラの父親は感心しながら腕を組んだ。


「いえ、これも母のおかげなんです。私の母はエリート学校の教師をしておりまして。色々と学業面などでお手伝いして頂いていたんです」

息子は相変わらずの気品ある表情。


「ま、エリート学校と言っても小学校なんですがね(笑)今時の小学生って凄いんですのよ〜」


世に言うお受験学校というやつか。

ったく…嫌な時代ね。

母親がペラペラと自慢話を繰り広げる中、サラはなんとなく目を外へ逸らした。


「ちなみに私の夫は大規模な会社の社長をしております。ご存知ですか?ジャックマイクロシステム!」

「ああ、もちろん知っていますとも」


ジャックマイクロシステムというと、昔からある大手のコンピュータ会社だ。

全米だけにとどまらず世界に事業の幅を広げている、誰もが知っているブランド大企業。

そこの会社の社長だとすると、超絶なセレブである事は間違いない。

「邸宅はヒューストン近海にありますの。自慢じゃないですけど、このお家に負けない程大きな建物なんですのよ。お手間であれば車を手配致しますので、是非機会があれば遊びにいらしてくださいね」


母親の話を聞くだけで、このジャックマン一族がどれだけ血統書付きかがわかる。


これがヒル家の掟。

セレブの血を守る為に、結婚するなら必ず金持ち。

企業同士で手を組み、政略結婚。

その子どもを産ませてセレブブランドを後世に繋げていく。

先祖代々、この掟は守られてきたのだ。

自分の母親も、話は聞いた事がないがきっとこうやって…

考えただけで胸が強く締め付けられる。



―ヒル家の血を汚す事は絶対に許されない―…



ふと彼女の頭に浮かんだのは、長年付き合ってきた5人の仲間達の顔だった。


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