湾だ


inzm 湾田
俺の彼女こと内田真白は恥ずかしがり屋で有名だ。まあ普通に距離を置いて喋る分にはそこらの女子となんら変わりはないが(落ちた消しゴムを拾ってもらったときに触れる手だーとかプリントを配るときに振り向く顔の近さだーとか)、そんなんで一々顔真っ赤にして俯いてしまうくらいの重症で。
だから英語の授業なんかで隣の人と一緒になになにしましょう、なんてときには一行に話が進まない。見る人によっては臆病だとか異常だ根性なしだだとかいう奴もいる。だがしかしあいつはモテる。一定の決まった距離感を保って関わればただのかわいい奴になりやがるからだ。ただ冗談でも好きだなんだとそういう色恋沙汰を匂わせる発言をしたときにゃまた茹でダコみたいに赤面しちまうってわけ。そんなあいつが何で俺とカレシカノジョな関係になってんのか、それには別に特別な理由もない。まあ、そのアレだ、俺が勢い余って好きだと言ったらあいつが私も好きだよと言ってくれたからだ。いや間違ってもこんなにさらりと言われた訳じゃないぜ、え、えっと……私も、その…湾田くんのこと、す…き、だよっ、まぁこんな感じだな、やべ、思い出しただけでにやけてきた。
まあそんな訳で彼女さんとも昨日で3ヶ月……だったんだがな。あろうことにチューはおろか手をつなぐことすらしていない。中学生で、もう3ヶ月だってのに。俺らより後に付き合い出した喜峰カップルは今日も所構わずいちゃいちゃしてやがる。くそ、羨ましいぜ。俺らの行動パターンはこうだ。あいつはマネージャーでもないのに朝っぱらからサッカー部の朝練に付き合ってくれる。そんで昼はたまーに一緒に弁当食ったり。あ、ちなみにあいつと俺は別のクラスな。帰りはまた練習終わるまで待っててくれて、わかれ道で手ェ振っておしまい。いや、一緒にいてくれるだけでそれはもう本気で嬉しいんだけどよ、人間満たされると欲が出てくるモンじゃねぇか、手の一つや二つ握ってみたいと思ってもおかしくないだろ。もしかしたら俺がヘタレなだけ……か?前に拒絶されてから少なからずショックを受けた俺はそれ以来何も行動に起こしていない。悶々考えてあーーー、意味わかんねぇ。







今日は久しぶりにサッカー部の練習がないみたいで、湾田くんと一緒に帰る約束をした。
授業も終わってHR後、湾田くんがいる教室に行くとまだ終わっていなかったみたいでドアが閉め切られていた。ドアに取り付けた小さな窓から、少し前に覚えた席の辺りを見てみると、いた。横を向いて後頭部に手を当て照れたように笑っている。誰と話しているのかなと首をひねって覗いてみたら、湾田くんと話していたのは女の子で。ううんそんなの別にいいんだけどその子は湾田くんが前に言っていた告白されたんだよ!の子、で。そんなのも別にいいんだけど何だか、何だかやるせなくなってしまった。ドアから離れて廊下側の窓から空を見た。それと同時に今朝海図くんたちから言われた言葉も思い出してしまった。『内田先輩、いいんですか?このままで。先輩はよかったとしても湾田さんは物足りないって思ってるんじゃないですか?俺ら一年でも付き合ってたらくどくどくどくど』そんなことを言われて不安になっていた矢先に告白されたんだよ!の女の子のボディタッチを目撃。

「お、待っててくれてたのか苗字。ワリぃな」
突然声をかけられたと思ったらそれは湾田くんで。いろいろ考えているうちにもうHRは終わっていたみたいだ。
「ううん、いいよ。」
「そっか、おっしじゃあ、帰るか!」



おかしい。
何がおかしいって内田の反応がおかしい。
俺が何を言っても「うん」やら「そうだね」のそっけない相槌しか返ってこない。( 見た目 )もずっと俯いて表情が暗い。まさに落ち込んでますよという感じだ。

「……なぁ、何かあったのかよ?」

とりあえず当たり障りのない質問を投げかけてみる。すると内田は少し顔をあげて俺の目をみつめた。

「うーん。うーーーん、その、ね。そのー、うん。」

何だか煮え切らない返事が返ってきた。表情は( 依然? )暗いままだ。
「どうした?」
「うーん、その、ね」
「おう」
「や、やっぱり湾田くんには……言えない。ごめんなさい」

なんだそりゃ。ナントカナントカ

「言えねえ、って。どうしてもか?」
お前が落ち込んだまんまだと俺も( )し……と続ける( )

「その、言ってもいいんだけどね。湾田くんに、嫌われないかな……って」

ナントカ( 文思いつかん )

「嫌う!?俺が?( 笑い声 )そんなのねぇから、ほれ、言ってみ」

俺がそう言った後少し間が開いて内田の顔が伏せられた。そのまた少し間が開いて、俺の右手に何やら暖かい感触が。

「!?」

な、なんてこった。内田が、あの内田が俺の手を、指先辺りを遠慮がちに握っていた。なんだこの展開、と急にうるさくなった心臓を抑えて( )

「湾田くんは、私といてると、物足りない?」

「……へ」

「その、私がこんな性格だから、」



やばいもうわからーーーん!


back HOME
ALICE+