出水


言葉をください

出水はいつも、私以外の女の子とばかりいる。好きだって、付き合ってくれって、言ってくれたのは出水の方からなのに、出水はいつも、私の隣にはいない。
ふとしたとき、遊ばれてたんだって気付いた。私と話すときよりも、他の、かわいい女の子達と話しているほうが、出水は楽しそう。実際そうなんだろう。
出水とは、手を繋いだことがない、デートをしたこともない、それどころか、隣に並んで歩いたことすらなかった。
それなのに、それなのに出水は私が少し男の子と会話をしただけで、怒る。私に直接文句を言ってくるわけではなく、強い視線で私のことを見つめてくる。いや、睨んでいるのかもしれない。だけどその後、教室ですれ違ったりしても何も言ってこない、目も合わせようとしない。本当に、何が言いたいのかわからない。
クラスメイトから見れば、どう見ても私と出水は付き合っているようには見えないだろう。現に、出水はもう付き合っているつもりはないのかもしれない。それでも、告白のときの真剣な瞳と真っ赤な顔が、私をまだ好きでいてくれてるんじゃないかと、錯覚させる。でも。

「好き、です」

ちらりと見えた後ろ姿。その前には、あの時の出水のような表情の、小さくて、かわいらしい女の子がいた。
出水の返事を聞きたくなかった。答えは分かっていたから。来た道を戻って、そのとき後ろから聞こえたのは、二人が談笑する声。自惚れるのも、程々にしようと決めた。



彼氏ができた。毎日話しかけてくれて、笑ってくれて、手を繋いでくれる、一緒に歩いてくれる、そんな人。
私はこの人を好きになるんだ、そう思った。



「苗字」
「……なに」
「あの男、誰だよ」
「私の、彼氏」




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