サソリ



※変換なし




元来、私は妖怪 生霊 スタンドそんな非科学的なものは信じていなかった。見たら画面からナニカが這い出てくるビデオ?一つ目手乗りサイズのおとうさん?そんなものただの噂に違いない。そう思っていましたさっきまでは。


ここは我らがS級犯罪者暁のアジト。草木も眠る丑三つ時。もう冬至間近だというのに蒸し暑い夜。夢の中で微睡んでいた私はいつの間にかウェイクアップしていたらしく、水でも飲みに行こうかと廊下に出たところ。
見てしまいました、床を這いずり回る明らかに人ではないナニカを。


「……っ」

こういう時は叫び声でもあげるモンだと思っていたのに全く声は出ず、口を開閉しているだけで人語が話せない。
こんなの電気を付けてよく見ると暁の誰かなんじゃないの。飲み過ぎで酔い潰れた誰かさんとかじゃないの。

どうにか気持ちを落ち着けようといろいろなことを考えるが、目の前の産物を目にしてしまえばそんなもの塵に等しい。
それになんだか、こっちに近付いている気さえする。


いや、こっちに来ている確実に。床と接吻していたはずのご尊顔が微かに見えて。なんというか、革命的。


「…っギャアアアアア!」

年甲斐もなく悲鳴をあげながら、近くにあった誰かのお部屋に飛び込んだ。
さっきのことは忘れようそうしよう追いかけてくるはずないな私なんか全然おいしくないよ近くに魚類がいるはずなのでその方を煮るなり焼くなりしてください。

直立不動だった体を休め、辺りを見渡した。
ここは誰の部屋だろう。空き部屋だったら嫌だなー。少し立ち歩いてみると足元になにか硬いものが散らばっていた。これは、傀儡の…部品?サソリさんの部屋、かな。どうしよう勝手にお邪魔しちゃった。今居るのかな暗くて見えないや。

少し安堵した私がその場に座りこんだそのとき、目の前の扉がキィっと開けごま。


「いっ…ひぇ…!?」

もうだめだもうおしまい。最期を悟り、ぎゅっと目を瞑ると瞼の上から光を感じた。


「ククッ。お前、ビビりすぎなんだよ。」

楽しそうに口元を歪ませながら、部屋に入ってくるサソリさん( 本体 )

急に明るくなった視界と目の前の人物に開いた口が塞がらない。てっきりあのナニカかと。まあ当人からしたら自室に帰ってきただけなんだけど。

「さっサソ…? サソリさん…?」

「おう、どうした。」

「どうしたじゃないですよサソリさん見てないんですか?廊下のアレ…。」

もしかして私だけに見えて私の前だけに現れたナニカであって…いやいやないないない。


「ああ。あれ…俺が動かしてた傀儡だぜ。よく出来てんだろ。」

しれっと言い退けるサソリさん。
な、なんだと…!


「え…じゃあサソリさんも廊下に?」

「ああ。お前の驚いたひでぇ顔、しっかり見せてもらった。」

「そんな…いたなら声かけてくださいよ!走馬灯見ちゃったじゃないですか!」

コレ、事実です。参考にならない過去ばっかり流れてきましたけどね。

あんなに驚くなんてな…などとぼやくサソリさんをキッと睨むが、効果は全くなく。


「オイ、なんだ。もしかして立てねェのか。」

依然として口を歪ませているその人は、馬鹿にしたような口ぶりでそう言った。

実際のところ本当に腰が抜けてしまったらしい、下半身が動かなくて。

「いやぁ、べべっ別に怖かったからーとかじゃないんですよ?ちょっと誰かの悪戯で…」

そう言っている間に、サソリさんは私の肩と膝裏に手をいれて持ち上げ…あれ、これって俗にいうお姫さま抱っこでは…。
私がこんなことしてもらっていいんですか!と手足をばたばたしていると、

「暴れんな。」

一蹴。横抱きというものは思っていたよりも恥ずかしく、( 顔が近い!)急いで顔を覆い隠した。熱い。



サソリさんはそのまま廊下をスタスタと歩いて行き、部屋に着くとベッドの上に体を降ろしてくれた。


「あ、りがとうございます…」

暗くてどんな表情をしているのかわからないのだが 雰囲気がさっきと全然ちがうサソリさんに少し怖気づいてしまう。情けない声だけが声帯から絞り出された。

いったいどうしたのか。何も返事をしてくれない。不安に思った私がもう一度声をかけようと上を向いたとき。


「…悪かったな、怖がらせて。」

それだけ言い残し、サソリさんは部屋から出て行ってしまった。

















"サソリさん"率。













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