サソリ





鬱蒼とした草木に囲まれた夜の森。
遠くの方でなにかが鳴いているような音がきこえる。それ以外は私が発するガサガサという音しかなく、今ここに一人だということを実感する。



つまりなにがいいたいのかというと、この広い森のなかで迷子になったのです。しかも古典的な罠に掛かって右足の自由がきかない。



ちくしょう、私が方向音痴なことわかっててパシりやがって、サソリさんの人でなし。

サソリさんに『薬草きれたから摘んでこい』と言われたのは大分前だ。体内時計が正しければもう30分は立っている。

「こーんな暗くて怖くてあぶなーい森の中をか弱い女の一人で歩かせるなんて男が廃れるぞー!人間顔じゃないんだぞー!大事なのは中身だぞー!」

できるかぎり大声で文句を言ってみたけど、誰かに聞こえるはずもなく私の声だけが薄暗い森の中で反響する。


あー、おなかすいたな!なんで今日晩飯抜いたんだろう!誰かさんのちょっと太ったかなんて言葉真に受けなきゃよかった!
それに時間の関係もあってか眠気が襲ってくる。




もしかしたら朝までこのままかもしれない、もういっそここで眠りについてしまおうか。
寝よう、とその場で横になったとき、右足に電気が走ったような痛みを感じた。

「い"っっづあ!」

足元を見れば罠の刃物部分が足に食い込んでいた。
いたい。足が引っかかっているから抜くことも出来ない。
暗闇に一人なこと、物寂しいことも相俟って涙が滲んできた。
こんなんで泣いちゃいけない、そう思っているのとは反対にどんどん涙は零れてくる。
誰が、誰か来てほしいなぁ…
そんな思いも虚しく、段々意識が朦朧としてきて、目の前が真っ暗になった。










ぱっと目を覚ますと、白い天井がみえた。
あれ、ここは私の部屋じゃないの。
森に居たはずなんだけど…。
起きあがり動こうとすると右足がズキっと痛んだ。

「い"っ…」

余りの痛さに少し声をあげてしまった。そのとき部屋のドアが音を立てて開いた。

「あれ…サソリ、さん」

びっくりしたような顔をして入ってきたのはサソリさんだった。その人はベッドの近くにある椅子に腰掛けて言った。

「…てめぇが、あんな罠も外せねェ奴だとは思わなかったな。」


第一声がそれですか。半分…いや十分の一くらいはサソリさんのせいで罠にかかったんですよ!

「だって…。取れなかったんですよ。」

「…そうか」

な、なんだこの気まずい空気は。誰か、森とは違う意味で誰か来てほしい。誰かこの状況から救ってください…!


「足、見せてみろ。」

沈黙の中唐突にサソリさんが言った。そういえば足どうなってるんだろう。確認するのも合わせて、足を布団から出してみた。

「うわ。」

一応包帯は巻かれていて応急処置はされていたけれど、かなり深いキズなのか血が滲み出ていた。
この分じゃ、マットにも付いてるかも…!
急いで布団を捲るとやっぱり。うっすらと赤黒いシミが出来ていた。

「えっ、と…」

「」
















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