ミラクル☆フライト
“明日は一緒に外に出かけましょうか”
「アスラン、出かけましょう。……アスラン?」
呼びかけても応答しないアスラン。
自室のクローゼットを開け手には紙きれ。それを呆然と見つめている。
「アスラン?」
「……行きましょう、ラクス」
ラクスの手を握ると急ぐように家を出た。
何もいわず手をひく彼に何か言おうと思うが真剣なその顔についていきたいと思い、手を引かれるまま歩いた。
そして街中。
ある店のショーウィンドウの前で佇んだ。
するとショーウィンドウに紙が張り付けられていて、それをまた呆然と見つめるアスラン。
「何考えてるんだ、あいつは」
そう言いながら張り付けられている紙切れを剥がした。
「どうかなさいましたの?」
「いえ、その」
言いにくそうにしながら決意したようにラクスの両肩をがしっと掴むと突然引き寄せた。
「あ……アスラン?」
「息苦しくなったら突き放して下さい」
「え、む……んっ」
一言だけ言うと強引とも見えるぐらいに口づけをする。
初めは貪るような口づけ。しばらくすると舌を絡ませようと口内に侵入してくる。
「ふっ、ぁ……アス」
息苦しくなったら突き放せと言われても突き放せるわけがない。
心地良いこの口づけをずっと交わし続けていたいのだから。
気が遠くなるような、でも長い時間を感じさせない不思議な感覚。
アスランは一向にラクスから離れようとはしない。
“あのカップルすごいわねー”
“きっと誓い合って燃えあがってシテるのよ”
“こんな所でどうかと思うけどね”
“でも素敵だと思うけど”
そんな会話が街のざわめきから聞こえてくる。
それでもアスランは離れようとはしない。
「んっ!……んん」
ラクスが何かに気づきアスランに教えようとするがアスランは気付かず。
“アスラーン、アブナーイ”
「うっ……ハ、ハロ」
何が危ないのかはさておき、家に置いてきたはずのピンクハロが勢いよくアスランの腹部に向かってきた。
突然の痛みにさすがにラクスから離れ、その場に膝をついた。
ラクスは気付いた事を教えようとショーウィンドウを指さしながら言った。
「アスラン、紙切れがありますわ」
「え、さっきはコレ一枚しかなかったのに」
アスランが持っている紙が気になり取ろうとするが、取る寸前でアスランは紙をポケットに入れてしまった。
「な、何でもないんですよ?」
何でもなくないと言っているような笑顔を見せられると余計気になってしまう。
ショーウィンドウの紙切れを取ろうと手を伸ばすがすでにアスランに取られていた。
そして何でもなくない笑顔を見せたまま再びラクスの手を握り歩きだした。
突然の接吻の理由も聞かされず、街のざわめきを残したまま。
ウェディングドレスが飾られているショーウィンドウの前から……。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「……」
「……」
この寒空の下、海岸にやってきた二人。
アスランが黙ったままなので何となく口が開けず、二人して無言のまま海を眺めていた。
「アスラ」
「好きだぁーーー!!」
握られた手が更に強く握られたのでアスランに視線を向けたと同時に彼は叫んだ。
海に向かって……水平線に向かって青春の如く。
「アスラン?」
この真っ昼間にそんな事を叫べば人が見ないわけがない。
案の定先ほどの街中のようにざわつく。
「笑顔も涙も唇も全部全部大好きだーー!!」
それでもアスランは水平線に向かって叫び続ける。顔を真っ赤にして。
「今手を握りあわせている彼女が愛しくて愛しくてたまらないんだぁーー!!」
半ば開き直ったかのように叫ぶアスラン。人の視線が痛いほどわかる。でもラクスはアスランを止めようとはしない。
「私も大好きですわぁ〜!!」
アスランと同じように水平線に向かって叫ぶラクス。
アスランが少し驚きながら話しかけようとした瞬間、さっきまでは静かにしていたピンクハロがぴょんぴょん跳ね出した。
“ラブラブーラブラブー”
そんな事を言いながら二人から少し離れるとその場でひたすら跳ねた。
「アスラン、また紙切れが……」
ピンクハロが飛び跳ねていると砂埃がたち、砂に埋まっていた紙切れが見えた。
今度こそその紙切れを取ろうとするがまたもやアスランに先を越されてしまった。
俺に教えなければ取れるのに……可愛いなぁ
そんな事を思いながら紙切れを見るとまたもや呆然とした。
「アスラン?……きゃっ」
「行きましょう」
「このままで、ですか?」
ラクスの問いかけにアスランは答えずそのまま歩き出した。
ラクスを抱き上げ……いわゆるお姫様だっこをしたまま。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「結局スタート地点に戻ってきてるじゃないか」
独り言のような呟きを聞くと確かにアスラン宅に着いていた。
それまでずっとあのまま歩いて来ていた。
もちろん人の視線やざわめきはあった。それでもラクスは嬉しかった。
決してひややかな視線でもなく否定的なざわめきでもないのが祝福されているようで嬉しかった。
「すみません、ラクス」
庭まで来るとアスランはラクスに謝罪した。
「何故謝るのですか?」
「クリスマスプレゼントが……なくなってしまったんです」
今までそれを探していたのかとその言葉を聞いてわかった。
普段なら人前であんなことはしないアスランがキスをしたり叫んだり抱き上げたり。
何か理由があってやっていたんだと思うと少し寂しい気持ちがあったが振り切るように首を横に振った。
「とても楽しい1日でしたわ。最高のクリスマスプレゼントです」
「ラクス……」
それでもアスランの顔は晴れない。
「はいはい、勝手に僕を悪役にしないでよね」
そんな声が聞こえたかと思うと庭の隅から人影が見えた。
「キラ!?お前今までどこに」
「ずっと二人を見てたよ。ねぇカガリ?」
「の、覗き見みたいで嫌だったけどな」
二つの人影が寄ってくると何故か笑顔のキラと顔を赤らめているカガリだった。
「しっかし本気でやるかね〜。あんなコト」
ラクスをゆっくりとその場におろすとアスランはキラに近づいた。
そしてすぱんっといい音が響き渡る。
「お前がこの紙に書かれた通りにすれば辿りつけると書いたからだろう!」
「いてて……でも本当に嫌ならやらないもんね?実はやりたかったんでしょ?」
キラの言葉に図星をつかれたような表情を見せるとそれ以上言葉が出てこなかった。
「そういうことだ、ラクス」
「?」
カガリの言葉に不思議そうに首を傾げた。そんな表情に微笑んで返しながらアスランを指さす。
「こいつはきっかけさえあればいつでもラクスを押し倒しかねないって事」
「そうそう」
その言葉にキラは頷くと本日二発目のハリセンをくらった。
「で?」
「何が?」
「何がじゃないだろう!俺のラクスへのクリスマスプレゼントはどこなんだっ!」
わざとらしくあぁと思い出したかのようにするとどこからともなく少し大きめの箱を二つ出してきた。
「二つ?」
「あ……」
後ろから声が聞こえ振り向くと顔を赤らめたラクスが口を押さえていた。
「お前は俺のだけじゃなくラクスのも取ってたのか?」
「あはは、まぁまぁ」
笑いながらキラはアスランとラクスに一つずつ箱を渡した。
「じゃあ僕たちはクリスマスパーティーの用意するから」
カガリの腕を引きながらキラはそう言うとアスラン宅に入って行った。
陽はすっかり沈みもう夜。
「あっという間でしたけど……楽しかったですね」
「はい」
お互い少しずつ近づき箱を差し出した。
「「メリークリスマス」」
すると空から雪が降ってきた。それに気がつくと二人は空を見上げた。
「雪……丁度その服と合うかもしれません」
ラクスに手渡した箱を見ながらいうアスラン。
「今、着てきますわ。アスランも箱の中身を見てみて下さい」
ラクスは笑顔で言うと着替えに家の中へと入った。
「何だろう?」
ガサガサとラッピングを開け箱を開くと白いマフラーが入っていた。
何となく市販とは言い難い……それでもそのマフラーを見ると胸が暖かくなる感じがした。
さっそくつけてみるととても暖かい。
「アスランっ!!」
声が聞こえた方向に目を向けると雪と同じように舞い降りた白い天使ともいえる少女がいた。
「とても似合っています」
「アスランが選んで下さったもので似合わない事なんてきっとありませんわ」
ラクスがそう言うと本当にそう思えてきてアスランは笑った。
「マフラー……暖かいですか?」
「とても暖かいです」
そう言うと近づいてきたラクスの肩を引き寄せた。
「……アスラン」
「こうすればもっと暖かいです」
マフラーをラクスにも巻き、二人で一つのマフラーを使った。
くっついているせいなのか余計暖かく感じる。身も心も。
「アスランとならいつでも飛べるのですね」
「え?」
ラクスの意味深な言葉に聞き返すがラクスは微笑むだけだった。
それでも何となくその言葉の意味がわかったような気がして言葉を口にした。
「そうですね、きっと……」
−初めて二人で過ごすクリスマス
どこに行こうか
なにを話そうか
あっという間な1日だけど
きっと楽しい1日
きっかけは難しいけど
きっと楽しいよね
キスを交わしたり
愛の言葉を言ったり
触れ合い続けたり
いつでもそうしていたいんだ
二人でならいつでも飛べるから
その先がわからなくても
きっと幸せ
色んなセカイへ飛べるから
聖夜の夜は甘い甘い想いを抱いて飛んでみようか
過去に泣いたのは
記憶だけに納めて
神様さえ
知らないような
わくわくする
甘い夢を見よう
うきうきする
旅に行きましょう
いつでも君と一緒に
ミラクル☆フライト−
H17.1.21
H17.3.10修正
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