鋭利な笑みで殺して
死んでる
誰が?
死んでないよね
だって……
君はこんなにも
僕を受け止めている
「お腹、空いたでしょ?」
キラは自室に戻りドアを閉めると暗い部屋に向かって問い掛けた。
「欲しいって言えばあげるよ?」
持っていたトレーをテーブルに置くとベッドの上に乗った。
「それじゃあ何も言えないよね」
膝をひきずり枕元へと近付いて行く。
「ねぇ、ミーア?」
「ふっ……うぅ」
暗がりの中、わずかに動く人影。そこにはシーツ一枚を体に巻き付けたミーアがいた。
口を布で覆われ何も話せず、両手両足も布で縛られ仰向けに寝かせられていた。
「みんな君が死んだと思ってる。でも君は死んでなかったね……」
ミーアの長い髪を手にとり弄ぶ。ミーアはその様子を体を震わせながら見つめているしかできない。
「寒いの?シーツ一枚だもんね。傷も治りきってないし……まだ痛い?」
「……んん」
腹部を指先でなぞるとミーアは痛がる表情を見せた。その表情を見てもキラは手を退かさない。
「君は何で死ななかったんだろうね?」
「んっ!」
キラの指先は腹部から下にずれていき、秘部を布の上から刺激した。
「……楽になれたかもしれないのに」
「んっ!?」
突然の痛みと圧迫感に両目を見開き体をのけ反らせる。
両足を縛っていたものが解かれ開かれたと認識したのも束の間、キラがミーアの中に入ってきた。
「っ……渇いていても君はこんなにも僕を受け入れてくれる」
「ふ……んっん」
全く慣らされていない侵入さえ、何度も交わした行為のせいか次第に痛みは違うものへと変化していった。
「いやらしいね……でもそんな君が」
「うっ、ん」
ゆっくりと突かれ焦らされているのだとわかる。
わかってはいても体は快感が欲しくて動いてしまう。
その様を見るとキラは笑んだ。
「そうだよ、もっと欲しがらなきゃ。でないと抜いちゃうよ?」
腰を引いて自身の先だけをミーアの中に残す。
ミーアの顔は恥ずかしさからなのか赤くなり涙を流していた。
「泣かないで……その涙は悦びながら流して」
「ん……」
キラの顔が近付いたと思うと唇に柔らかい感触がした。
布越しの口付け。自然と舌を突き出していた。直に触れてはいなくてもキラの舌の感触が確かにあった。
感触が離れると布が湿って唇に張り付いた。
「欲しいなら抱き締めて?」
ミーアの両手を縛っていた布を取った。投げ出された両手はゆっくりと宙にあがりキラの背中に回された。
「んっ!!」
両足を大きく開かれ待ち望んだものが奥深くへときた。
苦しくて眩暈がする。気を失おうにもキラが与える快感はあまりにも適確で、けれど決定的なものはくれなくて気を失えず身体は熱くなるばかり。
「もっと締め付けて……もっと欲しがって」
耳元で息混じりに言われそれすら快感に変わる。
躾られたようにこの人がする事全てに反応してしまう。
「んん……っ!?」
キラの優しい笑みが見えるとミーアは身体を反らせ痙攣させぐったりとした。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「キラ」
「何?」
AA内通路でアスランに呼び止められ、キラは立ち止まり振り返った。
「最近部屋にいる事が多いだろ?だから……」
「だから?」
「何かあったのかと思ってな」
言いにくそうにしていたかと思うとそんな事だった。
キラはふっと笑みを向ける。
「別に何もないよ。アスラン気にしすぎなんじゃない?」
「そうか?でも今の彼女を一人にするのは……」
“彼女”という言葉に一瞬笑みが消えた。
「ラクスは大丈夫だよ。心配ならアスランが見てればいい」
「あっ、キラ!」
アスランが呼び止める声を無視しキラは自分な部屋へと行ってしまった。
「はぁ……」
自室に戻ると明かりをつけた。ベッドの上に座るミーアがこちらを見ていた。
「君を縛るものはないのに逃げないんだね」
ベッドに近付き腰かけるとミーアの口を塞ぎ続けている布に触れた。
「両手が自由ならはずせばいいのに」
ミーアは何の反応も示さずキラを見つめていた。
キラは布から離すとミーアの視線から自分の視線をはずした。
「……もうすぐで議長と直接会う事になる。議長を止めても何も変わらない。でも変わらない明日を迎えるのは違う気がするんだ」
俯きかげんな視界には自分の両手が小刻みに震えているのが映った。
「変わらない明日は全て今日になってしまう。決まった中で何も変わらずにいつかは朽ちていく」
変わらない中にいれば辛い事もない。でも同時に喜びもなくなる。
相反するものがあるからこそわかるものはたくさんある。
だから守りたいと思う。
幸せなのかもしれない。
辛い過去など忘れて生きていく。
でも幸せすらあたりまえになったら幸せといえるのだろうか。
自分が幸せと言えるまでの過程がなくなったらそれは幸せなんだろうか。
「ミーア?」
震えていた手にミーアの手が重ねられた。その手首には痛々しく縛られた痕が残っていた。
顔をあげれば哀れむようなでも優しい笑みがあるに違いない。彼女がそうだった。
顔をあげて彼女と同じ顔の彼女がそうだったら、どうしてしまうだろう。
「ミー、ア?」
不安そうな瞳でキラを見つめながらキラの手をぎゅっと握ってきた。
「怖いの?」
そう聞くとミーアは瞳を閉じて首を横に振り俯いた。
“あたし……生きてるの?”
目を開けると真っ暗な部屋に体が横たわっていた。
腹部がずきずきと痛い。
“だれ?”
暗い空間に光が差し込む。ドアが開き閉まる音が聞こえ再び真っ暗な部屋となる。
“君は……はじめましてかな?そんな容姿だと僕は初めてなんて思わないけど”
どこかで聞いたようなでも聞いた事がないような声。
ベッドが軋むと冷たい手が頬に触れた。
“なに、いやっ”
服を脱がされると腹部が白い包帯で巻かれていた。うっすらと赤い染みが見える。
“そんな事言っていいの?”
“いたっ!”
赤い染みができているところを名前も知らない少年が指で押した。
鋭い痛みが走り涙ぐむ。
“君にアスランとラクスの間に入れるの?君は二人に会ってどうしたかったの?”
“あや、まりたかったの……”
怖くて体が震える。声音は酷く穏やかなのに怖い。冷たい視線があたしをいたぶるよう。
“何を?君は悪い事したの?”
“わからない……”
どこを見ていていいのかわからなくて視線があちこちにいってしまう。
“わからないのに謝る事は悪い事なんだよ”
“え……んっ”
聞き返す前に唇を塞がれて息苦しくなる。始めは抵抗しても抵抗しても無駄と目を閉じた。
“ん!いやっ”
“諦めたら終わりなんだよ”
他人に触られた事がない場所を触れられる。背筋がぞくぞくする。
“それ以上したらっ……大きな声出すから”
“出してどうなるの?そこから辛いのは君だよ”
穏やかな笑みなのに発する言葉は棘のよう。
二人にあたしはいらないなんて事わかってる。
でも会いたかったの。ずっと会いたかったから……。
“はっ……いた、いたぁい”
“力抜かなきゃ駄目だよ”
そう言われても体は強張るばかり。夢見てた、こうしてだれかと繋がる事を。
でも痛い。誰かも知らない人があたしの中にいる。
“やぁっ!お願……抜い、て”
懇願しても笑むだけで腰を引いたと思うと押し入られる。
“僕を……たら……あげる”
“あっ、んぁ”
小さな声だったからか、行為に涙して聞く耳がなくなってしまったのか彼の言葉は聞こえなかった。
それから幾度となく彼はあたしの中に入ってくる。
名前も知らない。一方的に呼ばれて、あたしは口を覆われて聞けないの。
あなたはだれ?って。
名前を呼びたいの。
悲しい目であたしを見るあなたを。
「ミーア、ごめんね」
キラは苦笑混じりに言うとミーアの口を覆い続けていた布をはずした。
「……どうして謝るの?あなたは悪い事をしたの?」
俯いたまま、ミーアは問い掛けた。
何も答えないでいるキラに腹が立ち顔をあげる。
「ならあたしを殺せばよかったのよ!手当てなんてしてほしくなか、った……」
段々と勢いがなくなり涙混じりになるとミーアは再び俯いた。
「……そうだね。生かした所で君が辛いだけなんだ。じゃあ」
カチャという音が聞こえ顔をあげると銃口が自分に向いていた。
「ここで死ぬ?」
笑みを浮かべ死を口にする。怖い。死ぬのは怖い。
「あなたは誰を見てるの?それだけ教えて」
「誰も見てないよ。見えないんだ」
また悲しそうな目。笑みを浮かべていても眉間にわずかに皺が寄る。何かを堪えるように。
きっと答えてはくれない。彼に答えはないのだから。
「っ!」
「殺して……」
ミーアはキラに抱き付くと両目をぎゅっと瞑り、消え入りそうな声で言った。
頭部に冷たい銃口が突き付けられる。
恐怖はない。でも体は震えキラの服を握りしめていた。
「……っ!」
部屋に銃声が鳴り響いた。同時にガラスが砕ける音がした。
「キラ!どうしたんだ!?」
「……何でもないよ、アスラン」
「何かありましたの?」
ドアの前で慌ててきたアスランとその様子を見て近寄ってきたラクスの声がした。
「本当に何でもないから」
「本当だな?」
「うん」
そう答えると二つの足音は遠ざかっていった。
「ど……して?」
「鏡を割りたかったからかな……」
キラの視線の先にあるそれほど大きくない鏡は割られていた。中心に穴がありそこからひび割れている。
「次に戻る時、それが君との別れ」
呟くと手にしていた銃を床に放り投げミーアを抱き締めた。
「どうして……?どうして次が別れなの?」
「始めから出会ってなかったんだよ」
ミーアを引き離すとベッドから立ち上がりドアへと向かう。
「あなたはだれ?」
背中に投げかけるとキラは少し振り返り笑んだ。
今までの鋭い何かを携えた笑みではない笑み。
何も言わずドアが開き閉じる。
ミーアはしばらくドアを見つめているとベッドに伏せた。
あたしは死んだの
あの時に
死んでしまったの
なのに生きてた
でもあなたに殺された
鋭利な笑みであたしをずたずたにする
あなた
あたしは何度もあなたに殺される
何度あなたを受け止めても
救いなんてないの
痛みだけ残るあたしの中は
本当に痛みだけなの?
麻痺した痛みは
いつしか甘いものに変わって
それもあたしを殺していく
鋭利な笑みで殺して
それがあなたなら
あたしは受け止める
穏やかに笑んで
そしてあたしは
あなたに生かされる
H17.10.7
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