意地悪な暖かさ


 


「ステラってさ〜」

通路を歩いてる途中、今まで黙って歩いていたアウルがいきなりステラに話しかけた。

「何……?」

その後の言葉を言わずに自分をじっと見ている相手を見つめた。

「私が……何?」

ステラはアウルの顔を見つめるが視線は合わなかった。
彼はステラの上半身を凝視しているのだ。

「暑がり?」

そして突拍子もなくそんな事を聞いてくる。

「別に……暑がり、じゃない。どちらかというと……寒がり?」

答えてるはずなのに最後には疑問符がついてしまう。
アウルはその答えに納得がいかないような顔でステラの上半身から視線をはずそうとはしなかった。

「私何かした?」

アウルの不服そうな表情に不安を感じ問いかけるが、問いかけた相手は何も言わない。

「じゃあ何で二の腕だしたりそんなに短いスカートなわけ?寒いならもっと着込むかすればいいじゃん」

正規の軍服を改造して着ているステラ。確かに二の腕は露出され短いスカートは寒そうに見える。

「これはネオがくれたから」

自分が着ている服を見つめながら、何かを思い出しているのか嬉しそうに笑顔を浮かべた。

「あっそ、そりゃあよかったね」

ステラから顔を背けながらぶっきらぼうに言ってのけた。

「なに怒ってるの?」
「別に怒ってないし!」

その言い方は明らかに怒っている。こういう時は近寄らない方がいい、そう思うとステラはアウルに背を向け一人で歩き出した。

「っ!?何……?」

ばさっと音がしたと思うと自分とは違う匂いを感じた。見ると体に青い物がかけられていた。

「これ……」
「嫌がらせ!ソレでその軍服隠してやる」

ステラの前に立ちはだかり、ステラにかかっている物を指さしながら言った。
ノースリーブ姿のアウル。先ほどまで着ていた上着は今はステラの体にかけられていた。

「アウルの方がさむそう」
「寒くなんか……っ」

くしゃみをしそうになったのか顔を手で覆い下を俯いた。我慢しようとしたようだが小さく“くしゅっ”という音が通路に響く。

「ステラ!?何やってんだよ、お前」
「こうすればあたたかい。あたたかく…ない?」

アウルの上着を羽織ったままステラはアウルに抱きついた。
そしてアウルを見上げ暖かいか聞いてくる。

「お前……」
「なに?」

驚きながらもステラの腰に手を回し抱きしめた。そして小さな声でステラに耳打ちした。

「もっとあったかくなる事教えてやるよ」

アウルの言葉の意味がよくわからずジッと見つめてしまう。
その純粋な視線にアウルは少し顔を赤らめてしまった。

「アウルあついの?」
「別にっ」

顔を背けながらも腰に回した腕はほどかない。

「だって顔赤い」

両手をおずおずとアウルの顔に近づけていき指先でそっと触れた。

「な、何だよ」
「アウル、何だか可愛い」

その言葉に背けていた顔は真っ直ぐとステラに向いた。

「ステラの方が……」
「なに?」

目は合っているのに声があまりにも小さくてはっきりとは聞けず聞き返した。

「アウル?」

聞こえなかった言葉を言われないまま突然抱きしめられる。
しばらく何も言わないアウルに急に不安になる。何か怒らせてしまう事を言ってしまったのだろうか。

「アウル?」

もう一度呼ぶと抱きしめられた腕に力が入った。
痛みはないのに何故だか苦しくなる。

「ステラの身体が冷たいから暖めてるんだよ」
「でも……」

アウルの軍服を羽織っている今寒さは感じない。元からさほど寒くはなかったのだからなおさらだ。

「あったかい」

そう言いながらアウルの背中に腕を回した。
その瞬間アウルの体がびくっと驚き緊張したかのように力が入るが、すぐに力は抜けたようだった。

「これが“あったかくなること”?」

ステラの問いかけに間があき答えが返ってきた。

「あったかくなるどころかアツくなれるコト」



H16.12.12
加筆H17.1.6




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