瞳を開けた眠り姫に口づけを


 


「誰もいないのか」

食堂に足を運ぶと人の気配が全くなくがらんとしていた。
誰もいないのかと足を踏み入れると端の方に誰かいるのが視界に入った。
テーブルに突っ伏している少女。右手にはフォークをしっかりと握りしめている。

「前から変な奴だと思ってたけど……」

金色の髪に、二の腕を露出させた軍服。顔を見なくてもすぐにステラだとわかった。
しかしなぜフォークを握りしめたまま寝息をたてているのか。

「おい、起きろよ」

突っ伏している上半身を肩を掴み上げるがステラは起きない。スースーと寝息を立て続けたまま。

「食事するか寝るかどっちかにしろっての」

テーブルには食べかけの食事。ステラの口がもごもごと動いたのを見るなりステラがここで何をしていたのかがわかった。

「そりゃあ食堂だから食事はするだろうけど普通食べてる最中に寝る奴がいるかよ」

現にここにいるわけで、アウルはため息をつくとステラの寝顔を見つめた。

「食べながら寝るし。フォークは絶対に離さないし。起きないし。やっぱお前、変」

言葉はぶっきらぼうでも語尾になるにつれ口調が優しくなっていた。
そしてステラの唇に自分の唇を寄せていく。

「なにしてるの?」

閉じかけていた瞳にステラの大きな瞳が映り、慌ててアウルはステラから離れた。

「別に。間抜け面だなって思って見てただけ」
「アウル……目、悪いの?」

寝起きのためか目を擦りながら聞くステラ。

「はぁ?何でそんなこと聞くんだよ」
「だってちかくでみすぎ」

確かに顔を見るだけならあんなに近くに寄る必要もない。むしろ近すぎて見えないような気さえする。

「うるさい!僕が嘘をついてるとでも言うのかよ」
「べつにそういうわけじゃない……」

普段は全然勘がよくないのにこういう時だけ勘がいいなんて。
アウルはステラから顔を背け舌打ちした。

「どこ行くんだよ」

アウルを横切り食堂から出ていこうとしたステラを呼び止める。

「部屋に戻るの」
「待てよ」
「なに……んっ」

振り向かずに言われたのが無性に腹が立って、部屋に戻りたいなら戻したくない。
そう思う前にアウルの体は動きステラの腕を掴むと無理矢理唇を寄せていた。

「部屋になんて行かせない」
「どうして……?」

困惑してるのかもわからない表情で聞いてくるステラにアウルはもう一度口づけた。

「んぅ……ぁ……っ」

咥内に舌が入り込み抵抗するがアウルはその抵抗を糧にするように更に深く口づける。
先ほどまで無表情だった顔は苦しげで頬は少し赤みを帯びていた。
瞳を開けたまま口づけ続けたアウルはその表情を見て唇を離し笑みを浮かべた。

「お前のそういう顔が見たいからだよ」


−起きない眠り姫
瞳を開けても眠り姫
君は何を考えている?
教えてよ
その表情で
身体で
吐息で
君のスベテで
醒まして
僕のスベテで
醒めて
瞳を開けた眠り姫に口づけを−



H16.12.13




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