瞳を閉じている王子に口づけを


 


「ステラ!お前どこに行ってたんだよ」
「買い物……」

通路を歩いているとアウルに後方から呼び止められステラは振り返った。

「買い物ー?」

ステラが大事そうに紙袋を胸に抱いているのを見てゆっくりとした足取りで近づいていく。

「何で逃げんの?」

アウルを見ながらも後ずさっていくステラ。

「怯えてるわけ?」
「違……んっ」

足を早め一気に近づくと自分の唇をステラに重ねた。
唇はすぐに離れるが同時に胸に抱いていた物も離れた。

「かえ……して」
「絵本?お前こんなの読むのかよ」

奪った紙袋からは“眠り姫”という絵本が出てきた。
マジマジと絵本の表紙を見るアウルにステラは近づけず返してくれるのを待っていた。

「アウルどこ行くの?」

絵本を紙袋に入れる様子を見て、てっきり返してくれるのかと思っていたら背を向けて歩き出してしまう。

「どこって自分の部屋に決まってるじゃん」
「それかえして」

そのの言葉は聞こえないようにアウルは絵本を奪ったまま歩いて行く。

「返してやるよ」

振り向いたと思うとそう言われステラは駆け寄った。

「お前の部屋で」
「っ……離し、て」

さっきまでは微塵にもなかった笑顔。でもその笑顔は“あの時”と一緒のもの。怖い。
そう思うが掴まれた腕を振り払う事ができず、自分の部屋へとそのまま連れて行かれてしまった。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「ん……」

ステラはふと目が覚めて上半身を起こした。
さっきまで熱くてたまらなかった体は冷えている。

「絵本……」

床に無造作に置かれた絵本を手に取りページをめくる。

「王子様は……優しい」

−優しくて、暖かくて、きっと一緒にいて心地がいい人
いつも自分を見つめてくれる
優しい瞳で−

「私を見つめてくれる人」

絵本を閉じ床に置くと何も衣類を纏っていない自分の体を見つめた。
赤い印がどこに視線を向けてもある。視界に入らない所にもたくさん。

「熱い……」

それだけ言うと横で寝息を立てている少年を見つめた。

「どうして私を……」

ステラはアウルの唇に指で触れるとゆっくりと自分の唇を重ねた。


−ずっと貴方は瞳を閉じてる
私から何も見えない
貴方からも何も見えない
それでも
私を暖かくするのは
どうして?
貴方は私の王子様?
感じさせて
身体で
吐息で
視線で
貴方のスベテで
貴方になら
侵されてもいいの
犯されてもいいの
醒まして
私のスベテで
醒めて
瞳を閉じている王子に口づけを―



H16.12.14




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