キミの手を引き寄せる


 


「さむっ」

アウルは見渡すかぎり雪の中、マフラーに顔を埋めながら呟いた。

「はぁ……何でこんなとこにいるんだか」


“アウル、ステラと一緒に外出してくれ”
“はぁ?こんな寒い中何でだよ”
“ステラが外に行きたいと言い出したからだ”
“スティングが行けばいいだろ”
“俺は用事があっていけないから行ってるんだ”
“イヤだ”
“アウル、よく考えろ。この寒い中ステラを一人にしたら……”
“したら……。わかったよ”


今ある状況になるまでを思い出すと再びため息が出た。
マフラーに息がかかり顔が暖かくなる。

「あれ、ステラ?」

ついさっきまで雪だるまを作っていたはずのステラがいない事に気づき辺りを見回した。

「ステラー!置いてくぞー!」

呼びかけても返答は返ってこない。突然消えるわけないしと思いながら先ほどまでステラがいた場所まで近寄った。

「んな事やってっと窒息しかねないぞ」
「むー」

雪だるまの下部であろう少し大きめの雪玉のすぐ横にステラがうつ伏せに突っ伏していた。くぐもった声だけが聞こえてくるがなにを言っているかはわからない。

「たくっ、何やってんだか」

何故仰向けで寝っ転がらないのか、顔面を雪につけて痛くはないのか、そもそも雪だるまを作っていたはずなのに何故こんな体勢なのかなど色々突っ込みたい気持ちはありつつもとりあえずステラを起こした。

「……つめたい」
「そりゃあな」

顔や髪に雪をつけながら呟くステラを呆れながらも笑った。

「何でこのくそ寒いのに余計寒い事してんだよ」
「つめたい……かなって」

見るからにわかるだろと思うが相手はステラ。普通の考えではない…と思う。

「くしゅっ」

ステラは口を両手で押さえ小さくくしゃみをした。
マフラーや手袋を付けずミニスカートにコートという簡易な防寒着。見てる方が寒くなる。

「本当ばっかだな」
「アウル?」

ステラに付いている雪を払いながらアウルは自分のマフラーをステラの首に巻いた。
その行動に不思議そうな顔をしながら見上げてくる。
あまりにもじっと見つめてくるため顔を少し逸らした。

「つめてっ!」

頬に触れる両の手のひら。その手のひらはひどく冷たかった。
ステラの顔を見ると先ほどの不思議そうな顔とは打ってかわり何だか不安そうだ。

「何をそんなに不安がってるんだか」
「え……?」

小声で呟かれた言葉を聞き取れずに聞き返すがアウルは少し笑みながら見つめるだけ。

「アウル?」

何も言わないアウルに余計不安を感じ呼びかけると、ステラの手のひらにアウルの両の手のひらが重なった。

「あったかい」
「ほんとう?」
「嘘言ってどーすんだよ」

ステラはアウルの手が重なって自分の手が冷たい事に気がついた。
感覚がなくなった手がアウルの体温によって戻ってくる。

「何離そうとしてんの?」
「だって、ステラの手……冷たいから」

アウルの顔から手のひらを離そうと力をいれるが、重ねられたアウルの手によって離れずにいた。

「あったかいからいーんだよ」
「でも……あ」

ステラが言葉を続けるのを遮るようにアウルはステラの額に自分の額をつけた。
目の前には目を閉じたアウル。手はアウルの体温で暖かくて、それが心地よくてステラも目を閉じた。

「あったかいだろ?」
「うん」

そう返事をすると視線を感じ目を開けるとアウルと目が合った。

「雪だるま、一緒に作ってやるからさ」
「うんっ!」


−溶け込んでしまいそうなキミ
触れるとひどく冷たくて
そんなキミは冷たさを求めた
違うだろ
お前が冷たいなら暖かいモノを求めろよ
冷たさの中にいたら
溶け込んでしまって
見えなくなってしまう
消えてしまう
キミにしかわからない暖かさがあるから
キミの冷たさが心地よくて暖かいから
だからもっと
キミを感じていたい
だから
キミの手を引き寄せる−



H17.2.17



book / home