貴方の可愛い笑顔
「アウルは……笑顔がいやらしい」
「はぁ?」
食堂にて食事をしていると先に食べ終わったステラがそんな事を言い出した。
「何、いきなり」
「って、スティングが言ってた」
決して誉めているわけではないのだからわざわざ言わなくてもいいのではないかと思うが相手はステラ。
ステラなら言いそうかもしれない、実際言ってるわけだしとも思った。
「ステラもそう思ってんの?」
肯定する事は目に見えているが試しに聞いてみた。ステラは天井を見上げぼぉーっとしている。
話振っておいて聞いてないのかよと言いたくなるがいつもの事なので放っておく。
「……アウルは可愛い」
「お前馬鹿だろ」
何を考えてたのかと思えば“可愛い”。仮にも同年代の男に向かって“可愛い”。
即座に馬鹿と言うとステラの後ろに“ガンッ!?”と言う文字が見えそうなほどショックを受けていた。
「可愛いのに……」
「僕のどのへんがどう可愛いっていうんだよ」
アウルの質問に首を傾げて考えるステラ。するとステラは両腕で自分自身を包むように抱きしめた。
「こんな感じ」
「ぜんっぜん会話になってねぇーよ」
これ以上話していても無駄と思うと席を立ち、食べ終わったトレーを戻しに行こうとする。
「怒った?」
「別に」
怒ってはいなかった。ただ“可愛い”という発言が気にかかって仕方がない。自分ではそう思った事はないのだから。
「アウルのトレーも一緒に片づける」
ステラも立ち上がり食べ終えたトレーを持った。アウルが手にしていたトレーをアウルが返事をする前に取り歩いていく。
「あのブーツ歩きにくそうだよな」
ステラの後ろ姿を見つめながら日頃思っていた事を呟いた。
「わっ、馬鹿」
その瞬間ステラは踵を踏み外しバランスを崩した。空になったトレーが床に転がる。
「いたい」
「何やってんだか」
尻餅をつき痛がるステラに駆け寄る。特に怪我をしている様子もなく腰を打っただけのようだった。
「何だよ」
アウルを見上げじーっと見つめるステラ。アウルがそう言うとステラは笑みを浮かべた。
「やっぱり可愛い」
「はぁ?」
またその発言。今のどこを見てそんな事を思ったのか知りたいものだ。
「スティング呼んでくる」
「な、何でだよ」
言いながら立ち上がろうとするステラ。彼女が何をしたいのかわからない。
「ステラ?」
立ち上がろうとはしたもののすぐにその動作は止まり、俯いていた。
その様子を見て恐る恐る聞いてみる。
「まさか足が痛いとか?」
その問いかけにしばし遅れて弱々しく首を横に振った。
典型的なドジ娘というのだろうか。そして素直にドジを認めないのも典型的。
「もうちょっとヒールが低いの履いとけっつーの」
「きゃっ……アウル?」
突然身体が宙にあがり驚くがアウルが抱き上げたのだとすぐにわかった。
「歩けないなら仕方ないじゃん。スティングの所に行くんだろ?」
「……可愛い」
嬉しそうな顔をしながらステラはアウルの頬に手でそっと触れた。
発言にもびっくりするがその行動に恥ずかしさを感じ顔が熱くなるのがわかった。
「……っ、とりあえず手当てしなきゃな」
やはり何故可愛いのが気になるが手当てをしながら聞けばいいと思った。
「うん」
「ステラっ!?」
頷きながら今度はステラの頬がアウルの頬に触れた。何がそんなに嬉しいのか笑顔を浮かべて。
その様を見てアウルも笑みを浮かべていた。
−見る瞳が不思議と心地良くて
包まれているかのよう
暖かくて
熱くて
心地いい
意地悪だけど
優しくないけど
矛盾しているその笑顔がくすぐったい
ずっと浸かっていたいお湯のよう
きっと貴方には伝わらないのかもしれない
だから行動で示すの
貴方も暖かい?熱い?
そしたらまた見せて
貴方の可愛い笑顔を−
H17.3.11
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