LOVE★微熱!?
「アスラーン!」
あぁ……ラクスが可愛らしい笑顔で(ラクスはいつでも可愛くて美しくて麗しいが)俺を呼んでいる。
何でいきなり花畑に突っ立っていたのかとか、意識が飛んでいて気づいたらラクスが俺を呼んでたとかそんな事は気にならない。
ラクスがいるのだから。
今日は彼女の誕生日だ。
「ラクスっ」
少し遠くで手をあげて俺を呼んでいたラクスに駆け寄り抱きしめた。
「アスラン」
ご機嫌ともいえる口調なのにラクスは俺から離れた。
「私を捕まえてくださいな」
「えっ!?」
そう言うとラクスは突然走り出した。
そうか、これはアレだ。実は以前から少しやってみたいとか思っていた恋人定番の“追いかけっこ”。
笑顔で小走りで逃げる彼女を彼女と同じく笑顔で小走りで追いかける彼。そしてしばらく捕まえられず捕まえずのじれったさを満喫したら抱きついて押し倒す。
そんな追いかけっこだ。
「待って下さい、ラクス」
脳内でシュミレーションしてからいざ駆け出す俺。ふふふと優しく笑みを浮かべながら逃げるラクス。
花畑に舞う彼女はやはり綺麗だ。
冬のはずなのに何故花が満開とかも気にならない。彼女がいるから。
「捕まえ」
そしてラクスの手を掴み引き寄せ押し倒そうとした。
だが意識はそこで途切れた。
「君が何をしたいのか僕にはわからないよ、アスラン」
「ん……キラ?」
眠たげな目を必死に開くとアスランの目の前にはキラがいた。
何故かキラの手をしっかりと握っている。
「もう時間だからと思って起こしたら突然手を掴むからびっくりしちゃったよ」
「わ、悪い。……夢?」
慌てて手を離しあたりを見回すと花畑ではなく見慣れた部屋、キラ宅のリビングだった。何よりラクスがいない。
なんという夢を見てるんだかと恥ずかしさから頭を抱え俯いた。
「何悩んでるのかわからないけど時間、いいの?」
「えっ、今何時……うわ」
時計を確認するとあからさまに慌て出すアスランに、キラは落ち着けといわんばかり肩をポンと叩いた。
「大丈夫、洋服ならホラ!」
「いいっ!普通でいい!」
突然出されたスーツを見るなり首をぶんぶんと横に振る。
「何言ってるのさ。こういう日だからこそスーツだよ」
「そ、それじゃあまるでプロポーズしますと意志表示してるように見えるぞ!?」
アスランの拒否は見えていないかのようにスーツを押しつける。
そしてにんまりと笑みを浮かべた。その笑みに悪寒を感じたのは言うまでもない。
「アスラン奥手だから格好から入らないと」
「全然意味が……おい、髪まで何するつもりだ」
櫛と髪止めを手にしたキラに嫌な予感がよぎり逃げようとするが逃げられるはずはなかった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「朝から何か散々だったな……恥ずかしい夢も見ちゃったし」
アスランは待ち合わせ場所に向かいながら独り言をつぶやいていた。
でもあれはほんの一つの願望なのかもしれない。そう思うと苦笑にも似た笑みを浮かべた。
「本当、惚れ」
「アスラーン!」
独り言を遮られ俯きかけていた顔をあげると夢と同じように手をあげて自分を呼びかけているラクスがいた。
「ラクス、すみません。待たせてしまって」
「謝らないで下さい、アスラン。それに……」
言葉を区切るとにっこり笑いラクスは耳打ちした。
「待つのも恋人の醍醐味というやつですから」
「ラクス……」
少し照れくさくも嬉しくて笑むとラクスの視線が服や髪にいってる事がわかった。
「……変、でしょうか?」
髪を一つに束ね格好はピシッとキマったスーツ。いつもと違うため自分ですら変な感じがする。
「いいえっ!とても素敵ですわ!!」
両手を合わせ嬉しそうにするラクス。アスランは小声でありがとうございますと照れながら返した。
「今日はどちらへ連れていって下さいますの?」
「今日は……あ、あれ?」
ジャケットやズボンのポケットを探るが見あたらないモノ。アスランはその場で固まった。
「本当何しにきたんだか」
「どうしたんだ、キラ」
リビングのテーブルに置き去りにされた一枚のメモ用紙。
それには
“ラクス誕生日デートプラン”
という見出しで事細かにスケジュールが書かれていた。
「わざわざうちに来て書いたのに忘れるなんて本当抜けてるよね」
メモ用紙をつかみそう言うが表情は明るく笑んでいた。
「ま、それがアスランらしいか」
「届けなくていいのか?」
カガリの問いに首を軽く横に振るとメモ用紙をテーブルの上に戻した。
「きっと大丈夫だから届けない」
「アスラン?」
「ラクス、すみ」
謝ろうとするアスランの唇に人差し指をあて言葉を途切れさせた。
「行きましょう、アスラン」
ラクスに手を引かれその場から歩き出すアスラン。
嬉しいはずなのに自分が情けなくて仕方がなく表情を曇らせた。
ラクスへの誕生日プレゼントとなるはずだったエスコート。一枚の紙がないだけで何もできない自分が情けなくてこの上なかった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「可愛いですわ〜」
「そうですね」
ペットショップへとやってきた二人。
ケースの中にいる犬や猫を見てはしゃぐラクスに相づちを返すアスラン。笑っていてもどこか表情は曇ったままだった。
「あれ、ラクス?」
隣にいたはずのラクスがおらずあたりを見回す。すると右頬に何かが触れ驚いた。
「びっくりしました?ふふ」
子犬を抱きかかえ意地悪が成功して満足する子供のような笑みのラクス。右頬に触れたのがその子犬の舌だとわかり何だか笑ってしまった。
「本当にびっくりしてしまいましたよ。頬を舐められたのもですが……ラクスがいなくなった事に」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「アスランは何もお食べになりませんの?」
「はい、あまりお腹が空いていないもので」
色んな店を回り喫茶店で落ち着こうと入ったはいいが甘いものを食べる気にはなれずコーヒーだけ飲んでいた。
ラクスは紅茶を飲み頼んだケーキを待っている。
ほどなくケーキがくると食し始める。
それを見つめていると視線に気づいたのかラクスが顔をあげた。
「アスラン」
「はい」
「あ〜ん、ですわ」
フォークに一口サイズのケーキを乗せアスランの口に向けつつ言われた言葉。
「えぇ!?」
一瞬固まるがすぐにそんな反応をした。
こんな外で……いや、そりゃあ食べたいけどでも……などという考えが頭を巡る。
「チョコケーキで甘さは控えめですから一口だけ試しに食べてみませんか?」
「じゃ、じゃあ……」
そうラクスに進められたら食べないわけにはいかない。
口を開け顔を少し前に出すとすぐに甘さが口の中で広がった。
「おいしい、ですね」
「もう一口食べますか?」
確かに甘さも控えめでおいしい。何となくラクスは自分のためにこのケーキを頼んだんではと思いながらもう一口ケーキを口に運んでもらった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「ラクス、あの……プレゼントがあるんです」
アスラン宅に到着ししばらくすると、アスランが後ろ手に何かを隠しながら切り出した。
「プレゼント、ですか?」
少し前にプレゼントは何がいいかと聞かれアスランのエスコートと答えたラクス。
だから他にプレゼントがあると予想しておらず少し驚いた様子でアスランを見つめていた。
「誕生日おめでとうございます、ラクス」
「まあ、ありがとうございます。今開けてもいいですか?」
少し大きめの箱を差し出され嬉しそうに受け取るラクス。
アスランは笑みながら首を縦に振った。
「素敵な着物ですわ」
開けると紫の着物が入っていた。
「イザークとディアッカに選ぶの手伝ってもらったんです。でも結構意見が割れて返って大変になってしまって」
苦笑混じりながらもその時の情景を浮かべているのか楽しそうな笑みだった。
「気付けも教えてもらったんで気付けられます!」
アスランのその言葉にくすっと笑うと、妙にはしゃぎすぎたかと思いアスランは赤面した。
「脱がしてくださるのもアスランなのですか?」
「えっ!?ええと……はい」
ラクスの問いかけにしどろもどろになりながらも最後だけ小さい声でもはっきりと答えた。
「ラクスっ!?」
突然抱きつかれ驚くアスラン、すると抱きつく腕が更に強くなった気がした。
「最高のプレゼントですわ」
失敗だらけだったけどそう言われて曇った気持ちも晴れた気がした。
「俺もプレゼントもらってますから……毎日」
「毎日ですか?」
不思議がるラクスにアスランはそっと耳元に囁いた。
「胸の高鳴りを毎日もらってます」
−ドキドキよ止まるな
この予感ごめんあそばせ
恋人はキミ
そばに居たい
抱きしめたいメモリーズ
二人きり
夢の続きが両手に溢れ
輝いてる
平凡で
私だけの
不器用な
あなたがスキ
Don't stop my heart
ラブ微熱−
身体が火照るぐらいの愛で
夢の続きへ飛び込む
君がいるから
そばにいるから
心地よい高鳴りを……
H17.2.5
H17.3.10修正
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