眠らない抱き枕を抱いて


 


気づけば知らぬ瞳に見つめられたいと
気づけば身体を冷やす熱を求めてた


「アウル……どいて」
「はぁ?どく理由がないし」

ステラの部屋の前にわざとらしく立ち塞がる。
案の定戻ってきたステラは困って泣きそうな顔をした。

「ステラ最近寝てる?」
「なんで?」

何となく聞いただけ。揺籠以外で寝てるのか気になった。
ずっと海を眺めてるか、水槽を眺めてるかしてそうだったから。

「べっつに。聞いてみただけ」

一向に扉の前からどかない僕。そんな僕を泣きそうな顔で見続ける。

「泣きそうなら泣けば?」
「泣かない……」

無理しているのがわかる。泣き虫だなと思いながらステラに一歩近付いた。

「な、なにっ……」

何をされるのか予想がつかないのかステラは一歩後ろに下がり怯えたような表情を見せる。
その顔を見るのも楽しくて仕方なかった。

「ここじゃ何もしないよー。部屋の中ではするけど」

距離を縮めて行く分、ステラも後ろに下がる。
でもここは狭い通路。すぐに壁にぶつかる。
僕の言葉の意味がわかってるのか、わかってないのか、ステラは胸の部分を両手でぎゅっと握る。

「それで脱がされないようにしてるつもり?」

壁に両手をつきステラを閉じ込める。
拒むように顔を俯かせる様さえ楽しい。

「やっ……ぁ」

耳を舌で嘗めてやるとそんな声を上げた。
そのまま耳元でステラが素直になるように言ってやった。

「眠りたいなら部屋にいれてよ」

水槽の明かりがぼんやりと部屋を照らす。
隣りでは静かに寝息をたてるステラがいる。
身体の熱が引かなくて、いくら放っても引かなくて……ステラの身体に触れた。

「ん……」
「わっ」

ステラの手が僕に向かってきたかと思うと僕はその両腕に包まれた。

「はっ、何やってんだか」

まるで抱き枕を抱くように僕にしがみつくステラ。
そんなステラがおかしくて笑いながら、額に唇を落とした。


―いつかこの記憶が消えたら
熱もなくなるんだろうか
疼くような熱は
見えない傷のよう
見えない
見えない……
夢の中に
僕はいる?
いないなら目を覚まして
僕を見て
いても目を覚まして
僕を抱いて
眠れない抱き枕は
包まれ
いつしか眠る―



H17.7.8



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