ただ君を突き刺す刃
「ステラー」
「ん〜?」
かったるい訓練が終わって着替えも終える。
隣で着替え終えたステラを呼んでみる。
いつもと変わらない様子で聞いてるんだか聞いてないんだかよくわからない応対。
「ネオが……」
「ネオ!?何?ネオが……?」
ロッカーに手を伸ばしながら用件を告げようとすると、あからさまに嬉しそうな声が聞こえる。
「これに目、通しとけってさ」
ネオから渡された紙をステラに差し出す。
ネオからの物だとわかっているからか紙切れ一枚でも喜んでいる。
「うざ……」
「え?……いたっ」
ステラが紙を受け取ろうと紙に指を触れさせた瞬間、紙を引いた。
ステラは親指をもう片方の手で押さえる。
「アウル?怒ってるの?」
「べっつに」
そう言いながらも僕はあからさまに不機嫌な表情をしているだろう。
怒ってるわけじゃない。
むかつくだけ。何かを掻きむしりたいほどに。
「何?指切ったの?」
ステラが押さえている親指を強引に引っ張る。
「ごめんなさい」
「何謝ってんの?ステラは何もしてないだろ」
そう、ステラは何もしてない。
僕に何かをしたステラ。じゃなきゃこんなにむかつくわけがない。
何かしたんだ。気づかないだけ。ステラも……僕も。
「痛い?」
「うん。ちくちくする」
親指には切り傷みたいな物があった。
よく見なければわからない。そこは薄く赤くなっていた。
「血出てるよ?」
「痛い……から」
それはあたりまえの事。
血を流すから痛いのか、痛いから血を流すのかはわからない。
「アウル、手離して」
僕はステラの親指から手は離さずに、もう片方の手で持っていた紙切れを離した。
ステラに渡すはずだったネオからの物。
ステラはあ……と小さく呟き、その紙切れが落ちて行くのを目で追う。
「やっ……痛い」
ステラの視線が親指からはずれた瞬間、唇を親指に寄せた。
鉄の味が少しした。
「やだ……アウル」
血を吸い出すように親指に吸い付く。
僕から離れようとステラの手が肩を押し退けようとする。
「黙ってなよ」
「んっ、う……ん」
その手も掴み、今度はステラの唇に自分の唇を寄せた。
口内に侵入し舌を絡める。ステラにもこの鉄の味が伝わるような。
「んぁ……アウル」
唇を離すとステラは泣いていた。
「もっとナきなよ」
そう言って目尻を舌で触れてから、また口づけた。
きづかぬ内に
切られたみたいに
残る傷は
確かに痛くて
痕にさえならない
でも痛い
血は涙のように
痛いから流れるんだ
涙は血のように
流れるから痛いんだ
それさえも飲み干す
全ての感情は
僕が与える
何もかも
痛みなんて飲み干して
君に味を伝えるから
僕を感じて
きづかぬモノではなく
確かに在りたい
それは刃のように
鋭く柔らかく切り裂く
僕は
ただ君を
突き刺す刃
H17.7.22
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