残像花火


 


「怖い……」
「は?」

体育座りでテレビを見ていたステラが呟いた。
夏祭りの映像を映している画面。行った事はないけど楽しそうだなとは思う。

「何で怖いんだよ」
「っ!?」

画面から大きな音が聞こえた。打ち上げ花火だ。
それが映り、ステラは両腕で自分を包み縮みこまる。
もう聞かなくてもわかる。ステラは花火が怖いんだ。
何度も何度も打ち上げられる花火。始めは怖がっていたステラも落ち着いてきたのか、両腕を下ろしていた。

「散って、落ちていくの。消えて、一瞬しか残らないの」

いつものぼぉーっとした表情。でもどこか違う気がした。
テレビ画面を映しているステラの瞳はどこも見ていない気がする。

「アウル?」

ステラを後ろから抱き締めた。ステラは首を傾げながら僕を呼ぶ。

「すっげぇー光じゃん?一瞬なのに目に焼け付くように残るって凄くない?」

花火は見た事があった。任務の帰りに見ただけ。楽しさも何もない。
でも凄いと思った。

「こうやって見えなくなっても思い浮かぶんだぜ?」

ステラの両目を手で塞ぐ。

「見たいな……花火」

さっきまでの何も感じさせない言い方ではなく、何かを期待するような嬉しさが込められた言い方。

「見せてやるよっ」

ステラの両目から手をはずし、再び抱き締める。抱き付いたに近いけど。

「うん、見せて。一緒に見ようね」

僕の腕に触れ、嬉しそうに言った。

「スティングを除け者にするといじけるからスティングもな」

冗談みたいに言うとステラは少し振り返って笑顔で頷いた。


まるで僕らみたいに
消えゆく
上がっても
落ちて
散りゆく
それでも
残っていたいと
願うのは
ワガママなんだろうか
ただ今は
イマのために
一瞬を焼くために
それは散るものではなく
残すため
この手に握るものを
掴むため
写真に似たそれは
残像のように
きらめいて
僕は君を
君は僕を
焼いていくのだろう



H17.7.25



book / home