欲張りなほどに触れて 感じるままに貫いて
「お姉ちゃん見て見て〜」
「何?」
ルナマリアの自室にメイリンが訪れ、ベッドを占領していた。
何を言っても無駄だとわかっていたので放っておいた。
「これこれ“彼女の誕生日にプレゼントしたいのは?”ランキング」
ベッドに広げた雑誌のページをルナマリアに見せながら、メイリンは妙にはしゃいでいた。
「……だから?」
「だから……って、明日お姉ちゃんの誕生日でしょー」
それはわかっているが自分の妹が何を言いたいのかさっぱりわからない。
「三位が花、二位がアクセサリー、一位が……」
「これ、いかがわしい雑誌なんじゃない?」
ランキングの結果を見るなりそんな事を言う。
メイリンは違うと頬を膨らませ、姉の枕で姉の頭を叩いた。
「はぁ……」
翌日、誕生日当日となったがルナマリアはため息を吐いた。
普通の生活ならば祝えるが、ここはミネルバ。祝い事ができるような場所ではない。
「昔は盛大にやったんだけど」
家に人を呼んで自分の誕生日を祝う。誕生日よりもみんなが笑顔で自分を祝ってくれるのが嬉しかった。
それも今はない。
「ルーナマリアっ」
「わっ……ちょっとシン、驚かせないでよ」
気持ちが段々と暗くなってきた時、後ろから明るい声が聞こえ抱き締められた。
日常茶飯事化している事。いつも驚かせられる。
何度やめるよう言ってもやめない。何でも驚く表情が見たいんだとか。
「誕生日おめでとう」
「……ありがと」
満面な笑みで言われると何だか照れてしまう。
「で、プレゼントなんだけど」
「別にいいわよ。私気にしないし」
シンは満面の笑みのまま、ルナマリアの体をまさぐり触る。
「ちょ、何するのよ」
「プレゼント」
こんな通路で何を考えているのかスカートまで捲ろうとする。
慌ててシンの腕を振りほどき、身を守るように両腕で体を包んだ。わずかに息切れしてしまう。
「な、何してるのよ!こんな通路のど真ん中で!」
「だからプレゼント」
プレゼントと言い張るシン。嫌がらせに近い。
部屋でならともかく通路。誰かに見られてしまったら何を言われるかたまったものではない。
その時、昨日メイリンから見せられた雑誌を思い出した。
「シン……プレゼントって何?」
「俺」
“彼女の誕生日にプレゼントしたいのは?”ランキング一位“自分”という文字がはっきりと頭の中に浮かんだ。
「触ってるだけじゃない!」
「うん、触りたいから」
欲望のまま生きる男なのか、それはプレゼントではないのかと目眩がしてくる。
「ルナ……俺、いらない?」
笑顔は消え、俯いたかと思うと上目遣いでこちらを見てくる。
「犬みたい……」
思ったままを口にするとシンは笑顔になり、少し離れたルナマリアに近付いた。
「飼う?ルナマリアだったらいいよ」
「何言ってんのよ」
怒っているようでもルナマリアは笑顔だった。
「やっぱり笑顔の方がいい」
先ほどまでのからかうような笑みではない笑顔。その表情にルナマリアは顔が熱くなったのを感じた。
さっきの暗さをシンが吹き飛ばしたような感覚。それが何だか心地いい。だから自分は笑顔なのかもしれない。
「ルナマリア、行こう」
「どこに?」
手を掴まれ引いて行かれる。聞かなくてもわかる、シンの表情を見れば。
こんな誕生日も悪くない。そう思った。
じゃれるように
まとわりつくように
私に触れる貴方
うざったらしいけど
何だか暖かくて
不思議
……不思議
少年の貴方は
まだここにいる
いつか違う貴方が
来るのかしら
でも貴方はアナタ
いつでも私に
触れていて
欲張りなほどに
触れて
感じるままに
貫いて
それはアナタとワタシの
交わされる約束
H17.7.26
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