悪戯な声、君への愛


 


「ルナ〜ルナ〜」

通路で何度もその名を呼ぶシン。しかし急いで探しているようには見えない。

「ルナ〜ルナ〜」

通路ですれ違う人達はシンを見るが日常茶飯事かのように何事もなかったようにすれ違うだけ。

「ルナ〜ルナ〜」

ずっと呼び続けるがその人は一向に現れない。

「ル」
「もうっ!恥ずかしいからやめてよ!」
「ルナ、どうしたの?」

突然前に立ちはだかってきたルナマリアを不思議そうに見つめる。
ルナマリアはわなわなと拳を震わせた。

「どうしたの?……じゃないわよ!」
「だって突然俺の前に出てきたら“どうしたの?”って聞くしかないじゃないか」

ルナマリアは怒る気も失せ半ば呆れながらため息をついた。

「何か用?」
「何で?」
「私を呼んでたじゃない。大きな声で」
「呼んでみただけ」

ぴきーんとシンとルナマリアの周りの空気が凍りついた。
ヒクヒクと口の端をひきつらせながらルナマリアは聞いてみる。

「貴方、前も同じ事したわよね?」
「そうだっけ?」

シンのあっけらかんとした返答にルナマリアは小突きたい気持ちを抑えた。
前に小突いて“ルナマリアは呼んだだけで殴る”とミネルバ中の噂になってしまったのだ。

「用もないのに呼ばないでよ」

それだけ言ってシンに背を向けて歩き出す。

「ルナ!」
「何よ。……何でそんな笑ってるのよ」

呼ばれて振り返ると満面の笑みを浮かべるシンがいた。しかしどこか悪戯な笑みに感じる。

「あんまり前かがみにならない方がいいよ。前開いてるから水色が見えるから」
「なっ!?」

シャワーを浴びている途中にシンの声が聞こえ慌てて出てきてしまったルナマリア。
軍服の前は上まで止めておらず、下着だけつけて着たために確かに屈むと水色の下着が見えてしまう。

「シン、貴方狙って呼んだでしょ!」
「何の事だかさっぱり〜ルナはシャワー浴びたてでさっぱり〜」

ルナマリアの部屋前でのそんな出来事。


−いつでも君は来てくれる
俺だけのために
慌てて
取り乱して
必死に
そんな俺だけにしか
見れない君
ずっと見ていたい
いつでも見たい
悪戯な声、君への愛−



H16.12.15



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