太陽は何処
「雨……」
買い物をすませ外にでるといつの間にか雨が降っていた。
「さっきまではあんな晴れてたのに」
1時間も経っていないのにこの変わりよう。呆然とその場に立ち尽くした。
「あっ」
見覚えのある黒い傘を発見し声をかけようとする。
だが声をかける前にその傘の持ち主は振り返った。
「何かお困りのようだけど?」
雨を見ながら店先で佇んでいるのを見れば傘がない事はわかるのに傘の持ち主、ルナマリアは白々しく聞いてきた。
「傘忘れちゃってさ」
「嫌よ」
聞く前に拒否されてしまい言おうとした言葉を飲み込まざるをえなかった。
「何でだよー、別にいいじゃん。その傘大きいんだし」
確かに女の子が持つには少々大きい傘だった。無地で真っ黒というのも女の子らしくはない。
「この前の事忘れたわけじゃないでしょうね?」
「この前?……あぁっ」
少し考えるがすぐに思いだす。
「俺がルナの」
「言わないでいいからっ」
ルナマリアはシンの言葉を遮りため息を一つ吐いた。
シンから空へと視線を向け再びシンに戻す。
「叩かれたくなかったら前みたいな事しないでよ?」
「ルナー、まだこの前の事怒って」
「ない」
一つの傘に二人で入り、いわゆる相合い傘状態。
傘の柄をシンが持ちルナマリアはシンからあからさまに顔を背けていた。
「……スカートの中に入れなかっただけマシだと思うんだけどな」
「何か言った?」
「いえ、何も」
小声でそう言ってみるがやはり怒っているようだった。
「悪かったよ」
「本当に悪いって思ってるの……?」
こちらをやっと向いたルナマリア。いつもの強気な表情かと思ったが何だか違う感じがした。言葉にも覇気がない。
ルナマリアの問いかけにシンは首を横に振り答えた。
「……違う。触りたかったから」
そう言った瞬間お互いの足が止まった。
数日前も雨だった。
その日も俺は傘を持っていなくて、ルナにいれてもらって。
無防備に話しかけてくる彼女がはがゆくてどうしようもなくて。
子供の悪戯みたいに胸を触った。
「何でこんな傘使ってるかわかる?」
「え?」
突然変わった話に頭がついていけずしどろもどろになってしまう。
「大きい傘がこの色しかなかったの」
その言葉にどんな意味があるのか一瞬考え込んでしまった。
数日前も雨だった。
傘を買おうとしたらシンが店先で空を見上げていて。
ただ眺めている様が寂しげで。
だから傘を買った。2本ではなく1本だけ。
彼が濡れないように。
「ルナ」
「何?」
聞き返すとシンは少し照れているのか顔を俯かせた。しかしすぐに顔をあげる。
「触って」
「いいわよ」
聞く前に答えられ驚くがルナマリアの肩に手を乗せた。
「えっち」
「今回は許可得ただろ」
そう答えるシンの顔がなんだか可愛くて、ルナマリアはシンの頬を人差し指でつついた。不服そうな顔はするものの嫌がった様子はない。
「何で触るのかシン自身がわかってるなら触ってもいいんだけど」
「何?」
「何でもないっ」
小声で言った言葉をごまかすようにそう言うと、頭をシンの肩に預けた。
そして止まっていた足を再び前に進めた。
「ルナ、ありがと」
呼ばれて上目遣いでシンを見ると笑顔で礼を言われた。
傘の事に対してなのかはたまた違う事に対してなのかはわからないがそんな事はどうでもいいほどシンの笑顔は綺麗と感じた。
そう言ってやるのも悔しかった。でも何かしたら言いたい。
視線を前に向けると相変わらずの雨。ルナマリアは何か思いつき笑みを浮かべながら言った。
「雨なのに太陽に照らされてるみたい」
−雨は気持ちを重くさせるんだろうか
元からわからない気持ちが
更に雨で遮られてしまわれているよう
でもほんの少しでも
君の気持ちが見えると
自分の気持ちも見える気がする
いつか晴れ渡った空は見えるだろうか
今はもう少しだけ
この不思議な空間の中で君と二人
さぁ太陽は何処?−
H17.3.11
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