晴れた空の太陽を見るが如く……
「シン、お前手加減していないか?」
「は?」
カガリからそんな事を聞かれシンは聞き返した。
カガリは何も言わず疑うような眼差しでジッと見つめる。
かなり近距離に顔があるためその視線が妙に突き刺さる気がした。
「何で俺が手加減なんてしなきゃいけないんですか〜?」
「その言い方が手加減している証拠だ」
あからさまにわざとらしい敬語。シンはしまったと思うが顔には出さず平静を装った。
「じゃあもう1回やればいいだろ」
「望むところだっ」
テーブルの上にお互い肘を乗せ手を握り合わせている。その手に力をこめる。
二人は腕相撲をしていた。いくらやってもカガリが勝つ。
あからさますぎて初めは喜んでいたカガリもいい加減疑い始めていた。
「くっ……」
カガリの手の甲がテーブルにつきそうになり必死に耐える。巻き返そうな気配はない。
「あっ、肘があがった」
シンのそんな言葉が聞こえるとカガリはキッと睨んだ。
「今日はもうやめ」
その睨みも通用しないのかそう流されてしまう。
そしてシンはカガリから手を離そうとした。
「……離せよ」
「嫌だ」
「離せ」
「いーやーだー」
両手でシンの手を掴み離そうとしないカガリ。
力任せに離すわけにもいかなくとりあえず離さない理由を聞いてみる。
「何で離さないんだよ」
「勝負がまだついてないっ!」
予想していた答えが返ってきてため息を吐きそうになる。
しかしため息を吐こうものなら間違いなく状況は悪化する。
「何でそんなに勝負をしたがるんだよ」
今度は質問を変えてみる。ここ最近じゃんけんやらトランプやら勝負にこだわっているように見えた。
「それは……」
言えそうで言えないカガリをシンは黙ってみていた。急がせれば確実に言わないとわかっているから。
「わかった」
「え?」
「勝ったら何をしてくださいますか?」
何か企んでいるような笑みを浮かべ突然聞いてきたシン。
何を言っても無駄だとわかった。どう言おうがシンの思惑通りになる。
そうわかっているがカガリは勝負がしたくて言ってのけた。
「シンの言うとおりにする」
「取引成立。……Ready go!」
シンの合図で何回目かもわからない腕相撲が始まった。そして始まってすぐに終わってしまった。一瞬でカガリは手の甲をテーブルにつかされていた。
「……やっぱり手加減してたんじゃないか」
「それは……」
いくら何でも勝負をつけるのが早すぎたかと思い何か言おうとするが言葉は続かない。
カガリは自分の手をシンの手から離した。
「話せよ」
俯きかけた顔をあげシンを見ると何ら変わりがない。少し何か言葉をかけてくれるのではないかと期待してしまった。
「勝ちたかったんだ」
「ならもう勝負なんてしなくても」
「違う!違うんだ」
何で勝負しても手加減をして勝たせてくれる。勝つ事は嬉しいはずなのに虚しい。
手加減をされるという事は自分が弱いという事。絶対的な力を見せられて勝ったなどとは言えない。
「悪かったよ」
「え?」
聞き返すとシンはイスから立ち上がりカガリに背を向けた。
初めは女だから負けてやるかとか思った
でも勝った時の表情が印象的で
もっと見たいと思ったんだ……
「腕」
「腕?」
そのまま聞き返すとシンはカガリに振り返った。
「腕、磨いといてくださいネ」
シンの言葉に初めは言葉が出ず口をパクパクと開閉させていたがすぐにイスから立ち上がり叫んだ。
「絶対負けないからなぁー!!」
「顔ニヤケてますけど?」
「えっ!?」
慌てて顔を押さえるが怒っているのだからニヤケてるはずもない。
それでも驚いて顔を押さえたのは怒っていながらも何となく嬉しさがあったからだった。
「あぁ、でも」
「何だ?」
何かを思い出したかのようなシンの口振りが気になり聞くと、シンは口の端を両手で引っ張り面白い笑顔をした。
「笑顔対決なら負けるかも」
「それは笑顔対決じゃなくてにらめっこというやつじゃないか?」
遠回しにカガリの顔は面白いと言われたような気がしてならなかったが、シンの顔が面白いあまり怒る気も失せ笑顔を見せていた。
−始めは軽い気持ちの判断
それでいつの間にか傷つけていた
見たいがために傷つけてしまっていた
でもほんの些細な事で
見れるのかもしれない
ほら
きっと
今はまだ言えないけど
いつかは言えるんだろうか
雲間から見るようではなく
晴れた空の太陽を見るが如く…−
H17.3.11
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