君を汚して負うモノは


 


うなされるそれは
この伸ばす腕のせい


「あ……」

何となく俯き加減で歩いていたら聞きたくない声が耳に入った。
顔を上げると目を塞ぎたくなるほどの金髪が視界に映る。

「立ち止まらずに歩いたらどーデスカ」

その場で固まってしまったかのようなあんたにぶっきらぼうに投げ掛ける。

「シン……」
「あんたに名前を呼ばれたくない」

小さくごめんと呟かれ俯いた。
何がごめんなのかわからない。悪いと思うなら俺の前からいなくなってほしい。

「でも私はお前の名前を呼ぶぞ、シン」

そしてすぐに顔をあげて突き刺さるような視線を向ける。
いや、“ような”ではなく“れた”。
思わず右手で胸を押さえ顔を逸らす。

「シン」

近付くな、近付くな。それ以上歩み寄らないでくれ。

「シン」

手が顔に触れそうになり俺は一歩後ろに下がる。

「私に触られるのは嫌か?」
「い、やだ」

何故か震える声。何でだ。何で俺は泣きそうなんだ。
こんな奴の前で涙なんか見せたくないのに。

「うわっ何だ」

腕を引っ張り部屋の扉の開閉スイッチを押した。そこがあんたが滞在する部屋だと知っているから。



「どうしたんだよ、シン!」

そのままベッドに投げ捨てるように手を放した。

「やめ……んんっ」

身動きを封じるように覆いかぶさり、乱暴に唇を奪う。

「何で……」
「こんな事で泣くようじゃあ代表なんて務まらないんじゃないんっすか」

自分でも何をしているのかがよくわからない。
服を手をかけ、ボタンをはずしていく。

「シンっ、やめ……」
「アスランさんが帰ってくる前に終わらせますよ」

わざわざ見つけやすい首筋に吸い付き、赤い跡を残す。
あんたが流す涙を拭おうとはせずに両手であんたの頬を叩いた。

「別の意味でナいてくださいよ」
「あ……」

また聞きたくない声が聞こえた。昨日嫌というほど聞いた声。
顔をあげるとあっちが顔を逸らした。
そのまますれ違う。
少し歩いて足を止め、振り返った。
眩しくて見えない。
そんな感覚がした。
見えても届かないんじゃ見えないと同じ。
その背中に向かって手を伸ばす。
何故伸ばすのかはわからない。
わからない。だからうなされる。
ずっと脳裏に焼き付くように、あんたが俺をうなす。


焦がれるものも
わからぬまま
射された矢にも
きづかぬまま
俺は太陽を見る
太陽はいらないと
自分の陰が覆う
焦がれるモノは何
射されたモノは何
照らされる事がない
この地で
何かを探し
君を汚した
負った傷は
見えなくて……
君を汚して負うモノは
見えぬモノを追うコトだった
そして今もなお
見えぬ地で
追い続け
手を伸ばす
自分が傷ついていると認めないまま
走り続ける
壊れるまで……



H17.7.23



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