ぬるくなったココア
「ホットココアー?」
購買で買ってきたパンと缶を机に置くと、前に座っていたアウルが缶を少し傾けていた。
「何だよ」
「あまっ」
「ココアで苦かったらびっくりするだろ」
そんな事言ってるわけじゃなくてさ〜とおもむろに缶を振りはじめる。
「あったけー」
「振るふりして手をあたためるな!冷める!」
アウルから奪い返して軽く振ってからプルタブを開けた。
「女が好みそう」
「それは偏見だろ」
買ってきたコロッケパンの袋を開ける。アウルはすでに口に入れていた。
「狙ってんの?」
「何がだよ」
食べながら話すなと言いたかったが、突然にやにやとした笑いを見せはじめたため気になってしまった。
「間接キス」
「は?お前と?」
「ばーか」
何を気持ち悪い事を言っているのか。でもアウルも気持ち悪かったらしく嫌がらせかのように缶を両手で持った。
「だから冷める!」
「あいつと最近よく話してるみたいじゃん」
「あいつ?」
「あいつ」
アウルは両手から缶を話し、パンを食べるのを再開した。
何となく誰を指しているかはわかったが聞き返してみた。
名前を言わないあたりで当たっていたようだ。
「わざわざ間接キスと言うまでもないだろ。男同士だってペットボトルの飲みあいするんだし」
「ばーか」
本日二度目。
アウルの飲み物が温かいものならやり返せたのに残念ながら炭酸だ。
「それあいつに言ってみろよ。しばらく口聞かなくてすむ」
「それ怒らせるって事だろ」
「お前が最近僕が嫌がる事ばっかやるからだよ」
どうしてそこまで彼女を嫌うのかがわからないでいた。
彼女もアウルを嫌ってるし。意外と話せば気が合うんじゃないか?
アスランさんの事は俺のせいではない、はず。俺がいなくてもキラさんが何かやってただろうし。
「ま、そう言うって事は特に意識してないって事か」
「別に意識してもお前が困るわけじゃないし」
「そしたら友達やめてやる。ぜったいやめる」
それは嫌かもしれないとは思っても出しづらい。
実際やめるなんて事しないんだろうなとも思ってたりする。
それだけ長い付き合いだ。
「アウルがそこまで嫌がる理由がわからない」
「あっちが嫌がってんだよ」
じゃあやっぱりちゃんと話せば平気なんじゃ……。感覚的に受け付けないのだろうか。
「それだとあたしが悪いみたいじゃない」
「げっ」
まだ口をつけていないココアを飲もうとしたら目の前から消えていた。
見上げればそのココアを飲む話の話題の人物がいた。
「ミーア、勝手に飲むなよ」
「……ぬるい」
やっぱりぬるかったか。
「てかお前高等部なんだからわざわざ昼休みにまで中等部に来んなよ」
「どこに行こうがあたしの勝手でしょ」
いいからココアを返してほしい。
でもこのまま飲んだらさっきアウルが言ってた通りになるのか?
「それにあたしはあなたの先輩ですー」
「先輩らしくなってから出直してこいよ」
こんなやりとりを何度見た事か。
「ミーア、何か用があって来たんだろ?」
「そう!今日約束してなかったから約束しに」
「お断りしますー」
「あなたに聞いてない!」
ミーアは少し怒りながらココアを元の位置に置いた。それを凝視してしまう。
「シン、飲まないの?」
「買って返せよ」
「だからあなたに聞いてない!」
飲まなければ怪しまれる。飲めば怒られる。
まだこう考えるうちはアウルのいう通り意識してないのだろうか。
言い合う二人の前でぬるくなったココアを飲んだ。
H21.3.1
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