意識しなかっであろう出来事


 


「今日も美味しそうなお弁当ですが……」
「えっ?」

目の前には私のお弁当を覗き込むラクスがいた。
昼休みは用事があるとかで一人で食べていたのだが、どうやら用事が済んで帰ってきたようだった。

「何かあったのですか?」
「何か……っ!?」
「あらあら」

ろくに機能していなかった思考が、ラクスの言葉で機能し始め顔を熱くさせた。

「話せない事ですか?」

座りながら聞いてくれる。
話せない事はない。でも気恥ずかしくて、俯いて小さく頷く事しかできなかった。

「耳、貸してくれ」
「はい」

すぐにラクスは耳を寄せてくれる。
内緒話をしたいわけではなく、恥ずかしいからだ。人前で言っていい話でないのも確かだが。

「……あらあら」
「びっくり、したんだ」

移動教室でラクスに先に行ってもらうように言って、教室に戻った。
急がないといけなかったから中をよく確認せずに思いきり扉を開けたら、中には二人の男女がいた。
うちのクラスではなかったけど、そんな事を言う暇もなく私は扉を閉めるしかなかった。

「カガリさんでしたら何故こんな時間に他のクラスの生徒がいるのか聞くのかと思いましたわ」
「私もそう思う」

咄嗟の事で何故あんな行動にでてしまったのかがわからない。
そして男女二人の服のはだけかたが頭から離れない。

「何をなさってたのでしょう?」
「さ、さぁ……?」

ラクスには男女二人がいたとしか話していない。
はぐらかしてもわかってしまうだろう。ただ、恥ずかしくて言えないだけだ。

「カガリさんは可愛いですわね」
「ラクスのほうが可愛い」

可愛いというよりは綺麗という言葉が似合う。
柔らかい笑みが似合って、私とは全然違う。

「私でしたらきっとそのまま教室に入って忘れ物を取ってきますわ」

先程の話。
でもそれが今の“可愛い”と何の繋がりがあるのかわからなかった。

「お弁当を食べる時間がなくなってしまいます」
「あ!」

教室の時計を見るとあと5分しかなかった。
せっかく作ってくれたのに残すなんて事したくない。

「毎日お弁当を作ってくださるのですね」
「いいって言ってるんだけどな」

大きくなれないよとか言いながら毎日お弁当を渡してくる。
そのやりとりが実は嬉しく感じている事に気付いた。

「……私も作ってみようかな」
「それはいいアイディアですわ」

小さく言ったつもりがラクスにははっきりと聞こえたようだった。
料理上手な弟に料理があまりうまくない私が作ったお弁当を渡す。
無謀な気がする。

「きっと喜んでくれますわ」
「あぁ、そうだな」

これは甘えだろうかと感じつつもそれははっきりと言えた。

だから意識しなかったであろう出来事に意識してしまっても、今はまだ触れずにいようと思った。



H21.3.22



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