暖かい寝顔
「うわっ」
「ふふ、びっくりされました?」
耳に息を吹きかけられ驚くとそんな悪戯じみた笑いが聞こえてきた。
息を吹きかけられた右耳を手で押さえながら少し顔を赤らめる。
「びっくりしました」
「びっくりしてもらいたくてやりましたから」
ラクスはにっこり笑うとアスランにお猪口を突然渡した。
「お、お酒……ですか?」
「今日はひな祭りですし甘酒をと思いまして」
お猪口に甘酒を注ぎながら言うラクス。
正直あまり酒類が得意ではないアスランはあまり飲みなくなかった。
「さぁアスラン、ぐびっと!」
なぜかガッツポーズなラクス。そんなラクスが可愛くてアスランはお猪口に注がれた甘酒を飲み干した。
あぁ君にそんな風に言われたら何でもできそうな気がする
などと意味不明な思考が浮かぶ。
飲み干してからしばらく制止して様子をみるが異常はない。むしろ美味しいとさえ思える。
「アスラン?」
制止して何も言わないアスランに呼びかけるとアスランは笑顔でお猪口を差し出した。
「もう一杯いただけますか?」
「はいっ」
もう一杯注ぐとアスランはそれを飲んだ。しかし飲んでいる途中でお猪口を口にしたまま動きが止まった。
「ア、アスラン……?」
何となく変な雰囲気を感じ呼びかけるのをためらうが呼びかけてみる。
するとアスランはすぐにお猪口を離しラクスを見つめた。
何だか艶っぽい視線、頬もほんのり赤いような気もする。
「アス……っ…ふ、ぁ」
突然引き寄せられ唇を塞がれた。口に割って入った舌が口内を侵す。それと同時に喉に何かが通る。
口内に入らずに唇から漏れるそれはアスランが飲んでいた甘酒だった。
「……美味しいですか?」
唇を離しうっすら瞳を開けるとアスランがほくそ笑んでいた。
「美味……し、いです……わ」
息が乱れて言葉を口にすることができない。
その反応に満足したような表情を見せるとアスランはラクスの唇から漏れた甘酒を嘗めた。
「ラクスをいただいてもいいですか?」
アスランの問いかけにラクスは肯定を示すように背中に腕を回し抱きついた。
首筋を舌でなぞられ身体がびくっと反応する。
「っ……アスラン?」
止まった動作に思わずはてなマークをつけてしまう。
ラクスの肩に頭を乗せ寝息をたてるアスラン。手はラクスの服を脱がしかけたまま。
「酔っていらしたのですね」
少し残念そうな顔をしながら何かかけるものを持ってこようと立ち上がろうとする。
「ラク……ス……」
「あらあら」
体勢を崩しラクスの腰にしがみつくアスラン。
その光景をみてラクスは微笑んだ。
「……アスラン」
そのままそこに座り込み寝ているアスランの髪をそっと撫でる。
「暖かいですわね」
安心するような寝顔を見てそんな気持ちになった。
―あなたは私の笑顔が暖かいというけれど
それはあなたがいるから
あなたがいて
私がいるから
きっと暖かいのです
この心地よさが
時に眠りに誘う
きっと夢の中でも
あなたと共に……
あなたの暖かい寝顔がこんなに愛しいから―
H17.3.3
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