act.9 Athrun


 


「俺が真面目、か」

ラクスのいる家屋には入らずに入り口に座りこんでいた。
もう陽は昇りきっている。
横を見ればまだ帰らない主が座っていた椅子があった。
キラになりたいとは思わない。
俺は俺でしかないのだから。一度ついてしまった自分自身の嘘は嘘だとわかってしまっても、俺以外に成り代わりたいとは思えなかった。

「アスラン」

扉の開く音がした。
呼び掛けられても応えもせず振り返りもしない。

“好きだったよ”

シンに聞かれた事に答えた言葉は半分が嘘で半分が本当だった。
終わったはず。終わってしまったはず。
もしかしたら始まりもしない舞台を客席から見ているだけだったのかもしれない。
なら、彼女はどこに行ってしまったのか。

「アスラン」

今俺を呼んでいる彼女はどこに行ったのか。

「アスラン!」

ラクスは砂浜に走っていくと振り返り大きな声で俺を呼んだ。
あまりにも反応をしないので怒らせてしまったかと思えば、ラクスは今にも泣きそうに見えてしまった。

『君は本当に真面目だよ。嘘に対してだって真面目だ。いや、鈍いのかな』

キラの言葉が過ぎる。
嘘なんかじゃなかった。
本当に好きだったんだ。
でも今もその気持ちがあると気付いたら嘘になった。
じゃあこの気持ちも嘘なんだろうか。
いくら探しても嘘しかない。
彼女に伝える本当が見つからない。
ラクスだって……だって?

「アスラン……」
一人だと嘘なら、二人でなら?
「ただ怖いだけなんですよ」
「シン?」

いつからいたのかシンがラクスから少し離れた場所に立っていた。
こちらが声をかけるよりも早くラクスに近づいてラクスの手首を掴む。

「シン!」
「あんたは結末が怖いだけだ!もし過去にされていたらと考えたら動けないだけなんだ」

立ち上がるが、近づこうとするのを阻むようにシンが言葉を浴びせてくる。
反論できないとわかっているかのように。
シンの思惑どおりなのかはわからないが俺は二人を見ている事しかできなかった。

「アスラン、私は」
「ラクスっ!」

ラクスの言葉はシンが阻んだ。
掴んだ手首を引いたまま走る事によって、ラクスは言うのを躊躇してしまったように見えた。

「ずっと探せばいい!そして後悔すればいいんだ!」

吐き捨てるように言い捨て、走り去るシンとラクスの背中を見ている事しかできない。
ラクスが一瞬振り返った気がした。
表情は見えなくても確かに振り返った。

水を欲しているのかわからない花。
与えたいのに、与えられない。
だから欲する花を探そうと種を探した。
無意味だとわかりながらも、探してしまった。

探していた種を既に持っていたとも知らずに、花がないと目の前の花から背を向けていた。



H20.9.21



book / home