act.12 Athrun


 


『アスラン!』


嘘を真実に、現実にしなければいけない。
終わらせたい。終わらせたくない。
この気持ちを。彼女との関係を。


「馬鹿だな……俺は」

そう思っても連れ去られた彼女を追い掛ける事もできずに佇む。
彼女も嘘だとわかっている。
じゃあ何故気持ちが伝えられないのだろう。


『ただ怖いだけなんですよ』


過去にされているんじゃないかという恐れ。それは彼女への裏切り。
信じる事ができないのだから。俺達の今までを。
怖いのは伝えてからの事なのかもしれない。
今までを信じられない俺がこれからをどう彼女と生きていけるのか。


「連れて行かれちゃったんだね」
「いつから見てたんだ」

振り返るとシンが来た方向にキラがいた。
シンとラクスが行ってしまった方向からこちらに視線を向けると笑った。
何かが吹っ切れたような、少なくとも少し前に会った時と雰囲気は違っていた。

「ずっと二人を止めてたのは僕なんだよね」
「何を言ってるんだ?」
「もうわかってるならラクスに言わなきゃ駄目だよ」
「っ!お前に何がわかる!」

初めて会った日、そこから重ねてきたもの。一つのすれ違いでそれを信じられなくなってしまった自分が情けなかった。
あるはずのものをないと言い張って、この場所から動けないでいる。

「アスランはどうしたいの?」
「どうしたいってどうも……」

このままでいれば彼女と会う事も話す事もできる。
どうしたい?

「シンくんに伝えてほしいんだ」
「自分で伝えてくれ」
「でもアスランはこれから追うんでしょ?」
「追わない!」
「僕が言っても説得力ないかもしれない。でも」

穏やかな雰囲気を見せていたキラが半ば怒っているように近づいてきた。
後ずさるとすぐに扉にぶつかった。

「答えなんてすぐ出るだろ!」

胸ぐらを掴まれて怒鳴られた。
キラらしからぬ言動に目を見開いていると胸ぐらから手が離された。

「どうしたいの?」

どんな気持ちで聞いてるのかはわからない。
俺はここまでされないと答えが出せないのかとまた情けなくなる。
そして笑った。

「シンくんに伝えて」

少し辛そうに告げられた伝言に驚きながら俺は二人を追った。


「ありがとう、ございます……」

伝えた伝言にそれだけ告げてシンは走り去ってしまった。

「ラクスは知っていたんですね」
「はい……」

何故知っていて黙っていたのか聞きたかったが、今は伝えたい事があった。
ラクスに身体を向けるとラクスは何も言わずに風に靡く髪を押さえた。
幾度と同じ瞳で見つめられた。その瞳に答えられたのは一体何回あったのだろう。

「俺はラクスと一緒にいたい」

一緒にいたいからこのままでいたいとかこのままでいられないなら伝えられないだとかはいらない。そうしたなら嘘も必要なくなる。
ただ、今まで重ねてきた気持ちが出す答えは彼女と共にいたいという事だった。

「一緒にいてくれないか?」
「こういう時は聞いてはいけませんわ」

彼女のこんな嬉しそうな顔を見たのはいつぶりだろう。
近づいて両手で手を握る。ラクスは髪を押さえていた手を握った手に重ねてくれた。

「一緒にいてほしい」
「はい」


大切にしていた種に気付いた時にそれを一緒に蒔こう。
水を与えるのは二人なのだから。



H21.8.13



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