act.14 Kira
「キラ!」
浜辺で座りこんでいると後ろから声がした。
振り向く前からカガリだとわかったけどやっぱり姿を見て安心する。
「シンが探してたぞ」
「あとでどうせ会うようだし急がなくても平気だよ」
早く来いと急かすように腕を掴まれるけど、反対に引き返した。
カガリはよろけるように膝をついて仕方ないなとため息を吐く。
「たった数日なのにこんなに変わるんだね」
何がと聞かれたら困るけど今まで心の内にあった靄のようなものが、今は晴れていた。
「変わってないだろ。私はずっとキラと一緒にいたし、これからも一緒だ」
そう告げる横顔は目の前の海を真っ直ぐ見ていた。
カガリもきっと意味がわかっているはず。
だけど変わっていないと言うのは気持ちは変わっていない。ただ、関係が少し変わっただけ。
そういう事なのかもしれない。
「気持ちいいな……」
「こらっ、砂浜で寝るな」
身体を後ろに倒して空を見上げる。
カガリは怒りながらも無理矢理起こそうとはしなかった。
アスランは僕が間に立った事でラクスが見えなくなってしまった。
今までを過去にして僕という区切りをつけてラクスから目を逸らした。
そんな関係ではないと知りながらも踏み出せなかったのは、ラクスが本当に自分を必要としてくれていたのかわからなくなってしまったのだろう。
そしてそんな理由などいらないと気付いた。
彼女が好きであるならそれを伝えなければいけない。
シンは今までが全てだとそれに縋るしかなかった。
無理もない。その人だと認識するためには記憶が必要だから。
それを無くしてしまったらどうやってその人だと断言すればいい?
だから言えなかった。
言わないほうがいいと思った。
だけど無いはずの記憶を辿るかのように彼に行き着いた彼女を彼はもう断言するだろう。
そして無いものだとしても彼女と共にいたいと思うに違いない。
都合のいい話だとしても少しの救いはあってほしい。
「キラ?」
「何?」
「目つむってたから寝たのかと思った」
真上にカガリの顔が映り、そんな光景が嬉しく感じた。
僕は今の関係を、これまでを壊したくなくて告げられなかった。
彼女と一緒にいたい。
でも彼女が欲しい。
徐々に侵食していく思いに彼女さえ引き込もうとした。
「僕を引き上げてくれてありがとう」
脈絡もなく言われた言葉にカガリは何の事だかわからなさそうに首を傾げる。
「っ……」
すぐに手が伸びて軽く僕を鼻を摘んできた。
「こっちこそ掴んでくれてありがとな」
すぐに手が離される。
少しひりひりする鼻を軽く摩った。
もしかしたら彼女もここにいたのかもしれない。
だから僕は掴めた。
「ははっ」
「何でいきなり笑うんだ」
「ただ手を握るだけでよかったんだね」
「……あぁ」
上に手を差し出すとカガリは微笑んで手を握ってくれた。
深淵の淵に二人佇んで、互いの手を取った。
H21.9.11
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