愛でるような戯れを


 


「ルーナマ〜リアっ」

ミネルバの通路を歩いていると、突如呼び掛けと共に両手を広げた少年が立ちはだかった。

「シン……何やってるの?」

異様に笑顔のシン。
夜も遅いというのに何故こんなに元気なのかと思う。

「ルナマリアの部屋に行ったらいなかったから待ってた」
「まるで犬みたいね」
「飼う?」
「いらない」

冷たくあしらわれ、何だよーと言いながら両手を下ろした。

「はぁ……」
「何、疲れてんの?」

ルナマリアがため息を吐いたのを見るとシンは問い掛ける。

「別に疲れてないわよ」
「ふーん……」

顔が見えないように背を向けられ、シンはその背中を見つめた。

「俺、猫が欲しいな」
「何よ、いきなり……あ」

“欲しい”という言葉をシンが言ったせいなのか、今日はシンの誕生日だと気がつく。
機体のメンテナンスをしているうちに日付が変わってしまったようだ。

「わかったわよ。生きてる猫はここじゃあ飼えないからぬいぐるみか何か買ってきてあげるわ」
「くれないの?」

甘えるような彼の声に胸が高鳴る。

「だからっ……な、何?」

振り返るとシンの暖かい手が頭を撫でた。ゆっくり深く、微笑みながら。
その微笑みを直視していたら顔が熱くなってきてしまった。
見られたくなくて少し顔を俯かせる。

「……まるで」

“まるで何かを愛でるよう”

途中まで呟きかけたが口には出さずに心の中で呟いた。
少し俯かせた顔をあげる。

「ペット扱い?」

恥ずかしさをごまかすように訝しげな瞳でシンを見た。

「甘えたくなるだろ?」
「……馬鹿、シンの誕生日でしょうが」

ルナマリアはそう言うとシンに抱き付いた。

「一緒にいられればいいし」

ルナマリアを抱き締め嬉しそうに言う。ルナマリアはふっと笑むとシンから体を少し離した。

「いらないの?」

上目遣いで意地悪な笑みを浮かべながら聞くと、シンは一瞬面食らったような表情をしたがすぐに吹き出して笑った。
そしてルナマリアの耳元に唇を近付け何かを囁いた。

「……馬鹿」

照れたようにそう言うとルナマリアは再びシンに抱き付くとその言葉を口にした。

「誕生日おめでとう」



H17.8.31



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