黒く透明なオクリモノ


 


「誕生日おめでとうございます」
「あ、ありがとうございます」

まさか自分の誕生日を祝いにわざわざ訪れてくれると思わず、シンは驚いていた。

「よく家がわかりましたね」
「アスランに送っていただきました」

家の中へ招きいれながら聞くと予想通りの返答。
ラクス・クライン。雰囲気が独特的で側にいると心地よく感じる少女。

「シンにプレゼントを持って来ましたの」

ソファーに座ると手持ちの小さなバッグをあけ、可愛いラッピングに包まれた物を出した。

「プレゼントなんて……もらってもいいんですか?」
「シンのために作りましたから。気に入っていただけると良いのですが……」

予想外のラクスからのプレゼント。しかも会話から予想するに手作り。
この笑顔だけでも幸せなのに自分に差し出されたプレゼントもある。

「あ、ああありがとうございますっ」

嬉しさのあまり声と受け取ろうと伸ばした手が震える。

「開けてもいいですかっ?」
「はい」

受け取った物をテーブルに置き、ラッピングを丁寧にとり箱を開ける。

「こ、これはっ!?」
『シンノアホー』
「ハロちゃんですわ」

箱から飛び出した球体は耳部分をぱたぱたさせ、シンの悪口を言っていた。

「プレゼントは自分がもらって嬉しい物をあげるといいと言いますでしょう?」
「だからハロ……」

目の前で飛び跳ねるハロを呆然と見つめる。

「気に入りませんでしたでしょうか?」

今まで笑顔だったラクスは表情を曇らせ首を傾けた。

「そんな事はないです!……ないんだけど」
『マエガミヘンニナガスギナンジャボケー』

何故球体に自分の悪口を言われなければならないのか。

「アスランに手伝っていただきましたの。そうしましたら語学プログラムが私のハロちゃんよりも性能がよくなったとの事ですわ」
「あの人の仕業か」

何とも低レベルな嫌がらせにシンはそれ以上何も言えない。
悪口の理由はわかった。次は色。

「色は始めは赤にしようとしたのですがミーアさんのハロと色が被ってしまいますでしょう?」
「それもアスランさんが言ったんですか……?」

ラクスは両の手のひらをあわせ、にっこりとはいと言った。

『チョウシニノンナヨーテヤンデイ』

相変わらず悪口を言うハロは黒かった。
言っている事も黒いが色が真っ黒。よく見ないと目の位置がわからない。

「何だ……?」

肩を落とし黒いハロを見ていると家中に呼び鈴が響いた。
一回ではなく何回も。

「どなたでしょうか?」
「そうですね、誰ですかね」

シンはわかりきったようにため息混じりに言う。
だが玄関に向かおうとはしない。

「行かれないのですか?」

純真無垢に問い掛けるラクスに行きませんと言えるわけがなく渋々立ち上がる。
その間も呼び鈴は絶え間なく鳴り続けていた。

「仕方ない、行くか」
「シン」

玄関に向かおうとすると呼び止められ振り返った。

「お誕生日おめでとうございます」

再び言われた祝いの言葉。シンは笑みを向け答えた。

「ありがとうございます」



H17.8.31



book / home