いつか飛び立つ笑顔は


 


「お兄ちゃんっ」
「うわっ、いっつー」

突然の呼び声に驚き、椅子と共に後ろへ転倒してしまった。
頭部をさすりながら体を起こすと妹のマユが心配そうに屈みこちらを見ている。

「部屋に入る時はノックしろって言っただろ」
「ごめんなさ〜い」
「笑いながら謝るな」

いつもの調子で言ってやると怒ってないとわかったのかマユは笑いながら謝った。
そんなマユの額を指で軽くつつく。

「何か用?」
「うん、お兄ちゃん今日誕生日でしょ?」

何を今更と思う質問をしてくる。先ほど誕生日を祝って家族で少し豪華な料理やケーキを食べたばかりだ。

「だからね。マユ、お兄ちゃんにプレゼントをあげようと思って」
「プレゼント〜?」

倒れた椅子を直しながら座りこんでいるマユを見た。

「はいっ!」

立っているシンを見上げながらマユは両手にを差し出した。

「鶴……?」
「うん!最近作れるようになったの」

差し出されたマユの手のひらには折り紙で作られた鶴が乗っていた。
金色の折り紙で作ったらしく豪華には見える。

「お兄ちゃんにあげる」

鶴をもらってどうしろと……と思うが満面な笑顔の妹からのプレゼントはやはり嬉しく感じた。
それに金の折り紙は折り辛い。それなのに綺麗に出来ている。苦戦して折る様が思い浮かんで自然と笑みが浮かんでいた。

「ありがとう、マユ」
「うんっ!マユの誕生日には携帯電話頂戴ね」
「……父さんか母さんに頼め」

鶴を受け取ったのも束の間、やはりそういう魂胆があったかとマユを見たいように背を向けた。

「えー、お兄ちゃんから欲しい」
「何で俺からなんだよ」

腕にしがみつきねだるマユ。呆れ気味に顔は見ないように聞いてやる。

「お兄ちゃんからなら大事にするからっ」
「俺からじゃなくても物は大事にしろ」
「お兄ちゃん……駄目?」

油断してマユの顔を見てしまい、シンは言葉に詰まった。
いつも最後には妹のお願いは断れずに聞き入れてしまう。

「……わかったよ」
「やったぁ〜!ありがとう、お兄ちゃん!!」

嬉しくて飛び付いてきたマユにはいはいと言いながら、自分はどうしてこうにも甘いのだろう。
しかも自分の誕生日に物を買う約束までしてしまった。

「お兄ちゃん」
「ん?」
「誕生日おめでとう」
「うん、ありがとう」

でもこの笑顔を見れるならいいか、と思った。



H17.8.31



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