No Day,All Birthday
「そろそろ帰るか」
シンは町へ買い物に来ていた。
帰るかと言いながらも立ち止まり雑貨屋のショーウィンドウを何となく見ていた。
「っ……痛っ!誰だよ!」
誰かに後ろから思いきり押されショーウィンドウに顔面をぶつけてしまった。
「そんな怒んなよー、挨拶挨拶」
「いくら何でも思いきりやりすぎだろ」
怒りながら押した奴がいる方へ体を向けると見知った人物が二人いた。
「じゃあ今度アウルを見掛けたら同じ事やってやるからな、倍返しで」
「やられる前に避けるし、シンみたいに反応鈍くありませんー」
いちいちカンに障るアウルの言い方にシンはカチンときた。
「アウル」
「はいはい、お前今日誕生日なんだって?」
そのへんにしとけという態度でスティングに促されアウルはシンに聞いた。
何でこの二人が自分の誕生日を知っているのかが疑問だったが、隠す必要もなくシンは頷いた。
「誕生日に一人なんてさっみしー」
「誕生日に誰かといろなんていう決まりはないだろ」
まあ確かにアウルは言う。何がしたいのかさっぱりわからない。
「誕生日ってどんな感じ?」
「はぁ?」
どんな感じと聞かれても誕生日は誕生日としか答えようがない。
「僕ら自分の誕生日ってわかんないからさー、どんなもんかなって」
ここにいるのだから生まれた日はある。だがその日がわからないと言うアウルにシンは何も言えなかった。
「そんな深刻な顔するな、知らなくても不自由はないからな」
スティングに言われ自分が暗い表情をしている事に気がついた。
アウルが不満そうな表情でこちらを見ている。
「同情?」
「違っ……」
違うとは言い切れなくて二人から顔を背けた。
「そういうの気分悪いんだよねー。同情されても楽しくも嬉しくもないし」
言われてみればそうだ。自分も自分の境遇を知って同情する人達を見てきたため、その気持ちはわかる。
「……ごめん」
だけどそれ以外の言葉が見つからなかった。
「だから〜……謝るなら何かしてよ」
「は?」
「そうだな」
アウルだけならまだしもスティングまでそんな事を言い出す。
何かと言われても困ってしまう。
「ほら、行くよ」
「どこに?」
シンの問いは無視され二人はシンに背中を向け歩き出した。
「ステラに言ったら誕生日って〜何?とか言い出しそうだよな」
「でも祝い事とかは好きそうだから何とかなるだろ」
二人の会話からどこに行き、これから何をするのかが予想できてしまった。
いいのかと戸惑うが来いと言われて行かない理由はない。
「待てって!」
二人に駆け寄ると二人は立ち止まりシンに振り返った。
「誕生日、おめでとう」
「誕生日おめでと〜」
シンは笑顔でありがとうと返した。
H17.8.31
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