ミツメルモノ、イツカ
「このお茶美味しいですよ、ラクスさん。な、レイ」
クライン邸のテラスにてラクスが淹れたお茶を飲んでいるレイとシン。
ラクスは二人を見ながら微笑み、特に会話といった会話がない。
沈黙も辛いものがあるためシンがその沈黙をやぶった。
「あぁ」
「レイ」
「何だ?」
素っ気ない返事を返してきたレイに対し、シンは肘でレイをつつきながら小声で話しかける。
「せっかくアスランさんがいないんだからもっと話せよ」
「特に話す事がない」
じゃあ何で来たんだよと思うがあえてそれは聞かない事にする。
“テヤンデー”
「その球体は?」
レイは横で飛び跳ねているピンク色の球体が視界に入りラクスに問い掛ける。
「ハロと言いますの。この子はピンクちゃんですわ」
「こう言った物が好きなんですか?」
シンは聞きながらピンクハロを捕まえようとするがピンクハロはシンの手をすり抜けた。
「女性は可愛らしいものがお好きですよね」
「そうですわね……好きですわ」
ラクスはピンクハロを少し見つめ、レイに視線を移すと微笑む。
その微笑みは穏やかであってどこか遠くを見ているようなそんな笑みだった。
「私でよければ何かお作りしましょうか?」
「レイ様もこういった物が作れるのですか?」
「得意ではありませんがラクス嬢に差し上げたいと思いましたので」
「捕まえた!!」
喜々とした声が聞こえそちらに目をやるとピンクハロを手にしたシンがいた。
いつの間にか席を立ちピンクハロを追い回していたようだ。
その光景を見てラクスはくすくすと笑った。
「ピンクちゃんはなかなか他のかたには懐きませんの」
「まるで動物のようですね」
「友達ですわ」
微笑んだままそう言うと席を立ち、シンに近付いて行った。
「あ、あの」
近付くラクスを見るなり慌てるシン。様子がおかしい事に気がつきレイも近付く。
「まさか壊したのか?」
レイの言葉にシンの視線は地面に落ちた。
「あっ!」
「人の物を壊すな。そんなに丈夫じゃないんだ」
「アスラン、こんにちは」
後ろ手に隠したピンクハロは背後に現れたアスランに取られてしまった。
煙を出し耳部分をがちゃがちゃと不穏に動かしているピンクハロを見るとアスランはシンをジロリと睨んだ。
「それはアスランが作った物ですか?」
「あぁそうだが……それがどうかしたか、レイ」
このピンクハロを通して見ていた物に気がつくとレイは目を伏せ、僅かに笑んだ。
「どうしたんだよ、レイ」
「いや、何でもない」
自分がいなくても見つめていてくれる視線。
包まれるようなそれを自分も感じてみたい。そう思った。
H17.8.5
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