側にある幸せ
「ミーア」
「あっアスラン!?どうしたの?」
ミネルバ艦内、エレベーターの前に佇むミーアを見つけアスランは声をかけた。
後ろから呼び掛けられ慌てた様子でミーアは振り返った。
「ここはうろうろしていい場所じゃない。部屋に戻るんだ」
予想通りの言葉にミーアは視線を横に逸らした。
「だって見たいじゃない。普段のみんなが」
「特別な事はしていない。休んでたり調整してたり……それぐらいだ」
「それが見たいのっ」
少し怒っているような表情にアスランはよくわからずかける言葉がない。
「ね、少しだけだから邪魔魔は絶対しない。だから行かせて?」
「ちょ……ミーア!」
ミーアの両腕が肩に乗せられ首に手が回される。
ねだるような上目遣いで至近距離まで顔が近付きアスランの顔は赤くなった。
「……あ」
目の前のエレベーターが到着しドアが開いた。中に視線をやると見知った顔がいた。
「いちゃつくなら部屋でどーぞ。誰も邪魔しないしあんたがいなくても戦いには出られますから」
「シンっ!」
一瞬驚いた顔をするがすぐに冷めたまなざしでそう言って、シンは行ってしまった。
「あー……もー」
「アスラン?」
顔を手で押さえため息をつく。ミーアはそのままの態勢のまま呼び掛けた。
「ミーア、俺から離れるなよ」
「わかってるわ。結構若い子ばっかりなのね〜」
結局アスランはミーアを連れてMS倉庫へ来ていた。
あのまま無理やり部屋に返してもまた出るに決まっている。
なら自分と一緒にいれば問題はない。一緒にいても誰も何も怪しむことはない。
「アスランは何やってるの?」
周りをきょろきょろし、アスランが向かっている画面を覗きこんだ。
「セイバーのメンテナンスだ」
「そういうのって整備士がやるんじゃないの?」
「俺は臨時配属みたいなものだから自分の事は自分でしないと」
ミーアは首を傾げて人差し指を顎にあてる。しばしそのままアスランを見つめていた。
「すごーい!アスランって凄いのね」
「は?」
突然言われた事が理解できず間抜けな声が出る。
「だって少しでも休みたいって思うじゃない?でもアスランは違う」
「違くない……俺は」
ミーアの言葉が何だか痛くて顔を逸らした。
「……ミーア?」
逸らした方向からミーアが自分を覗きこむように見つめてきた。
「いつかは自分にかえってくると思うの。それを考えながらは駄目だけど、頑張ればみんなも自分も幸せになれるのよ」
まるで今のミーア自身を言っているよう。
アスランにも彼女がどれだけ頑張ってるか、辛い思いをしてるかはわからない。
「幸せ、か。ミーアは今、幸せか?」
「わかんない。でもいつか幸せって言えると思うの」
そうかと返すと画面の電源を切った。
「アスラン?」
「他にも見たいんだろ?」
「うんっ!ミネルバって広いから一人じゃ迷っちゃって」
「一人で回った事があるんだな」
ジト目で言うとミーアはしまったという顔で口を開けた。
顔に出やすいミーアが面白くて少し笑ってしまう。
「アスランはもっと笑った方がいい」
「どうして?」
アスランの問い掛けに少し踏み出し一回転して、アスランに向き直った。
「幸せを引き寄せるからっ」
満面な笑みで言うミーアにアスランも満面の笑みとは言えないが笑いかけた。
H17.9.12
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